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【投資ノウハウ】投資として考える2021年ホリデーシーズン

 米国では、11月~12月をホリデーシーズンと呼ぶことが多く、特に11月第4木曜日(今年は25日)のサンクスギビングデー(感謝祭)からクリスマス期間を含む12月末まで、一年で一番消費活動が活発になる時期です。サンクスギビングデー明けの金曜日は、「ブラックフライデー」と呼ばれ、バーゲンセールなどが始まり、日本の年末商戦のような賑わいをみせます。
 「ブラックフライデー」の由来は諸説ありますが、小売業の年間収益が黒字になる日との意味も一部にはあり、それだけ消費が盛り上がります。最近は、日本でもブラックフライデーセールを展開するECサイトや店舗が増えており、耳にしたことがある方も多いかと思います。米国の国内総生産(GDP)の約7割が個人消費ですので、この時期の消費動向は、米国の景気動向をみるうえで重要になってきます。

 今回は、今年の米国のホリデーシーズンにスポットをあてて見ていきましょう。

インフレの影響は?

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 最近の米国経済の話題と言えば、インフレの高進です。10月の米消費者物価指数は、前年同月比6.2%上昇と1990年12月以来、31年ぶりの高い伸びとなりました。物価上昇の影響から買い控えが気になりますが、今月16日に発表された10月の小売売上高をみると、前月比1.7%増と3カ月連続で前月を上回っています。賃金上昇が続いているうえ、家計貯蓄も過去最高となっていることから、いまのところ物価上昇が消費を冷え込ませている兆候はないようです。ただ、サプライチェーンの混乱から、商品在庫が不足しており、このことが消費者のホリデーシーズン需要を前倒しした可能性はありそうです。

売上は過去最高の予想

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 全米小売業協会(NRF)がまとめたホリデーシーズン(11月1日~12月31日)の売上高予測をみると、昨年に比べ、8.5%~10.5%増加となる、8434億ドルから8590億ドル売上となっています。このレンジ内の数値が実現されれば、過去最高の売上高となります。また、過去5年間の平均で4.4%増となり、米国の景気拡大が継続していることを示すことになります。なお、NRFは、小売業者は、今年のホリデーシーズンに50万人~66.5万人の季節労働者を雇用すると予想しています。
 また、コロナ禍で利用が一段と拡大したネット通販に絞ってみると、アドビが先月発表した今年のホリデーシーズン(11月1日~12月31日)の米国のネット通販売上予想額は、前年比10%増の2070億ドルとなっており、こちらも過去最高の売上高が予想されています。米国はコロナによる行動制限がほぼ解除されていますが、ネット通販は依然として高い成長率が見込まれています

個別企業の動向

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 個別企業の動向をみていくと、世界最大の小売業者ウォルマート(WMT)は、ホリデーシーズンに向けた店舗在庫確保のために、自社の船舶や航空機をフル活用しています。このため輸送コストが上昇、加えて人件費の上昇もあり、直近の8-10月期決算をみると、売上高の伸び率に比べ、営業利益の伸びが抑えられています。ただ、米国内の在庫は前期比で12%増加しました。また、好調な個人消費を背景に、次期の既存店売上高は6%超伸びるとし、2022年1月期通期の1株利益を従来予想の6.20-6.35ドルから6.40ドルに上方修正しています。同社株価は11月19日現在、過去1年間で5.22%下落しており、ホリデーシーズンの行方が今後の株価動向に影響しそうです。

 一方、ネット通販の最大手アマゾン・ドットコム(AMZN)も同様に、人手不足、輸送コストの上昇が直撃しています。直近の7-9月期決算は、6四半期ぶりの減益となりました。また、決算発表時に示された10-12月期の業績見通しは、売上高が1300億-1400億ドルと市場予想の中央値1420億ドルを下回ったうえ、営業利益は最大でも30億ドルとしており、これは前年同期の68億ドルの半分以下の数値です。行動規制の緩和により、人々の外出が増え、消費パターンも「モノからサービス」に移っており、実店舗をほとんど構えないアマゾン・ドットコムにとっては、逆風となっているようです。

小売業より金融関連株に妙味か

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 最後に、投資として今年のホリデーシーズンを考えると、これまで述べてきたように、過去最高の売上高を記録しそうではありますが、小売業を営む企業にとっては、人件費、輸送コストの上昇により、利益率が悪化する可能性がありそうです。
 小売業の株は、積極的には買いにくそうです。ただ、インフレ下で消費が増えているので、動く金額は大きくなっています。
 その観点から妙味が出てくるのは、ビザ(V)やマスターカード(MA)といったクレジットカード会社です。さらに最近、若者を中心に利用が広がっている消費者への後払い決済サービス(一括・分割)BNPL(Buy Now Pay Later)を提供しているアファーム・ホールディングス(AFRM)なども面白いように思います。

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佐藤隆司(ライタープロフィール)

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佐藤 隆司(さとう りゅうじ)
 米大卒業後、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(のちの株式会社オーバルネクスト)入社。原油、貴金属、天然ゴムなど工業品を中心としたアナリスト活動を経て、金融市場全般の分析を担当。
 2010年、エイチスクエア株式会社を設立し、セミナー講師、アナリストリポートを執筆する。また、「FOREX NOTE 為替手帳」、「チャートの鬼・改」などの企画・出版も行う傍ら、ラジオ日経「ザ・マネー」の月曜キャスターも務める。

資格
「国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト」

メディア情報
・ザ・マネー 月曜日キャスター
・「夜トレ」(ラジオ日経)、「昼エキスプレス」(日経CNBC)など出演

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