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【投資ノウハウ】岸田政権、衆院選後注目の経済政策と株式市場

 10月31日に投開票が行われた衆議院議員総選挙(定数465)は、自由民主党(自民党)と公明党の連立与党が293議席を獲得する結果となりました。政権与党の議席数は、衆議院解散時の305議席から12議席の減少にとどまりました。
 総選挙前、岸田首相は、勝敗ラインを連立与党で過半数(233議席)としていましたが、これを大きく上回りました。また、自民党単独でも261議席を確保し、衆議院にある17の常任委員会で、全ての委員長ポストと過半数を確保できる、いわゆる、絶対安定多数を得ることに成功しました。

 この結果をみると、岸田首相は政権基盤を固めることができたと言ってもよさそうです。今回の選挙結果を好感し、選挙翌日、11月1日の日経平均株価は、754.39円高の2万9647.08円と、9月28日以来約1カ月ぶりの高値を付けました。今回、自民党単独で絶対安定多数を得た岸田政権下での株式市場を考えていきましょう。

大型の経済対策

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 衆議院選を無事終えた岸田首相にとって次の目標は、年内に数十兆円規模の経済対策を含めた2021年度補正予算を成立させることです。特に、今年の夏、デルタ株が猛威を振るった影響から、11月15日に内閣府から発表される2021年7-9月期の日本の国内総生産(GDP)成長率は、マイナス成長が予想されています。その一方で、同じくデルタ株に苦しんだ米国やユーロ圏の同期のGDPはすでに発表され、それぞれ2.0%、2.2%とプラス成長を維持しました。国際社会に「岸田ノミクス」をアピールし、今後の日本経済の回復期待を高める意味でも、今回の経済対策は重要度を増しています。
 また、自民党は、衆議院で絶対安定多数を獲得しましたが、来年夏に選挙を迎える参議院(定数245)では、自民党111議席、公明党28議席、両党を合わせて過半数を確保している状況です。参議院でも、単独過半数を確保するため、大型の経済対策をまとめてくるでしょう。

「GoToトラベル」の再開

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 注目の経済対策の中身ですが、首相会見等をみると、現在、公明党との間で盛んに議論されている「給付金支給」に加え、「新型コロナ関連」、「クリーンエネルギー投資」、「安全保障」、人工知能(AI)などの「先端技術関連」が挙がっています。ただ、即効性のある景気浮上策としては、「GoToトラベル」の再開が注目されます。一部の調査機関の試算では、「GoToトラベル」が再開されれば、GDPを0.5~0.7%前後押し上げる効果があるとみられています。諸外国のGDPがプラス成長に転換する中、海外からの投資マネーを呼び込むためにも、政府は早いタイミングで「GoToトラベル」の再開に動くとみます。ANAホールディングス(9202)、日本航空(9201)、東海旅客鉄道(9022)、東日本旅客鉄道(9020)、エイチ・アイ・エス(9603)などの旅行関連株は注目されるでしょう。

新型コロナ関連

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 もちろん、「GoToトラベル」の早期再開には、新型コロナ対策も万全を期すことが重要になります。ブースター接種は、早ければ年内に開始されます。ファイザー(PFE)やモデルナ(MRNA)の米国株に加え、経口コロナ薬を開発中の中外製薬(4519)、塩野義製薬(4507)などの動向に視線が集まるでしょう。また、人工呼吸器ECMO(エクモ=体外式膜型人工肺)を手掛けるテルモ(4543)、人工呼吸器の増産を決めた旭化成(3407)なども物色の対象になるでしょう。なお、この他に岸田首相が注力する「科学技術立国」と「デジタル田園都市国家構想」については、「【投資ノウハウ】岸田新政権、4つの成長戦略と株式市場」を参照して頂ければと思います。

金融所得税には注意が必要

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 このように岸田首相は、大型の景気対策を打ち、経済を浮上させるとみられますが、同首相が「分配」にも強いこだわりを持っていることも頭の片隅には入れておいた方がいいでしょう。岸田氏が新首相に就任すると、金融所得増税を述べていたことから、日経平均株価が10月6日まで12年ぶりとなる8日連続安となったのは、記憶に新しいところです。
 岸田首相は、10月10日のテレビ番組で「当面、金融所得税は変更しない」と述べ、マーケットを落ち着かせました。しかし、株価が上昇し、景気が好転してくれば、再び、この考えが頭をもたげる可能性はありそうです。金融所得税に限らず、いまの日本の経済状況で増税に着手すれば、株価への打撃は少なくはないでしょう。
 同首相から、「分配」、そして「増税」という言葉が出てきたときは、注意が必要でしょう。

記事作成:2021年11月10日

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佐藤隆司(ライタープロフィール)

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佐藤 隆司(さとう りゅうじ)
 米大卒業後、金融・投資全般の情報ベンダー、株式会社ゼネックス(のちの株式会社オーバルネクスト)入社。原油、貴金属、天然ゴムなど工業品を中心としたアナリスト活動を経て、金融市場全般の分析を担当。
 2010年、エイチスクエア株式会社を設立し、セミナー講師、アナリストリポートを執筆する。また、「FOREX NOTE 為替手帳」、「チャートの鬼・改」などの企画・出版も行う傍ら、ラジオ日経「ザ・マネー」の月曜キャスターも務める。

資格
「国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト」

メディア情報
・「ザ・マネー」(ラジオ日経)月曜日キャスター
・「夜トレ」(ラジオ日経)、「昼エキスプレス」(日経CNBC)など出演

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