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焙煎から始める珈琲道の入口は鋸山登山道にあった

コーヒーを飲むなら、ぜひ観てほしい映画。こだわりがある人も、無い人も。自分が飲んでいるものが、どういうものか、それにどう関わっていくか真剣に考えるための入口として最高の作品。

香りはいいのにマズイ!

僕がコーヒーに対してずっと感じてきたことだ。飲む習慣を持たなかったし、美味しくないものだと思っていたので、自分の意思で買おうと思ったことはほぼない。

友人の実家が喫茶店で、コーヒーを淹れてくれた。いつもよりいい香り。そして、味も悪くない。「美味しいでしょ」というのに素直に頷けた。二十年以上前の話。

会社員になり、ウチアワセという儀式に頻繁に参加するようになった。そこに必ず出されるドス黒い液体。香りもそれほど良くない。味は、最低。

やっぱり、コーヒーってマズイよね。

「コーヒーが無いとやっていられない」と嘯く人をたくさん見てきた。缶コーヒー、そして最近はコンビニコーヒー。「味はともかく、これがないと目が覚めない」。なんだよそれ!

昨年末、四十代も半ばを越え、とある目的で(コーヒーでは無い)訪ねたコーヒー専門店で、感興を催した。コーヒーを「美味しい」と結びつける思考回路はなかったので、「悪くない」と感じたとあえて書くが、「さわやか」でそれまでに飲んだどのコーヒーとも違っていた。

そして、一見気難しい人なのか、と思ったマスターが、超フレンドリーで話好きだったのが幸いした。僕は2時間近くその店に滞在し、コーヒーとマスターの話と、周囲の人との交流を楽しんだ。

自分の味覚を確認するため、鋸山を縦走した後、時間のあるときにその店に寄った。月イチぐらいのペース。

4カ月後、ほかにお客さんがいなかったとき、そこで飲むコーヒーが「美味しかった」ことを打ち明けた。「えっ、もともとコーヒー飲まない人なんですか」とマスターは驚いていた。

そして、マスターは自身のコーヒーの仕事について、1時間ほど語ってくれた。そのスペシャルな「講義」で、僕は、それまでに飲んだコーヒーが不味かった理由が見えた。コーヒーの味を落とすプロセスがたくさんある。大量生産による平準化は、下の基準に揃うことになるので美味しくない。そして、自家焙煎ですら、扱い方を間違うと品質をどーんと落としてしまう。

要は、焙煎してみればいいんですね?

「いきなりそこですか?」とマスターはおっしゃった。いろいろなコーヒーを飲んだり、豆を買ったり、コーヒーを追求したその先に、焙煎へのチャレンジがあるというのが一般的な位置付けらしい。

ものごとに順序があるとすれば、まぁそうだろう。でも、「講義」を聞いて僕は、まず焙煎をして、自らの手で美味しいコーヒーを抽出するのが過去を払拭するために必要だと確信した。

コーヒー豆を一度も買ったことのない僕は、こうして焙煎からコーヒーの道に入ることになった。

そして、焙煎を一度しただけで、その世界に一気に入り込めた。焙煎を繰り返すごとに、理解は深まり、その先にさらに深い世界があることを知った。


僕に焙煎を決意させたコーヒー専門店はこちらです。


パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。