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恭庵書房のオススメ書籍 2021/12〜2022/2

ベスト5

井崎 英典『ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方』

コーヒーは好みも流派も多様なのに、コーヒーと一言で表される。そして、流通しているほとんどが粗悪品。世界で認められたバリスタも、それぞれ意見が違う。毎年のコンペで、トレンドは変わる。つまり、コーヒーは自由である。ほんの少し知識を得ようと調べると、とても厳しく何かを書いてあるが、それは一つの説であり、いろいろなやり方を試して好きなものを発見すればいい。
世界を取った人の本を読むと、それゆえ、全然違う。似たようなタイトルの本を読んでも、中身が違う。信じるか信じないか、支持するかしないかは、自分の感覚で選ぶべき。

この本での目からウロコは、以下の通り。
・冷凍保存すると消化現象が16倍遅くなり、粒度分布が低くなる。冷凍するだけで、同じ抽出をしても劇的な味わいの差がある(冷凍豆を即座に挽いて淹れる)。 pp.94-96
・プロペラグラインダーは粒度分布が広く、味わいにばらつきが出る。電動フラットグラインダーは狙ったサイズに挽ける可能性が高い。
・蒸らす際と3投目にドリッパーを揺すると、お湯と粉が均等に触れ合う状況をつくる。
・水の中のカルシウムはコーヒーの濃度を引き出し、マグネシウムはフレーバーを引き出す。
#パクチー銀行 で飲んだコーヒーで、飲んだ時に好みを伝えてくれれば、それに近づけるための実験をします。(なにもなければ、僕がいいと思う方法で淹れます)


柄谷 行人『憲法の無意識』

日本国憲法がなぜ書き換えられないか。「自発的に作られたものではない」ことを改正の理由に挙げるのは定番だが、作られたあと、内在化して「無意識」の領域に置いているという論には感服した。ぜひ一読を勧めたい。

「空想的リアリストは憲法九条があるために自国を護ることができないというのですが、われわれは憲法九条によってこそ戦争から護られるのです」(p.184)

「たとえ策動によって日本が戦争に突入するようなことになったとしても、その挙句に憲法九条をとりもどすことになるだけです」(p.198)


鈴木哲夫『誰も書けなかった東京都政の真実』

都民必読。一国に相当するほどの予算規模を持つ「特異な自治体」の強大な権限と利権、お金に対する意識の低さ、あらゆるものの私物化が、一部の意向と大多数の無意識(ここは日本全体の病)でなされている。ニコニコしているけど自分のことしか考えない人たちを野放しにしていたらいかんよね・・・。


なかじ『麹本: KOJI for LIFE』

味噌は作ったことがある。酒蔵は何十カ所も訪れて話を聞いた。麹って身近なものだし、興味を持っている・・・と言いたいところだが、興味を持つフリをして止まっている気がする。
本書は、家庭にある材料で麹をつくる方法を解説しながら、麹のことを分かりやすく書いている。ここまで噛み砕いてもらうと、麹を作らなきゃという気になる。また、フリだけにならなきょうにしなければ。これ読んで、一緒にやってみませんか。
この本に出会ったのはTwitterの投稿から。著者のなかじさんが、なんとパクチー銀行の写真を撮ってツイートしているのを見つけたからだ。


服部 文祥『サバイバル家族』

自分の行動に、丁寧に理由を求める。なんとなく社会に流されてふわふわするのではなく、自分たちがどう生きるかについて思考して行動する。といっても社会から切り離された生活をしているわけではなく、頑固にそれを追求する父と、その背中を見ながら社会と対峙する家族メンバーの活動と考え方が面白い。


恭庵書房で読める私本

加藤 瑛美『空回りしない婚活方程式』

自身の体験から、婚活について分析した本。悩んでいる方には、超オススメ。そして、婚活や結婚に興味がなくても、自分らしい人生を送りたい人にはヒントがいろいろ見つけられるかもしれない。
自分の理想の場所に行くことでパートナーを見つけ、新婚旅行で世界一周をして、新婚さんいらっしゃいにも出演した才媛の赤裸々な思い。



