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恭庵書房のオススメ書籍 2022/3

高橋 大輔『ロビンソンの足あと 10年かけて漂流記の家を発見するまで』

「地球はもう探検しつくされている」というドラえもんで聞いた言葉を鵜呑みにしていたが、僕が旅を始めた頃にこんなに素晴らしい探検と探求、そして結果を出していた人がいたとは。自分の好奇心を追い求め、人々の心を動かし、くじけそうになりながらも前に進んでいく。

「探検とは誰もが気に留めない路傍の石や遺構に光を当てることに違いない」と著者は言う。そうだ、秘境に行くだけではなく、自分の周囲の誰も顧みないものに新しい価値を与えることは、誰にだってできる。シャルソンを通じて、探検者を増やしたいと思った次第。


大石久和『「国土学」が解き明かす日本の再興 ― 紛争死史観と災害死史観の視点から』

紛争死史観と災害死史観という視点から日本の特殊性を解説している興味深い一冊。ルールを変えられないのに過去を流してしまうのはなぜなのか、雰囲気だけで事を進めてしまう原因はどこにあるのかがわかりやすく示されている。

特異性を解消すればいいというものではない。日本には日本の良さがある。しかし、特異であることを理解し、諸外国との違いをきちんと認識して対峙しなければ、これからの時代は生きていけない(すでに30年出遅れた)。


鈴木 哲夫『期限切れのおにぎり―大規模災害時の日本の危機管理の真実』

地震のほか豪雨災害の可能性(というか不可避性)が語られ続けているものの、すべての事態に対して対処療法しかできていない今の日本。危機管理に関する甘さ、知恵の蓄積のなさを、自分を、家族を、地域を守るために知っておいたほうがよい。

過去30年に起きた大地震の現場リーダーへのインタビューを集めた本書は、これからの危機管理を考えるのにとても素晴らしい東日本大震災から11年目の明日、ぜひ読んでほしい内容だ。

見せかけの復興庁、ワクチン担当大臣など、一見良さそうだけど、縦割りの弊害の前に無力なのか。むしろ仕事が増えているだけ。過去の事例から、そんな真実も知った。

著者の話を聞く機会が先月あり、危機管理に関して自分の無知を知って興味をかきたてられたので、読んでみた。


吉田亮人『The Absence of Two』

しゃにむに写真家の「家族の記録」。従兄弟の自死という思いもよらない結末がそこにあるが、穏やかな写真と祖母と孫とのなにげないやりとりが心に刺さる。ゆっくりとページをめくっていただきたい。


石田伸也『評伝 1985年の尾崎豊』

尾崎豊と同時代のミュージシャンの交流・遍歴がわかる良本。断片的に知っていることがつながった感じだ。尾崎豊ファンは周りにも何人もいるが、語る人が熱狂すぎてあまり関わらないようにしていた。しかし、鋸南エアルポルトに89日間滞在するきっかけの大きな理由の一つが尾崎豊だったという事件が最近あり、本を手にとってみた。僕が小中学校のときに、こんなことがあったのか・・・。めちゃくちゃ興味を持ってしまった。


宇野 重規『自分で始めた人たち~社会を変える新しい民主主義』

タイトルで手に取った本。よく見たら「民主主義」の本と書いてあった。選挙とか、そういう類の話ではない。自分たちで、社会をつくっていく人の話。その一歩を踏み出した人たちのさまざまな事例。

こういうアプローチで地域づくり、国づくりをする人が増えるのは素晴らしい。私がやっているのって民主主義だったんだ。「民主主義」という単語は変えないとね。主義じゃないし。オススメです。


パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。