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鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎の感想もどき

この映画とても評判が良く、面白そうだなぁと気にはなっていたが、子供の時から散々観てきた鬼太郎を今更と躊躇していたら、劇場上映が終わり、機会を失ってしまった。

やっぱり観たらよかっかもと、残念に思っていたら、嬉しいことにAmazonプライムビデオで配信が始った。これは観ないわけにはいかない。子供向けの食い足りないものだったら,途中で辞めてもいいし、良ければ観続ければいい。配信は気楽で良い。(良くないかも)

ある人が、犬神家の一族だ。と、言っていた。それぐらいか、もしかしたらそれ以上、しっかりとしたえげつなさ。子供が見るかもしれないアニメで(きっと親と一緒に見るだろう)、ここまで描いて良いものなのか。びっくりした。

ただ、これは否定ではなく、完全肯定の感想だ。嬉しい誤算。

ここまで躊躇無く思い切り良く、人の裏も表も身にしみている世知辛い大人を、ニヤリとさせる、陰鬱な内容に心が歓喜した。

出てくる人全てが、曲者厄介者ぞろいで印象に残る。特に、主人公の水木という男は、兵士として南方へ戦争に行き、戦闘と飢、病で日々絶望的な状況を生き残った。

おまけに、戦争がにっちもさっちも行かなくなり、全員が玉砕となった時、上官があらゆる言い訳を言い、現場から逃亡。そんな姑息な裏切りを胸に秘めて、彼は生き残り、生きることへの執念と、何者かになろうとする上昇志向を強く心に刻み。野心を果たすために事件の真っ只中に入る。

原作者の水木しげるも、南方に出征し、激しい戦闘の中、片腕をなくしている。鬼太郎など妖怪の漫画で名をなしたが、彼の真骨頂は南方での戦記もの。それは、決して勇敢で華々しいものではなく、陰惨で、悍ましく、人の業の恐ろしさを描いたもので、悲惨な現状の中で、赤裸々に浮かぶ人の業を描いている。

いつもは、水木氏の持つ、生々しい情念をかなり薄めて、彼が持つ独特の滑稽さを全面に出して、子供から大人まで楽しめるようにしているが、滑稽さを薄め、胸に潜む欲望の暗さの陰影を多彩な展開で見せてくれる。

こうだろう、ああだろうと予想した先が、いい感じで曲がりくねり、立ち止まり、足早に疾走し、ひと時も飽きさせない。上手い、とても、上手い脚本だと思う。

主人公と恋仲になる女の子が出てくるのだけど、唯一、心が清らかで、安らかな印象を受け、強欲な人物の中で、一服の清涼剤のような感じを受けていた。が、この物語の転換だと、真逆な結果になるのだろうと観ていたら、なんと、絶句する陰惨さ。知ったその時、そうで無くちゃと、ひざを打つ。

こんな感じ。まともな感想は書けそうも無いから、面白かったよかった。ぐらいだろうか。結果として。

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