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【投資ノウハウ】Woven Cityなど、スマートシティへの投資

 2020年1月の電子機器見本市「CES2020」で、トヨタ自動車の豊田章男社長が発表した、あらゆるモノやサービスがつながるスマートシティ「Woven City(ウーブンシティ)」が、今年春に着工されました。

 国土交通省(国交省)によるスマートシティの定義は下記の通りです。

「ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場」
(引用元:内閣府「スマートシティ」

 具体的に言えば、行政機関、公共機関・企業がIoTなどを通じてデータを収集・分析し、より良い市民生活が送れるように改善されていく街、と言ったところでしょうか。
 投資という観点からみると、将来的に非常に重要で、しかも裾野が広い分野とみられる一方で、まだ確たる収益モデルがないのが現状です。

 今回は、スマートシティの事例をみながら、どのような企業が関わっていくのかを考えてみましょう。

「Link NYC(リンク・ニューヨーク)」(米国)

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 スマートシティ先進国と言われている米国では、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコをはじめ、様々な都市でスマートシティ計画が進んでいます。
 特にニューヨークは、2016年に「Smart City Expo World Congress」でベスト・スマートシティとして表彰されました。

 同市が行った施策の一つは、携帯電話の普及により使用頻度の落ちた公衆電話をWi-Fiのホットスポットへ変える「Link NYC(リンク・ニューヨーク)」と呼ばれるプロジェクトです。
 公衆電話に代わり、約3メートルのデジタルサイネージを設置。無料Wi-Fiステーションとしてだけでなく、警察・消防等への緊急通信、タブレット端末(ネット検索)、国内への無料電話、スマホ無料充電、赤外線センサー、監視カメラなど、多様な機能を搭載しています。
 将来的な計画では7500台が設置されることになっており、2021年10月24日時点ですでに1827台が稼働しています。

 このLink NYCプロジェクトのポイントは、運用コストの賄い方です。ディスプレイに表示される広告収入で主に賄われており、行政は拠出していないのです。
 デジタルサイネージでは、Wi-Fiを使用した際のデータを分析し、ターゲット広告を表示することが出来ます。また、赤外線センサーを使い、時間帯ごとの交通量などのデータを得られることから、企業にマーケティングデータとして販売提供もしています。リアルタイム情報としては、カーナビ等との連携も考えられます。

 このLink NYCプロジェクトを仕掛けたのは、グーグル関連会社のサイドウォークラボです。恐らく、徹底したデータ収集が行われていることが予想されるので、住民の中には快く思わない方々もいるでしょう。
 懸念を緩和する役割となるのが、NYC Open Data(ニューヨーク・オープンデータ)という法律のようです。ニューヨーク市では、オープンデータ法という法律が制定されており、市民に1600を超えるデータセットが提供されています。スマートシティと言えば聞こえがいいですが、それは同時に監視される可能性も高まります。そこで暮らす市民との信頼関係も重要になってきそうです。

「Woven City(ウーブンシティ)」(日本)

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 日本のスマートシティと言えば、冒頭に書いたWoven City(ウーブンシティ)が真っ先に頭に浮かびますが、国交省の資料をみると、15のスマートシティ先行モデルプロジェクトが存在します。
 これらのプロジェクトでは、官・民・学が連携し、自動運転や健康寿命を延ばすなど、地域の事情に合わせた目的を持って事業を推進しています。
 15のプロジェクトの中で、都市部にあり、かつ住宅圏に位置する千葉県柏市柏の葉スマートシティでは、千葉県柏市、三井不動産(8801)、東京大学等が幹事となり、「環境共生」、「新産業創造」、「健康長寿」の3つをテーマに掲げ、プロジェクトを推し進めています。
 具体的には、国内最大級のリチウムイオン蓄電池システムや太陽光発電、非常用ガス発電機を完備したエネルギー棟があり、AIを利用したエネルギーの効率的な配分などが行われています。また、コワーキングスペース、AIを駆使した住宅棟などがあります。幹事の三井不動産以外の関連企業としては、日本電気(6701)、日立製作所(6501)などが挙げられます。

投資対象としてのスマートシティ

 ニューヨークと柏の葉のスマートシティの在り方をみてもわかるように、スマートシティは、AIやICTなどの先端技術によって成り立ちますが、その方向性は、コミュニティにより異なります。
 中国では、アリババがスマートシティの開発を行っていますが、顔認証システム等が用いられ、プライバシー保護については、あまり重きを置いてないようにも見受けられます。
 一方、アムステルダムやコペンハーゲンなど欧州のスマートシティは、電力や交通システムなど都市インフラに重きを置いたものが多くみられます。
 スマートシティとひと言でいっても「ところ変われば品変わる」と言ったところでしょうか。
 米国ではアルファベット(GOOGL)のような新興IT企業が舵取りを行う一方、日本では不動産会社や自動車メーカー、商社といった老舗と呼ばれる企業の進出が目立ち、ソフト面よりハード面に重きが置かれているように感じます。

 このため、スマートシティ銘柄と言っても、日米では投資対象が違ってきます。
 この違いが、今後のスマートシティの在り方、そして、投資先としてどのような形になって現れるのか、非常に興味深いです。

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