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【絵本日記】だいじょぶだよ。はりねずみ君

はりねずみ君は心がヒュッとこわくなると、
ハリをピンとするどく立ててしまう。

「この木にのぼって、ご飯とってきてよ」

ピン!

「穴の中とくいでしょ。探しものしてきてよ」

ピン!
ピン!

「そんなにハリ立てちゃって。やな感じ」

ピン!ピン!ピン!ピン!ピン!

ハリが、どんどんするどくなっていく。
ある日、はりねずみ君は、自分のハリのあまりの
するどさに、からだ中がチクチクといたくなり、
動けなくなってしまった。

「もう……。ハリのしまい方がわからないよ」

トントントン。

心配をしたくまさんが、
はりねずみ君のお家をたずねにきた。

「はりねずみ君。お家にいる?」
「ほっといて!!みんな、みんなだいきらい」
「なにがあったの?」
「ボクだってハリをたてたくないのに……。
  からだがいたいよ」

くまさんは、お部屋にそっと入り、
はりねずみ君の背中をそっとなでた。

「くまさん、いたいでしょ?」
「いたくないよ」
「くまさん、ごめんね。
 ボクなんて、いいところ一個もないの」

はりねずみ君の目には、たくさんのなみだが
今にもこぼれそうに、たまっている。


「ううん。はりねずみ君は、ステキだよ」
「そんなことないよ」
「だって、はりねずみ君は、耳がとっても
 いいでしょ?
 どんな遠くにいても、声を聞き分けられる。
 この前だって、おぼれかけちゃった時に
  かけつけてくれたじゃない」
「だって、ともだちがこまっていたから」

「それに、はりねずみ君は、
 どこまでも走りつづけることもできるよ。
 みんながめげちゃう距離でも、はりねずみ君は
 絶対あきらめない。はりねずみ君が、
 ちこくしちゃうところなんか、いっかいも
 見たことがないよ」
「だって、ともだちとのたいせつな約束だから」

くまさんは、はりねずみ君の顔をのぞきこみ
言った。

「あとね、あとね。
  だれよりも、こわがりさんだけど、
  だれよりも、やさしいのも知ってるよ。
  もっと、もっとステキなところ言えるよ!」
「うん」
「はりねずみ君、だいじょうぶだよ。
  だいじょうぶ。だいじょうぶ」

ハリが、少しずつやわらかくなっていく。
はりねずみ君は、声をあげてなみだをながした。

「泣いていいんだよ。
 いたいってさけんでいいんだよ。
 だいじょぶだよ」

くまさんは、なんどもなんども「だいじょうぶだよ」と言いながら、はりねずみ君の背中を
さすりつづけた。

ふと、はりねずみ君はくまさんのお顔を見た。
くまさんのお顔には、たっぷりのハチミツ
ついている。

「くまさん、さっきハチミツ食べたの?」
「なんで、わかるの!?すごいね!」
「だって、お顔がハチミツだらけだよ」
「わっ!ほんとだ!たいへん!!」

はりねずみ君とくまさんは、
顔をみあわせ、思いっきりわらった。
はりねずみ君のハリは、
まるくやさしくなっていた。


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