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【#88】三角みづ紀「とりとめなく庭が」

あまり読まないジャンル、詩人のエッセイ。年末に読み始めて一気に読了。

12月が誕生日の友だちのプレゼント用に購入した本。なんとなく冬っぽいので、この季節に読むのにぴったりだった。寒さに憧れて北海道に移り住む筆者は、繊細で一つ一つの言葉を丁寧に繋いでいく。あまり耳馴染みのない言葉でも、なんとなく共感できる部分もあったりして、心にスッと入ってくる。

散歩の途中で撮った写真をあとから見たら、気分の良いときには空や屋根、電柱の先、高い木々の花。気分のすぐれないときには道端にひっそりと咲く花や豪快に捨てられた雨ざらしのソファ、誰も座っていないベンチが写っている。

からだとこころはいかに直結しているかに気付かされてはっとする。上を向いて歩いているとき、うつむいて歩いているとき。どちらが良いかなんて決めることはせず、どちらにしても発見にあふれていて、こぼれおちたものを、日々、拾いあつめて詩や写真に変化させていく。瞬間を写真におさめるという行為は、風景でも記録でとなく、みずからの感情だ。あざやかな花を、空の深い青さを、飲み干したコーヒーカップを、原形をなくした空き缶を。それらの写真は寡黙であっても日々、自分の感情の変化を教えてくれる。

三角みづ紀「散歩にでかける」

この一節を読んで、もっとカメラを使おうと思った。

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