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コワーキングデー2021 #CoworkingDay

2010年8月1日、正式オープンを迎えたPAX Coworkingで、僕は1人だった。2カ月ほど前に知り合い、最初のメンバーになってくれると約したMさんもなかなか現れず。コワーキングに対する希望と、実際誰も来ない(しかも誰も知らない)ことへの焦りが、日が経つにつれて高まってきた。

世界のコワーキング仲間が情報交換をしていたメーリングリストがあった(今もある)。コワーキングをつくろうと決意してから3カ月強、そのMLを日々読み、いろいろな人と意見交換をした。自分のコワーキングを作ったことも報告。しかし先行きは全く不透明だった。

PAX Coworkingに最初のお客さんが来る前だった。2010年8月上旬のある日。そのMLである提案があった。8月9日を「Coworking Day」にして、世界共通でその日を祝おうよと。いや、その日パクチーの日だし。僕の会社の設立記念日でもあるし。

なぜそんな提案があったかというと、サンフランシスコでBrad Neubergという人が、初めて「Coworking」という言葉を使って(作って)人類史上初のコワーキングをした日が数年前のこの日だったから。

まだ日本のコワーキングがどうなるか、というか実際コワーキングが広がっていくのか経堂の一室で終わるのかも分からない状態だったが、「僕の記念日」に「Coworking Day」が追加されるという提案をみて、「持ってる」と思った。MLに他の多くの人と同様に賛意を表し、それが決定する瞬間を見て興奮した。

「Coworking Day」制定から11年。今年は、コワーキング界をともに率いてきたカフーツの伊藤富雄さんの企画に便乗して、この日を祝った。

乾杯 → 伊藤富雄さんの「短めのプレゼン」+質疑+告知

タイトルに「短め」と入れるのが恒例になった伊藤さんの挨拶から。伊藤さんと初めて話したのは2010年のGWあたり。コワーキングをやってみようと思い、「Coworking」で検索して日本語で発信していたのが伊藤さんと僕だけだった。ウェブサイトに電話番号を見つけ、初めましてから2時間ほど通話したのはいい思い出。

「短め」プレゼンで、伊藤さんは「Coworking」 と「Coworking Day」の解説。

・コワーキングの5大価値

Accessibility(つながり) 必要な時に必要な人とつながることができる
Openness (シェア) 知り合ったコワーキングユーザーがお互いのリソースを提供し合う
Collaboration (コラボ) お互いのリソースを提供し合い一緒に仕事をするコラボの関係に発展する
Community (コミュニティ)いくつものコラボが生まれ、「ワーキングコミュニティ」として機能し始め、いくつもの仕事が回りだす
Sustainability (継続性)上記のようなコワーキングの価値を提供することでローカル(地元)を活性化し維持継続する

・コワーキング曼荼羅

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岩田 かなみさん(兵庫神戸:ON PAPER/あすてっぷコワーキング(2021.9オープン))

パラレルコミュニティコーディネーターの岩田さん。コミュニティコーディネーターを複数つなげるような役割。On Paperはクリエィティブ系のためのコワーキング。会員による商店街案内やみんなでコワーケーションに行くことも。コミュニティの力でビジネスだけでなく人生に関わる変化が発生している。まさにコワーキング的。

1on1という、会員同士が1対1でコミュニケーションを取ることを運営側がサポートしている。コミュニティマネージャーは「おせっかい力」が大事。


篠田 拓也さん(京都:GROVING BASE

「なるべくルールを作らない」がポリシー。フロアがたくさんあるので、状況に応じて利用者が場所を変える。コワーキングは昔のカフェのようにコミュニケーションから社会の変化が起こる場所と捉えている。colon coffee roastersを立ち上げ、場所の特徴を表したコーヒーを作ったりもしている。

社長夫と主婦妻の完全入れ替えという実験もしているとのこと。好きな活動をたくさんつむいでいて面白い人だと思った。


永瀬 泰子さん(大阪ほか:Crossing(新大阪), こひつじ親子コワーキング(三鷹))

シェアハウス34軒運営。「働く」と「暮らす」の融合の実験からコワーキングを作り、自分の出産を機に親子コワーキングも立ち上げた。リフレッシュと仕事の融合をするための実験場も立ちげようと考えているところ。

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江原 政文さん(長野佐久:ワークテラス佐久

教育移住が増えている佐久から。ローカル複業化プロジェクトを推進している。地域課題や100年先に残したいことをコワーキングの力で推進していく。地域に関わりたい人が関われる仕組みを作っている。苦行は分散し、自分の内発的動機からプロジェクトに関われるようにしている。行動と体験から新しい地域課題の解決⇒ビジネス化が見えてきている。

ローカルは競合しない!


