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【絵本日記】ピヨちゃんと水の中のまねっこ

「たいへん!たいへん!たいへーん!」

ある日、ひよこのピヨちゃんがさけびながら、
お母さんのもとにとびこんだ。

「いったい、どうしたの?」
お母さんは目をまんまるにして、きいた。

「あのね、あのね。へんないきものがいるの。
見たことがなくてね。とにかくへんなの!!
来て!」

ピヨちゃんは、お母さんの手をひっぱりながら
川の水をのぞきこんだ。

「ほらぁ!」

お母さんも、ピヨちゃんの指差したほうを
のぞきこむ。

するとそこには……ピヨちゃんがいた。

「どこにいるの?」
「ここだよ、ここ!お母さんのとなり!」

お母さんは、もう一度のぞきこむ。

「ピヨちゃんがいるよ?」
「そんなわけないよ!
 だってボクはお母さんにそっくりなんだから!
 もっと、ちゃんと見てよ!」

もう一度、のぞきこむ。
やっぱり、ピヨちゃんがいる。

「ピヨちゃんがいるね」
「ちがうってばぁ!」
「そうかい?じゃぁ、ピヨちゃんには、
 どんな、いきものが見えているの?」

ピヨちゃんは、お母さんの耳元で、
こそこそと話しはじめた。

「こっそりおしえるね。
 お母さんと違っててね、
 なんだかお月さまみたいな色をしていて、
 くちばしなんてちっちゃくて、体はまんまる!
 えいえい!」

ピヨちゃんは、小さな羽で水のうえを
パシャパシャとたたいた。
でも、水面がゆらゆらとゆれるだけ。
元にもどると、
やっぱりピヨちゃんがうつっている。

「お母さん、この子どこにもいかないよ!
 しかもさっきから、ボクのまねっこばかり!」

ピヨちゃんは、ピヨピヨと地団駄をふんだ。
お母さんはピヨちゃんをだきしめながらいった。

「これはね、ピヨちゃんだよ」
「そんなはずないやい!
 だって、お母さんとぜんぜんちがうよ!」

ピヨちゃんは、小さなくちばしをパクパクと
うごかした。

お母さんは、水の中のピヨちゃんをゆびさした。

「ほら。見て。こんなにかわいい、
 お月さまみたいな色に、
フワフワでまんまるなお顔。
これがピヨちゃん。
お母さんは、このピヨちゃんがだいすきだよ」

お母さんは、ピヨちゃんをもっともっと、
だきしめた。

「でもいつかピヨちゃんも、お母さんみたいに、
大きくて白い体になって赤い角だってはえるの」

お母さんは、そう言いながら、ピヨちゃんの
頭をこちょこちょとした。
ピヨちゃんは、ケラケラと笑った。

「こちょばいよ、お母さん!」
「でもね、ピヨちゃんが思ってるよりも、
 この姿のピヨちゃんは、ほんの一瞬。
 あっという間に大人になっちゃう。
 だけどね、忘れないで。
 お母さんは、どんなピヨちゃんだって、
だいすきなのよ」

お母さんは、水の中のピヨちゃんのすがたを
少し目をうるませながら見つめていた。


半年後……。
ピヨちゃんはまた水の中をのぞきこんだ。

そこには、すっかり大きくて白い、
お母さんにそっくりなピヨちゃんがいた。


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