スクリーンショット_2020-02-02_17

「魅惑の心理」マガジンvol.37(世界一冷酷な日本人)日本人の心理

みなさんが感じる日本人のイメージってどんな感じでしょうか。「礼儀正しい」「マナーが良い」「真面目」「勤勉」「努力家」「財布を落としたら落としても警察にそのまま届いていた」。そう、日本人は誠実で、優しくて親切。モラルも高い。そんなイメージかもしれないですね。でも本当にそうでしょうか? そうした日本人も確かに存在すると思いますが、ごく一部です。

本当に疑うなら、都内の電車の中で胸を押さえてしゃがんでみてください。きっと誰も助けてくれません。あなたが連れた小さな子どもが駅でオシッコを漏らしてしまったら、誰か助けてくれるでしょうか。いや眉間にしわを寄せて迷惑そうな顔をして、その場所からみんな離れるでしょう。「こんなところで漏らすなよ」と言いながら。これが今の日本人です。

私たちの心には社会的な手抜きという心理があって、大勢人がいるところで困っている人がいても、誰かがやってくれるはずと見なかったことにする心理があります。日本人はこうした心理が非常に強いのです。多くの人が当事者意識を持ちません。そして利己主義です。助け合おうという気持ちはなく、面倒だなと考えがちです。他人は他人。他人は自分の世界に関与して欲しくないのです。自分の利益のみが優先されます。

今回の「魅惑の心理」マガジンでは、こうした日本人の現状を知り、どうしてこんな日本人が作られていったのかを考察し、ここから抜け出すための道を考えていきたいと思います。

2007年アメリカの調査で「国は貧しい人々の面倒を見るべき」という考えに対し、同意すると答えた人は、イギリス91%、中国90%、韓国87%、アメリカ70%でした。なんと日本は47カ国中、最低の59%でした。

日本人にはイジメに対しても「いじめられる方にも原因がある」などと考えるなど、弱者に優しい考えを持っているとは言えません。以前、私の前を道を歩いていた女性が何かの発作でのようなものでその場にうずくまりました。しかし、誰も助けようとしませんでした。広場のベンチに座っていたら、子供が遊具から落ちて泣きました。周囲には子どもの親と思える人たちがたくさんいましたが、誰も声をかけず遠目で見ているだけ、なぜか私のようなおじさんが声をかけることになりました。なんとなく不思議な光景に思いました。なんとなくこうしたことが増えてきたように感じます。

日本人は知り合いには優しいことをしたり声をかける方がたくさんいます。でも見知らぬ弱者には手を差し伸べないのです。

○日本人が冷酷になった理由

なんで日本人はこんなになってしまったのでしょう。理由はひとつではありません。複数存在していると思います。その理由を少し分析してみます。

1. リンゲルマン効果の影響

「社会的手抜き」をする人が多いと書きました。心理学でいうリンゲルマン効果と呼ばれているものです。集団で共同作業を行う時に1人当たりの課題遂行量が人数の増加に伴って低下する現象です。自分じゃなくても誰かがやってくれると感じます。これは人数が多いほど冷酷に出ます。

以前、新宿駅で人が倒れているのを大勢が素通りするのを見たことがあります。日本人の多くは、そうした人が大勢暮らす環境の中にいるのかもしれません。「そんなこと対応はしない」と感じる人ほど、大勢の中にいないのかもしれません。日本人は自分たちの心理を超えて、一極集中で暮らしているのかもしれません。この社会的な手抜きは都会になると顕著に出てきます。

2. 当事者意識が希薄になってきた
ちょっと怖い話しですが、自分の体も自分がコントロールしている自覚がなく、心が体にまるでない人が増えています。これは子どもの頃から、自分で選択する機会がなく決められたレールの上を歩き続けてきた人に見られる現象です。選択をする必要がなく、心の痛みにも向き合わずに、常に自分が自分でない感覚を持つのです。そういう人は、他人を助けようなんて発想が湧いてこないのです。何に対しても当事者意識が薄く、人にも自分にも無関心です。

当事者意識が薄いので、誰かが誹謗中傷で亡くなったとします。すると「かわいそうに」と思います。こんなひどいことを言わなくてもいいのにと思います。でも実際に、その人は違う人を攻撃しています。そういうことは珍しくありません。また暴言を言って死に追いやった人は「死なれたら、まるで私が悪いみたいじゃないの」と被害者の思考になります。とてもおそろろしいことだと思います。

