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orbit より S.O.S
ちっぽけな自分のことをどの角度からみてもまるで価値なんて無いように思ってしまう夜があるかと思うと、自分には他の誰にもなし得ない大きな使命を持って生まれてきたのだと根拠もなく思える昼間もある。
気分という一言でいうにはあまりにも繊細で激しい感情の波を乗りこなせる時もあればあっけなく飲み込まれ沈んでしまうこともある。
電線の隙間を縫って一筋の飛行機雲が空を横切ろうとしている。
鳥の群れが紙吹雪の
北海道を歩いていてなんか思い出したみたいに思いついた話。
等間隔に並ぶ街路灯に無機質さ以外の何かを感じるのはおそらくその一つ一つの経年劣化と電球の光がまちまちだからだろう。
彼女の少し後ろを歩きながら街路灯によって艶のある髪を滑らかに滑るハイライトを見つめていた。
早足で一歩踏み出すたびに小さな体に震度が伝わるのが髪の先のハイライトの破片によってわかる。
「どうしてこうなったでしょう?」
と、不意に彼女がいうので
「倦怠期ってやつのせい?」
と答えてしま
川端康成の雪国を読んで思いついたお話。
葉子という名前が古臭くて好きではなかった。
響きもさることながら、漢字なんて葉っぱの葉である。
物心ついたとき父にどうしてこんな名前をつけたのかと問い詰めた。
小説家志望で実際は郵便局員だった父は
「言葉にも葉書にも葉という字が入っているから。」
と答えた。父は寡黙で、そして嘘をつかない人だった。
自分の名前に「希望」とか「期待」とかそういうメッセージが込められていないということを知って幼い日の葉