萩原 高行さん(東京:コワーカー)

誰もが場所にしばられずに協働できる社会の実現を目指している。30人程度のコミュニティの強固なコワーキング(Citizen Spaceなど)が印象に残っているが、メガコワーキングの登場に伴い閉館になっているのが残念。

いまは、全般的にはコワーキング志向より創業志向になっている。長期滞在とコワーキングの親和性は高いと考えている。

今野 純子さん(北海道:COCOスペース

9カ月前からコワーキング運営を始めた。それ以前は10年以上不動産業。5年ほど前に半年間コワーキング運営体験をしたら、北海道各所から人が集まるようになった。コロナ時代になったあとに、たまたま空いたオフィスでコワーキングを始める(個室・キッチンつき・靴を脱いでくつろげる)。駐車場でアート教室、水遊び、フリマも。登録者100人超。

8月にビブリオ・アイドル(推しのアイドルについて熱く語る)を開催する予定。月40-50のイベントを今野さんが1人で運営している。追われている感じがある。マネージャーさんがいるといいなぁと思っている。昼間のスナックみたいになっているのが悩み。


古家 良和さん(兵庫三田:OFFICE CAMPUS

古民家コワーキング。元大学職員。地域コミュニティはあるが、コワーキングはなかったので作った。受付は羽ペンで古書に名前を書くスタイル。ドロップインをお得にして、月数回の人がいかに来やすくなるかを目指している。関学卒業生をいかに増やすかを考えている。ルールなく、人のタレント性で勝負したいと考えている。

自分の事務所経費として家賃を見ているので、収益は考えていない(考える必要がない)。つながりが増えているので全く問題なし。個人事業主と学生が多かったが、コロナウイルスの影響で半分ぐらい大企業の人が来るようになった。


池嶋 亮さん(香川高松:Setouchi-i-Base

香川県のデジタル戦略課のコワーキング。高松駅の目の前にある。県外の人からすると「便利」だが、高松駅は高松市の端にあるので香川の人からは不評とのこと。

何もない空間にコトを起こすのがイベンターの仕事。行政任せだと施設・機能で終わってしまうので、そこでコトを起こす人をいかに増やすか。「香川に面白い人はいない」と口を揃えて(面白い人が)言うので、その人たちを呼んで話してもらう時間を設けている。SDGsというあまり広がっていないキーワードを香川県という視点から考えるイベントは、多くの人の関心を集めた(高校生が生き生きとしていた)。

日本で一番でなくても世界から評価されるコワーキングを作りたいし作れると思っている。


こけやま こうすけさん(兵庫神戸:コワーカー)

オンライン音楽教室を移働しながら行なっている。音楽教室(箱)を作って撤退した経験あり。コワーケーション先でセッションを行ってオンライン配信をしたいと画策中。

ツアーミュージシャンでなくとも、コミュニティをめぐりコミュニティをつなぎながら音楽活動ができることを証明していきたい。


松川 哲也さん(大阪藤井寺・柏原:ノーウェア土師ノ里ノーウェア柏原

コワーキングを巡る旅について。カンファレンスを中心に、各地に出かけた。共通項がある人=コミュニティ。今、土師ノ里と柏原でやっているNowhereは、最初は台湾に作る予定だった。

コワーキングは遊びながらコラボレーションする場所。安心と余白が大事。世界から人を集める予定だったが、創業がコロナウイルスの蔓延とほぼ同時で、逆にローカルな人たちが集まる場所となった。ローカルにこだわる人を見える化する「Local Graphy」を立ち上げた。


桃原 教子さん(沖縄大宜味村:SEASIDE OFFICE

やんばるのコワーキング。女性の利用者が圧倒的に多い。コロナウイルス蔓延からは独自のオンラインコワーキングを立ち上げた(最近はオンライン疲れ…)。ワーケーションは言葉だけが先行していて、混沌としている印象。


新妻 正夫さん(埼玉新座:Hanareひばりヶ丘

HanareのCoderDojoについて。非営利だが、長くやることで価値が出てくる。誰でも来ていい状態から、予約制にしたことで、逆に希望者が増えた(月2回から月4回になった)。保護者の方と話すことで、コワーキングのいい部分ができている(コミュニケーションが起こる)。


五十川 員申さん(石川野々市:cafe? IKAGAWA DO

コワーキング原理主義者。他人に使ってもらうためのコーヒーチケットを始めた。回数券を店に置いておいて、テーマに沿って利用してもらう。どんな人がそれを利用したかを伝える。

家に帰るのが面倒になったので、店の半分を家にして、そこで子育てもしている。玄関がなく、店を通過しないと家部分に入れない。幼稚園から帰った子供を、学生や地域の人が見てくれている。

IKAGAWA DOはWebページを作っていない。それだけで来られても困る。コーヒー飲みたい人より、仕事したい、相談したいという方が多い。自分がいないときも、常連さんが開けて運営してくれている(信頼できる多数の人に鍵を渡している)。

自分でイベントを企画しない(自分のコミュ二ティの外から人を集める)ということを意識している。


佐谷 恭(千葉鋸南:PAX Coworking Kyonan(鋸南エアルポルト))

新しい取り組みとして、8月9日から始まったSOTOCHIKUシャルソンについて話しました。


トークセッション動画

Facebookイベントページ


全国でコワーキングを運営/利用する人たちの話を聞いて、ものすごい刺激になった。僕は他の運営者に比べるとだいぶ年上となったし、ベテラン扱いされるけれど、次々に出てくるコミュニティ運営者の知見から学べることはどんどん増えていると感じた。

三田の古家さんが「ルールを作らない」「人間らしく」という話をしていたが、まさに世界でコワーキングが作られたばかりのときに熱く語っていて、本質的でないコワーキングに世界が塗りつぶされる中で忘れられてしまったと錯覚するような事実が、意志あるコワーキング運営者にはしっかり生きていることを確認できたのも(ほとんどみんな、そういう思いを持っていた)いい収穫だった。

11年前から変わらずいい続けていることだが・・・

コワーキング最高!

パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。