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【絵本日記】ひみつの喫茶店へようこそ

とある森に、ちいさな喫茶店があった。
そこでは、ふしぎなまほうがつかえ、
どんな悩みごとも、モヤモヤも、
フワッとあわのように消してしまうという。

ある日、りすが、喫茶店をおとずれた。
チクタクと時計の大きな音。
コーヒーの香り。
うさぎに、さるに、くまにと、
中にはたくさんのどうぶつたちが座っていた。

「いらっしゃい。おはいり」


ふくろうが、カウンターから顔をのぞかせた。

「メニューはないの?」
りすは、ふくろうにたずねた。
「ないですよ。
  そのかわりに、あなたが悩みごとを言えば
 ぴったりのコーヒーをだします」

りすは、言った。

「さいきん、あんまりいい木の実がなくて。
  おいしい木の実が、たべたいな」

「わかりました。おまちを」

ふくろうは、カウンターのおくにきえた。
りすは、きもちのいいコーヒーの香りと、
時計の音に、だんだんねむたくなっていく。

「おまたせしました」

目をあけると、ホクホクと湯気たつコーヒーと
おおきな木の実のケーキがおかれていた。

「わぁー!おいしそう」

りすは、目をキラキラとさせながら、
コーヒーをひと口のんだ。
するとモヤモヤしていた気持ちが、フワッと
消えてしまった。

「なんて、おいしいんだろう!!」

つぎに、木の実のケーキをパクリとたべた。
すると、口の中いっぱいに、
あまいケーキの味がひろがり、
ほっぺが、ふくれあがっていく。

「こんなにあまい木の実をたべたのはじめて!」

ふくろうは目をほそめ、言った。

「よろこんでもらえて、よかった。よかった」

りすは、パクパクと木の実のケーキを
口いっぱいにつめこんだ。

「しあわせいっぱい。うれしいなぁ」

ほっぺたがトロンと、とけていく。
りすは、ポカポカする心とふんわりひろがった
しっぽをギュッとだきしめ、店をあとにした。





しばらくして、りすは、またあのケーキを
食べたくて、喫茶店の前を通ってみた。
でも、どんなにきた道を通っても、
店は見つからなかった。


ふしぎな魔法がつかえる喫茶店。
それは悩みの前にだけあらわれる。


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