6月のFOMCはネガティブサプライズ
この記事でわかること
市場予想通りに利上げは見送りも、NYダウが下落
FRB(米連邦準備理事会)は、6月13日~14日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げをいったん見送りました。一方で、年内にあと2回の利上げを示唆しました。利上げの見送りは、基本的に株式市場にとってはプラス要因となるはずです。しかし、今回のFOMCを受けて、NYダウは7営業日ぶりの反落となりました。
政策金利の据え置きは、2022年3月の利上げ開始以降、初めてで11会合ぶりです。米国ではインフレ(物価上昇)が続いており、米国の消費者物価指数(CPI)は、2022年6月には前年比9.1%まで上昇しました。FRBはインフレを抑制するため、2022年3月から利上げに踏み切り、2022年中に7回連続、2023年も5月までに3回の合計10回の利上げを行っています。
この利上げの効果もあり、6月13日に発表された5月のCPIは、前年同月比の上昇率が4.0%まで低下し、2年2カ月ぶりの低い伸びとなりました。このため、6月14日のFOMCで「利上げの終了」を予想する見方も多くありましたが、結果は「利上げの見送り」となりました。
この背景には、FOMCがインフレ目標を2%にしていることがあります。FOMCの声明では、「インフレ率は依然として高い水準にある」としており、パウエルFRB議長は記者会見で「FOMCは時間をかけて経済・物価の動向を見極める必要があると判断した」と述べています。
ネガティブサプライズだった、年内2回の利上げの可能性
FOMCの結果を受けてNYダウが下落したのは、利上げの終了ではなく見送りになったことよりも、むしろ、同時に公表したドットチャートが原因でした。ドットチャートとは、FOMC参加者が適切と考える政策金利の水準をドット(点)で表したチャートのことです。このドットチャートで、2023年末の政策金利予想の中央値が、前回公表された3月の5.1%から5.6%に引き上げられていました。
これは、現状の水準から0.25%の利上げをあと2回実施することを示唆しています。パウエルFRB議長は会見で、「会合出席者のほぼ全員が、年末までに金利をいくらか引き上げることが適切であると予想している」としたうえで、「考えていたよりも、もっと抑制が必要になる」との現状認識を示しました。
市場では、「多くても年内の利上げは、あと1回」との見方が多かったこともあり、年内に2回の利上げが示唆されたことは、ネガティブなサプライズとなりました。足元で4.0%まで低下している米国のCPIですが、FOMCが目標とする2%に近づくまで、さらに利上げが実施される可能性があるということでしょう。
ただ、疑問もあります。それは、FOMCが利上げを見送りながら、一方では年内に2回の利上げを示唆するという、相反する姿勢を示していることです。このためマーケット関係者からは、「年内に2回の利上げは実施されないのではないか」との声も出ています。
そういった意味では、今後の米国の経済指標が、年内に2回の利上げが実施されるのかを判断する上で、重要なカギを握ることになりそうです。
いずれにしても、利上げは見送られたものの、年内に2回の利上げが示唆されたことで、有利子負債の水準が大きい不動産セクターや、金利低下による借入ニーズの拡大が追い風となる住宅業界などへは、しばらくは向かい風になる可能性がありそうです。一方で、金利が上昇することで金利収入が増加する金融セクターなどには追い風となるかもしれません。
記事作成日:2023年6月15日
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