染野忍『ドイツで起業して』

サッカー日本代表を志して挫折。一旗あげるために自転車で世界一周。方向転換でドイツに定住、起業した著者の半生記。成功には必然的な理由はないが、失敗しても諦めず、行動してやり切ることで、自分の人生を掴んできた。うまくいかない、恥ずかしいなど、他人と違う道を歩もうとして格好つけて終わるのか、やりきって自分を生きるのか。中途半端で終わりたくない人は、これを読んで奮い立ってほしい。
一般には発売されていない私本。 鋸南エアルポルト -Kyonan AIR-port に置いておくので読みたい人は来てください。南房総を旅していて、たまたまパクチー銀行に入ってきてくれた。4時間半ほど話をして、10日後に、またわざわざ来てくれて著書をいただいた。

初版 2018年12月(150部)


こちらもオススメ

渡辺 利夫『後藤新平の台湾-人類もまた生物の一つなり』

明治時代後期からの台湾開発の状況がよく分かる良著。後藤新平のグランドデザインがいかに効いたかが具に分かる。当時の政治家、国づくりに関わる人たちの主体性と意思決定のはやさ、責任感に感服する。時代が動くためには、人が動かなければならない。


川島 博之『中国、朝鮮、ベトナム、日本――極東アジアの地政学』

中国のすぐ隣ということで翻弄された共通の歴史をもちながら、異なる発想を持つに至った朝鮮半島とベトナムの歴史比較が面白い。特に、ベトナムの歴史はほとんど全く知らなかったのもあるので。
日本の位置とそれによる歴史の特殊性を知るという意味でも興味深い。「人間というものは他国の歴史上の不幸に全くと言っていいほど関心がない」というのは一面の事実だが、何より著者の主張であると感じた。


鈴木 哲夫『戦争を知っている最後の政治家-中曽根康弘の言葉』

昔の政治家は迫力がある。なぜ今はそうでないのだろうと思いながら読んだ。若い時に活躍させないで押さえつけられると伸びないのではないか。大企業とかと一緒。


ボブ・アーノット『米国の医学博士が伝授する 人生を変えるコーヒーの飲み方』

コーヒーを「コーヒー」と一言で括ると、見誤る。僕がコーヒーの良さを知ってすぐにカフェを作ろうと思ったのは、その事実を知ったからだ。「コーヒーならなんでもいい」というのは「インドにはカレーしかない」というぐらい馬鹿げた意見だ。
この本は、コーヒーとその健康への効果についてフォーカスして書かれた本。本の作り自体はやっつけっぽいが、内容には納得できる。深煎りコーヒーが広まった理由、砂糖とミルクが無くてはならないものになった理由などはなるほどと思った。

豊かな味/カロリーほぼゼロ/血糖値の急上昇を起こさない/炎症を軽減する/活力が増す/気分が上向く/カフェインは代謝を上げる/カフェインは運動中に脂肪を優先的に燃やすのを助ける/フェノールは腸からの脂肪吸収を減らす/フェノールが新たな脂肪の生産を減らす/フェノールによって危険な脂肪が作られにくくなる/コーヒーは体重の維持を助ける/コーヒーは筋肉量を維持する/フェノールで運動ベースがアップする/コーヒーは運動のスピードとパワーを高める
pp.166-173


