頭の中のラーメン
ラーメンは人をダメにする。それは頭の中がすぐにラーメンに支配されてしまうからです。ラーメンというのは不思議な食べ物であり、食べていないと特に気にならないのに、テレビなどで誰かが食べているのを見たら、終わりなのです。もう頭の中が、ラーメン食べたいという気持ちでいっぱいになってしまう。もう、ホラー映画のように「それが見えたら終わり」なのです。
ラーメンの魅力はたくさんあると思われますが、私はまずスープに心が奪われます。素晴らしいのはラーメンの味の豊富さです。醤油、味噌、塩、豚骨、汁がない油そばもあります。皆さんはどの味が好きですか? 私はぐるぐる変わります。高校生の頃は勉強が終わった後に何しろお腹を満たすのは醤油ラーメンでした。勉強をすると何しろお腹が空くのです。社会人になると味噌ラーメンへと変わり、豚骨にハマり、今では塩ラーメンを好んでよく食べます。
また、ラーメンの魅力はスープだけでなく、味覚のストーリーにあると思います。スープの中で品よく待ち受ける麺、味のしみたチャーシュー、メンマやもやしなどの野菜、海苔があり、味玉なども存在します。ネギの風味も忘れてはいけません。食感も味の方向性も違うものが、整えられて絵画のように収まっている。世の中に芸術というものか存在しなかったら、私はラーメンが芸術だったと思っていたと思います。
そしてラーメンにはご当地ラーメンがあり、旅行に行かずとも各地の名産をいただくことができます。
北海道の札幌味噌ラーメン、太麺の縮れラーメンと野菜と濃厚味噌にバターがよく合います。福島の喜多方ラーメン。水が美味しい喜多方らしくすんだ醤油スープがいいですね。お店によっては絶望するぐらいのチャーシューが入っているお店もあります。新潟ラーメンの薄いチャーシューがたくさん乗るのもいいですね。
全国に広まりまった横浜の家系ラーメンは、ものすごい量の豚骨から抽出された濃厚豚骨スープは病みつきになり、「麺かため」「味濃いめ」「油薄め」など細かい味の好みが伝えられるのが特徴です。トラックで豚骨が運ばれてくるという神話を私は信じています。
広島の尾道ラーメン、醤油ベースで中細麺。店によって特徴がありますが、魚介系がブレンドされて、けっこう好きなラーメンです。関東の各地で油そばという汁なしのラーメンもあります。ラー油をどんぶりの内側に2周、お酢を3周、そして玉ねぎをたっぷり入れていただきます。麺を無心でぐるぐる混ぜていると、そこに宇宙の広大な景色を感じます。
久留米の豚骨は独特の強い香りフレイバーがあります。でもあれもまた病みつきになるものです。九州系のラーメン店は麺の形さに「かため」より「粉落とし」という表現があります。これを芸術と言わずに、何をもって芸術と語れましょう。さすがは神話の国、九州です。
そうそう私が住んでいる関東圏の新横浜には、ラーメン博物館というものがあります。昭和30年代のある日が毎日訪れるというコンセプトで、懐かしい夕暮れの昭和の雰囲気の中、ラーメン店が何店舗もあるのです。もちろん食べ歩きができます。ミニラーメンもあります。館内には警察官や駅員さんなどのキャストがいて、私は以前仕事でこの衣装、昭和30年代の制服を再現するために、色々と調べたりして奮闘したものです。警察博物館なら資料があるかと思い博物館や広報に問い合わせましたが、警視庁広報からとても丁寧に対応いただきましたが、私のことをマスコミと勘違いしていて、途中で民間人だとわかると突然、「そんなもの勝手に調べろ」と電話を切られました。最初は驚いてショックを受けましたが、ある意味ラーメンのように美味しい言葉だと思いました。そんなこんなで博物館によく行ったのですが、私がいたのは紛れもなく昭和30年のある1日でした。そして恐ろしいことに気づくとお店をはしごしているのです。
ラーメンの職人さんたちにゴールはない。私が食べて完璧だって思っても、「まだまだ」と常にみんなさらに上を目指しています。特に人気店の努力はすごい。この探究心は本当に学ぶものがあります。とても勉強になります。この真摯な姿勢を学びに行って、仮に副産物としてラーメンを食べて、締め切りが遅れたとしても許して欲しいです。何しろラーメンを食べてからの勉強は効果的麺なのです。
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