見出し画像

恭庵書房のオススメ書籍 2021/5

矢田海里『潜匠 遺体引き上げダイバーの見た光景』

海難事故の遺体引き上げを専門にしていた潜水士の実話。東日本大震災で自らも被災しつつ、それまでと比較できないほどの遺体を上げ、考えたことが綴られる。
前半は蔑んだ目で見られるなど職業としての葛藤。請求しても支払われないことが多く、借金をしてもその仕事を続けた心の中には、自分以外誰もできないという複雑な感情があった。
震災から十年が経ち、また全然違う側面から復興について考えさせられた。遺体引き上げという仕事だけでなく、潜水士の人生も波乱万丈なものだが、その時々の心情を目の前に出現させる描写力がすごい。一気に引き込まれた。

伊藤 大輔『おいしい地方議員 ローカルから日本を変える!』

身近な話題から政治に関心を持ち、議会のあり方に疑問を持って行動する革命児の本。政治家はロクでもなく、街宣車で名前を連呼したり恥も外聞もなく叫ぶことで地位を維持しているようなイメージ。選挙も何が変わるかわからないし行かないと言う人が半数を超える状況。そういう状況に甘んじるのではなく、副業で地方議員をやろうぜという熱い提案。真実を見極めるのにイデオロギーはいらない、ポジショントークに終始する議員の実態など、現場にいて考えている人だから書けることばかり。面白くて一気に読んだ。
僕の出身地・神奈川県秦野市にこんな議員が生まれてとても嬉しい。パクチーハウスの元スタッフ(秦野出身)の旦那さん。彼の写真展を鋸南でやろうと話しているところ。

中川ワニ『「中川ワニ珈琲」のレシピ 家でたのしむ手焙煎(ハンド・ロースト) コーヒーの基本』

「焙煎」というより「調理」だと思っているという言葉に、グッと惹かれた。単なる技術でなく、もてなす姿勢が伝わってくる。この人のコーヒーを読んでみたいと思った。傷んだ豆の選別も、1つずつでなく、全体の調和を考えながらピックアップするという姿勢もいい。コーヒーは自由だ。

よくわからないということを恐れない方がいい。わからないことを楽しめる時間は限られているから。わからないながらなんとなくやっているうちに、だんだんいろんなことに気づく。(pp.32-34)

桑原功一『フリーハグ』

世界中でフリーハグをしている桑原功一さんが、いまの生き方を選んだ人生の流れについて語った一冊。普通や常識に従うことを潔しとせず、かと言って自分が何をしているのか悩み、その中で常に選択を繰り返して選び抜いた独自の道。
7年前にパクチーハウスで行った 旅人経営者の会 で講演してもらったことがあります
率直に、彼を応援する人が増えて欲しい。ぜひ買ってください。

福岡伸一『最後の講義 完全版』

生命について平易な言葉でわかりやすい。福岡氏の他の書籍を読んだことのある人、読むつもりの人には物足りないだろうが。機械論的な考え方より、動的平衡的な発想で身体や世界を見たいと思う。

フェルメール巡礼を経て、デジタルデータで37枚すべての絵を復元して「フェルメール光の王国展」を開催した。本家本元のオランダ・マリッツハイス美術館が招いて作ったプロモーション動画。

番外編

いま、アタリマエとなっているアメリカ発の食文化が生まれた過程を描いたドキュメンタリー。大変興味深かった。都市化で変化した物事は、田舎への分散でまた変化するのかな。


パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。