宮入恭平・杉山昂平(編)『「趣味に生きる」の文化論―シリアスレジャーから考える』

趣味と仕事の切り分けを、多数の研究者がうんうん言いながら、実例をもとに考えている。シリアスレジャーという言葉を作ることで、どちらとも言い切れないところに説明を加える試み。趣味vs仕事の対立は現代社会の変化を説明するのに不可欠なものだろう。そういう意味でそれぞれの論は楽しめる。
一方で、趣味も仕事も1つずつというのが多くの人の前提になっているようだ。ざっくりいうと稼げる方が仕事で、そうでない方が趣味。うーん。だから仕事が「ツマラナイ」という話が出てくるのだろうなと思う。
僕にとって趣味も仕事もそれぞれたくさんある。いくつあるか不明。列挙しても、漏れがある。忘れちゃったり思い出したり、急に発生したり。「何やっているかわかりません」がこの15年ぐらい真面目な御仁からの問いだが、聞かれたって僕も分からない。一つだけ言えるのは趣味と仕事の境目は完全にないということだけ。
これと同じ出版社に「シャルソンの研究」を持ちかけている研究者たちを知っている。まとめきれないようだ。そうだろう。でも、とても楽しみにしています。


坪田信貴『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』


子供への声がけについて、根拠とともに分かりやすく説明されている。ついつい出てしまう「呪いの言葉」をいかに止めるか。声をかけたことで状況を悪くしてしまうことはなぜ起こるのか。
タイトルにもなっている「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない根拠はきちんと理解しておきたいところだ。


宮崎 学『法と掟と この国の捨て方

日本では社会が国家とほぼ一致してしまっている。個別社会が弱く、ただひたすら空気に流されるのが常識的な生き方とされる。こうなった原因は近代の国家づくりにあるのだが、個別社会が強い諸外国の例を参考にして日本を捨てる「思考実験」を勧める。
とても興味深い話だった。社会や国家や世界を自分たちの手で作っていくために必要な考え方が満載。


平松 洋子『食べる私』

食べる経験は、その人の人生を作り出す。各界で活躍する29人が食や幼少期の体験から浮き彫りにされる。家庭や時代の環境に絶対的な幸や不幸はないし、しかし、その中で受け取ったもので人生は出来上がる。面白くて一気に読んでしまったが、3日に1つぐらい、ゆっくりじっくり読むともっと楽しめるかもしれない。手元に置いておきたい一冊だった。


安藤 昭太・宮崎 翼・NoCode Ninja『ノーコードシフト プログラミングを使わない開発へ』

ノーコードという言葉を1年ぐらい前からよく聞くようになって、なんとなく分かるような分からないような・・・。本書はその実態がとてもわかりやすく整理されていて、かつ事例も豊富ですばらしい。
鋸南エアルポルトのサイト(Wix)も、パクチー銀行のサイト(Google Sites)も株式会社のサイト(ペライチ)も、ノーコードだった。そういうことか。そして、この本を読んでアプリとかノーコードで作ってみたくなった。
著者の一人 宮崎翼さんは、PAX Coworking の2年目ぐらいによく来てた方。


宮沢 和正『ソラミツ 世界初の中銀デジタル通貨「バコン」を実現したスタートアップ――日本発のブロックチェーンで世界を変える』

世界初の中銀デジタル通貨がカンボジアで導入され、それが日本のスタートアップの力によるものだという。当該分野での先読み力と、仕組みづくりのオファーが来るタイミングなど、神がかっている。
実際の動きを作っている張本人の書籍を通して、デジタル通貨や仮想通貨の最近の動きを知ることができた。この中で、日本はどういうポジションを取れるのだろうか。ソラミツが並行して手がけている会津のデジタル地域通貨byaccoは興味深い。今後の動きにも注目したい。


平賀 緑『食べものから学ぶ世界史: 人も自然も壊さない経済とは?』

持続可能性について食べ物から学ぶに最適な一冊。ジュニア新書だけど、大人もOK。かなりのボリュームに詰め込みすぎてはいるが、中学生ぐらいでここから知識を広げるとよい。


本田 直之『なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか』

世界で活躍する日本人シェフのインタビュー集。先駆者がいて、それなりに土壌ができたところにオリジナリティを持ってチャレンジする人が増え、実績を上げている。こういうまとめ本は、また次のチャレンジを呼び起こすだろう。日本で我慢するだけが生きる道じゃないと、多くの人に気づいて欲しい。



パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。