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子どもの声がうるさいと閉鎖される社会

「子どもの声がうるさいからって公園を廃止してしまって良いのでしょうか?」信濃毎日新聞の記事が議論を引き起こしている。ヤフーの記事に載るや1万件を超す書き込みがある。書き込みの多くは「クレームを言って閉鎖に追い込んだ人への苦言」と「このクレームに屈してしまった行政への対応への疑問」である。

記事によると長野の閑静な住宅街にある小さな公園が周辺の住人の「子どもの声がうるさい」というクレームを受け、仕方なく閉鎖という選択をしたいとものだった。管理する市も何もしなかった訳ではなく、苦情を寄せた住民の家に子どもがなるべく近づかないよう、園内に最大8メートル幅の帯状にツツジを植えたり、出入り口の位置も変更した。この公園を利用するという児童センターでは、子どもを迎えにきた保護者にエンジンを止めるよう呼びかけた。しかし苦情は収まらなかったという。

決定打となったのは住民がこの児童センターに直接クレームをいう行動をとったことだという。私はこの住民の行動には驚いた。「そんなことをしたら終わりじゃないか」苦情というか一歩間違えたら脅しである。察するに住民にはそこまで強いストレスになっていたのだろうし、次に住民は何をするかわからない恐怖を感じた。

10年ぐらい前からこうした一部の人のクレームによって社会が閉塞する方向に強い危機感を持っている。あるテレビの番組がコロナ前に公園を取材したところ子どもたちはすみっこのベンチに座り、みんなでゲームをやっていた。記者が子どもたちに、なぜ外で体を動かして遊ばないのかを聞いたところ「自分たちは大人から見たら迷惑な存在だから静かに遊んでいる」と答えていた。

私はこの状況にかなりの衝撃を受けた。自分たちが迷惑な存在と感じながら成長していく子どもたち、そんな国に未来はあるのだろか?

自分には価値があると考える感情、これを自尊感情という。日本人の自尊感情の低さは問題視されている。世界で最下位位。それも圧倒的に低い。日本人は幸福感も低いが、自尊感情の低さはもっと抜けている。自尊感情が低くなる理由はたくさんあるが今の管理社会の影響は極めて大きい。人と比較されて、何もしない聞き分けの良い子が「良い子」とされる。ここでは全く心の健全さは育たない。子どもたちの自尊感情の低さは大人のせいである。

10年前からこの状況をなんとか打開したいと思い、この閉塞する社会に警鐘を投げかける本を書きたいといくつも出版社を回ったが、当時はどの会社も全く実感を持ってくれず、その重要性を理解してくれなかった。

私はこの閉塞する社会をなんとか止めたい。
一部の人が強く文句を言えば変わる、やったもの勝ちの社会を変えたい。

「音」というのは受け手側に大きな個人差がある。ある人には心地よい音もある人には雑音なのだ。逆にいうとこれは経験や脳の影響で、コントロールもできる背景がある。実際に公園で大きな声を出す子どもが自分の子どもや孫だったらうるさいと感じにくい。音とはそういうものである。最初から他人の子が出す音はうるさいという考えがあるからうるさいと思うのである。

以前、住んでた家の近くに家族経営の印刷屋があった。平日は「シャンシャン」と印刷機の音がする。周りにはマンションが建つようになり、引っ越してきた家から「うるさい」とクレームがではじめた。クレームが増えていくなかで、印刷屋の主人は心を病み始め、そして家族に無理心中をはかってしまうという不幸な事件を思い出す。詳細はわからないけれども、長いこと苦しんでいたのだろうと思う。最悪の結末だった。音によるクレームが何かしらの事件に発展することは少なくはない。

人の聴覚は極めて優秀で、脳と連動して無意識に様々な働きを作っている。聞きたい音だけを聞き、聞きたくない音を遮断することもできる。しかし一度気になる音があるとずっとその音に取り憑かれてしまう。こういうメカニズムを説明して、人の感じ方を変えていきたい。また、クレームに屈しないで対応するにはどうしたら良いのか、そんなことも説明する必要があるかもしれない。自分の欲を強い感情に乗せて他者を動かす、そんな環境を変えたいのだ。

自分一人では微力だが、私はこの閉塞する社会をなんとか止めたい。
文句を言う人が我慢すれば良いという話でもない。
人は人のことをもっと知るべきだし、様々なメカニズムを知ってほしいと思う。そしてそれが相互理解につながると良い。

同じ考えを持つ人、意識をするだけで良い。疑問に思ってほしい。どうか小さく力をかしてほしい。

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