3. 共感能力の低下傾向

共感できる能力は、前頭前野内にある内側前頭前野がつかさどっています。この前頭前野の血流がよくなり、セロトニン神経が活発になると共感する能力が高まるといいます。共感能力が低下している現代人はこのセロトニン神経が不活性です。困っている人を見ても「かわいそうに助けてあげなくちゃ」という感情を持ちにくいのです。困っている人がいても、「ふーん」で終わってしまいます。

サイコパスという「反社会性パーソナリティ障害」を持つ人も増えています。サイコパスは対人コミュニケーションに支障をきたすパーソナリティ障害の一種で、特に他者への愛情や思いやりが欠如していることや、自己中心的です。サイコパスは都会を好んで住むことが研究でわかっており、同時に都会は人をサイコパスにさせやすい環境であるといえます。

4.想像力の欠如傾向

想像力の欠如傾向もまた現代人の特徴のひとつです。倒れている人がいる。このあとその人がどうなってしまうのか想像ができないのです。子どもが泣いている、その後に子どもがどうなるか予想がつかない。想像しようともしない。そして何をしたら良いのかもわからなく、周りに人がいることも手伝って流されてしまうのです。駅だったら自分が助けなくても「駅員さんを呼ばなくては」といった発想が出てこないのです。

現代の人はお手本のようなものがないと行動できなくなりつつあります。「困っている人がいたら、どこどこにいる駅員に、○○という声をかけてね」と言わないと実行できなくなりつつあります。これも想像力低下、思考力低下の影響だと思われます。

5.損失回避性の高まり

ポーポーの書籍やnoteでは良く出てくる言葉ですが、現代人は得をしたいと考えるよりも、損をしたくないと考える損失回避性の傾向が高まっています。自分だけが助けに入って損するのいやだ。会社に遅れるのは損する。と考えてしまいます。こうした背景は社会全体が「失敗を許さない」そんな風潮とも無縁ではないでしょう。損失回避性は現代の人に大変多くの問題を生んでいます。

損失回避性はこちらに詳しくまとめています。↑

6.利己主義

日本人は明らかに利己主義になっています。この原因のひとつは過度の競争社会でしょう。決められたルールを守ることが良い子供とされ、日本は多様性を認めてこなかった。管理されやすい人が良い人であり、そうでない人は徹底的に排除するのです。それが管理社会全体のメリットだからです。その根底には自分も我慢してきた。我慢していない人間はずるいという発想があります。何しろ他人に寛容ではないのです。そういう人はよく「自己責任」という言葉を使いますが、実際は選択などそこにはないことが多いのです。

7. 自分勝手な人にシニア層が目立つ理由

お店の人にくってかかったり、文句を言っている人で目立つのがシニアそうです。シニア層はなぜあんなに怒りっぽくなるのでしょう。それは前頭葉の老化があります。加齢で脳は老化をしていきますが前頭葉はもっとも早く老化していく部位ともいわれています。前頭葉は感情のコントロールをしている場所なのです。ここが老化すると感情の制御ができにくくなり、とても怒りっぽくなり自由気ままに生きようとします。思い通りにならないとキレるのです。40代からこの老化は始まるといわれています。70代、80代といわなくても40代、50代、60代でキレやすくなる人はたくさん出てくるのです。

しかし欧米では「年を取ると性格が穏やかになり優しくなる」というのが定説なのです。イギリス・ケンブリッジ大学の脳科学の研究では「年を取るほど脳の前頭皮質が薄くなり、よりしわになることなどから、気が長くなり穏やかになる」と結論づけています。幸福度も歳を取ると増えてくるのが一般的です。しかし日本人は違います。歳を取るほど不幸せに感じてイライラする人が多くなるのです。これ様々な問題が考えられるが、欧米では歳を取ると人が集まっていく傾向がある。人と話をしてセロトニンが低下しにくく、より幸福感が高まる条件があるのかもしれない。しかし日本は歳を取るとどんどん孤独化していく人と話さない。そのため前頭葉の老化も著しく進みイライラするシニア層が増えている可能性もあるのではないかと考察します。生きがいもなく、お金もない、人もいない。これでは孤独感が増すだけです。日本人の若者は「老害」とシニアを敵対する傾向があります。老人を大事にする海外では考えにくい状況です。日本の環境が悪いと考えられます。

○どうしたらこのスパイラルを抜けられるのか?

