<FOMC振り返り>利上げの最終局面が迫る
この記事でわかること
3月21-22日、米国の金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれました。大方の予想通り、0.25%の利上げが決定しました。これで9会合連続の利上げとなりました。政策金利は4.75-5.00%です。
しかし、シリコンバレー銀行(SVB)の破綻に端を発した金融不安の影響から、利上げの一時停止も議論されたようです。
今回は、FOMCを振り返り、今後の米国株の行方を探ります。
インフレ抑制と金融不安への警戒
今回の0.25%の利上げは、とても難しい決断だったと思われます。昨年12月以降の米経済指標をみると、インフレはピークアウトしているものの、インフレ率の低下のスピードが落ち、雇用は拡大の傾向が見られました。
パウエルFRB議長は、3月の米上院での議会証言で「インフレ圧力を中心に最近の経済データは予想より力強い」と述べました。市場ではこれを受け、3月のFOMCでは0.50%の利上げが実施されるとの見方が広がりました。
その最中に起きたのが、シリコンバレー銀行の破綻など金融不安です。シリコンバレー銀行破綻の背景には、年間で4.75%の急速な利上げによる米債金利の上昇があります。FOMCでは、インフレを抑制する一方で、金融不安への対処は怠らないというメッセージを発信する必要がありました。
その妥協点が0.25%の利上げだと思われます。なお、金融不安については、記者会見で「銀行システムの安定を保つため、あらゆる手段を行使する」と発言し、金融不安の鎮静化に強い意欲を見せました。
利上げはあと1回の可能性が高い
利上げはあと1回で停止する可能性が高そうです。FOMCでは、3月、6月、9月、12月の会合でFOMCメンバーが今後の政策金利の行方を予想するドットチャートと呼ばれるものが発表されます。
今回発表されたドットチャートと昨年12月に発表されたものを比較してみました。
比較したところ、ほぼ同じであり、メンバーが予想する2023年末の政策金利の平均値は昨年12月時点と変わらずの5.1%となりました。
2024年末の平均値は4.3%と2023年より低くなっているので、昨年3月から始まった利上げの最終到達点(ターミナルレート)は5.25%(0.25%刻みのため)となります。現在の政策金利は5.00%です。ドットチャート通りなら、次が最後の利上げとなります。
また、先行きの利上げについて述べる際に「継続的」という文言がFOMCの声明文から削除されました。
パウエルFRB議長が記者会見で「(金融不安により)金融情勢は引き締まったように見える」と発言していることも、利上げの停止が近いことを想像させます。
利下げは来年以降
ただ、利上げがあと1回だとしても、高い政策金利は維持される見込みです。
FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「インフレはなお高すぎる。労働市場はなお過度に引き締まっている」とした上で、「FOMCメンバーは、年内の利下げは見込んでいない」と述べています。
少なくとも、インフレが十分に抑制されるのを確認するまでは、利下げはなさそうです。現時点では、ドットチャートが示すように、利下げは来年に入ってからとなりそうです。
金融不安後退なら株式市場はしっかり
目先のポイントは、FRBが金融不安を鎮静化できるかです。
シリコンバレー銀行などの米国の地方銀行の破綻は銀行全体の問題ではなく、偏った預金者や偏った運用先といった各銀行の独自の問題と見ることもできます。ただ、市場が疑心暗鬼になり、次に破綻する銀行を探す動きとなったことから、金融不安が生じました。
インフレはすでにピークアウトし、利上げの最終到達点が目前に迫っています。FRBが金融不安の鎮静化に成功すれば、米国の政策金利は今後高止まりを経て、来年は利下げへと向かいそうです。
利下げは株式市場にとって好材料です。米株市場は、年後半あたりから、徐々に来年の利下げを織り込み始め、買いが優勢になっていく可能性がありそうです。
記事作成日:2023年3月24日
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ライター:佐藤 隆司(プロフィールはこちら)
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