ここまで読んでいただくと見えてくると思いますが、日本人全体的に冷酷になったのは、人が多い都会部で顕著です。都市で暮らしている人がより人に無関心で冷酷な傾向があるのです。今の一極集中型の都市での暮らしはとても便利ですが、本来の日本人の心にマッチしていないともいえます。社会性バランスが崩れているとも思われます。

当事者意識が欠如しているのは、無用な競争を強いてきた日本の教育システムの影響も大きいでしょう。昭和後期から続くこの競争スタイルが無機質で冷酷な日本人を作っていったのです。ただ勝つことを目指します。失敗した時の感情も、負けた人の感情も学校では教えてくれません。日本の学校教育はもっと「人の心」や心理学を教えるべきと私は考えています。

共感能力の低下は人間関係において様々な問題を引き起こします。セロトニンは気持ちを切り替える能力や心を安定する効果があります。会社で嫌なことを言われたり、無視されて不快に感じても、セロトニン神経がしっかりと働いていれば、気持ちを引きずることなく、前向きに切り替えていくことができるのです。セロトニンが不活性だと気持ちを切り替えることもできなくなってしまいます。

心を安定させ、共感能力を高めるトレーニングを紹介します。自分でできるところから、無理しないで気楽に挑戦してほしいです。

1. リズミカルな運動をする。単調なものを繰り返すことセロトニン神経が活性化すると言われています。あまりハードな運動でなく、ウォーキング、階段昇り降り、スクワットなど一定のリズムでできるものが好ましいです。特にお勧めなのがウォーキング。太陽の光を浴びることでセロトニン神経が活発になるので、外でできるウォーキングはよいでしょう。

2. 食生活を見直してバランンスのよい食事をします。セロトニンの原料は「トリプトファン」という必須アミノ酸。体内で合成できないので食事から取るしかないのです。トリプトファンは肉類、豆類、乳製品に多く含まれる。そしてビタミンB6を含む食品(サプリ)を取るように心がけます。お勧めは毎朝バナナと牛乳(ヨーグルト)を食べるようにして、それにチーズ、豚肉、赤身魚を加える。ダイエットで肉類をカットするとセロトニンが不足して、イライラするなど感情的に大きな障害が出てしまいます。食べるときも規則正しくよく噛んで食べましょう。

3. 規則正しい生活を送りましょう。早寝早起きを心がける。セロトニンは太陽の出ている日中に分泌されやすいので、朝早く起きて仕事をして、あまり夜更かしをしないで寝ます。休日もあまり遅くまで寝ていないで、いつもと同じような生活を心がけるとよいと思います。

4. 映画、演劇、小説などの作品を見て心を動かすことです。実際に人に会わなくても、作品に感情移入することで、共感能力は刺激されます。作品の中でも特に泣ける感動作品がよいと言われています。さらに、友人の悩みを聞いて一緒に悩んだり泣いたりするのも効果的です。

5. できるだけ人と会いましょう。人と会って表情や態度から相手の考えていることを読み取ろうと心がける。会話は自分の心を表すひとつの手段であり、全てでしない。人はよく自分の思っていることと違うことや微妙なニュアンスを間違えます。言い方に振り回されないように心がけていきましょう。

最後に想像力の低下は読書との関係も大きいと考えられます。読書をしなくなった現代人の想像力低下は顕著です。本を読む習慣を持ち、読みっぱなしにしないで色々なものを考えながら読書をすることをお勧めしたいです。想像力が高まれば、もっと人は人のことが想像できるのではないかなとも感じます。

冷酷な日本人の思考を変えていくことは容易ではありません。諦めて何もしなければ何も変わりません。ひとりひとりがこの問題を深刻に捉えて、変えていくようにしましょう。多くの人が当事者意識を持ちません。そして利己主義です。助け合おうという気持ちはなく、面倒だなと考えがちです。でも日本人は仲間に対しては優しい人がたくさんいるのです。もっとみんな仲間という意識を持つこと。自分と自分の周りにいる人間だけが仲間ではなく、人はもっと大きなくくりで仲間という意識を持ちたいです。そこにここから抜け出すヒントがあると私は思います。全ての日本人、子どもたちの明るい未来のために、今日から新しい1歩を進みましょう。

未来はあなたの一歩が作ります。

※この記事が興味深いと思ったらいいねボタンとnoteのフォローをぜひお願いします。良かったらマガジンのフォローもしてくださると喜びます。

続きをみるには

残り 0字
心理に関わるトピック、最新心理傾向、SNS心理学など教科書やネットに載っていないような希少な情報、オープンスペースではなかな話ができない業界の裏話もお届けしていくつもりです。

心理に関わるトピック、最新心理傾向、SNS心理学を雑談のような話を軽いお話にしてお届けします。心理学に興味がある人、心理を使って何かに活か…

いつも応援ありがとうございます。 みなさまからいただいたサポートは研究や調査、そしてコンテンツ開発に活かしていきます。 ミホンザルにはバナナになります。