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将棋教室から人がやめるお話

別にアイドルも競馬もやめる訳ではない。
(そもそもやってない)

何にしても、何かを始めるという事は当然終わりが来るもので、
私がやっている教室だって終わる日が来ることはあるのでしょう。
一応まだ続いてるけれど、基本的にワンオペなので私が倒れたり夜逃げしたり宇宙人にさらわれたりしたら教室も閉じる事になりかねないわけで。

ってご存じの無い方用に、自己紹介をしておく。ポールと申します。
カルチャースクールで極小弱小零細将棋教室を細々ともう3年も続けさせて頂いております。
なんでやってるかは過去の私のnoteでご確認下さいませ。

なんでこんなこんな小さな所に人が集まるのだろうか・・・特段宣伝はしてはいないし、強い子を輩出している訳ではあるまいし、「神奈川県のおススメ将棋教室!」みたいな特集にも端にも棒にもかからないし。(なお町田)

ウチの教室の強いところとすると、年齢制限が無い所ですかね。周りの教室だと小学生限定だったり、初段になったら卒業だったり。基本的にやりたければ好きなだけ精神なので誰でもウエルカム。実際下は小学1年生、上は還暦オーバー、私と同じ年齢層の方もいて、自分でいうのもあれですがまぁすごいバランスとれた形で現在はいます。

しかし現在の状態になる少し前、ぱたぱたと人が辞めていく時期があった。
一人やめ、翌週にはまた一人。あれあれこのままの勢いだと、この場所消えて無くなる?って感じで人がいなくなっていく。

というのも色々兆候はあったりするのだけれど。極端に考える事をやめてしまいヒントだよりになってしまったり。全然落ち着きが無くなってしまったり。人によって様々って感じだけれど。

私もはるか昔小さかった頃、習い事はいくつかやっていたが、どれもつまらなくなってやめてしまった。そろばんもサッカーもテニスも。

様々なパターンがあるけど、今の所で経験したやめていく理由について考えていこうと思う。対策・・・って言うほどじゃないし、人間やめる時にはやめちゃうけれど、こうしたら少しは長く続けられたのではという事も感じるところはあるので、ぽろぽろと書いていく。
ぶっちゃけ愚痴っぽくなる部分もあるから、いやな気分にさせたらその時は申し訳ない。

将棋教室をやめる理由

①甘えすぎる生徒

まずは子供さんの場合。
あくまで将棋教室なので将棋を教えるわけで、当然なんだけど。考えて考えさせて上達してもらうっていうのが主眼なわけです。別に資格を持った教員でもなければなんでもない将棋講師ですよ。

子供でも大人でも、わからない箇所があるならやり方を変えたり角度を変えたり、あるいは品を変えてみたりハードル自体を下げてみたりして、どうやれば理解が進むかを可能な限り試す、というのは当然にやるのだけれど、
流石に考える事を最初からやめてしまっている相手に対してはどうにもならない。

試行錯誤はしたが、反応が無い、ゼロである。
試しに「これやってみようかー」と1手詰の問題を出しても、次に出る言葉が、
「先生ヒントー」
ヒントを出しても進まない、一局が終わらない。
こうなってはちょっと私ではお手上げ。
打って少しでも響いてくれれば手の施しようはあるけど、壁打ちはきつい。

程なくして彼は退会した。
聞いたところによると、家庭環境の影響もあった模様。
お兄ちゃんとして家で頑張ってたらしい。その折に教室で甘える格好になってしまっていた・・・と浅はかな推察はしてみるが本当のところはわからない。

頑張っていた時もあったけれど、私との相性もあるだろう。
良い経験になったのは確かである。

②負けず嫌い過ぎる子

将棋も結局勝ち負けを決するものなので、「負けず嫌い」である事は必ずしもデメリットという訳では無くて、むしろ上達するためにはメリットの要素の方が大きいように見える。負けたくないから努力して力を付けていく。

が、負けた時の切り替えが出来ない子というのがいる。
当然負けるのは悔しいんだけれど、1局終えて泣いてしまって感想戦もままならない。そのまま泣き続けてお迎えが来て終わる。

将棋なので当然勝ち負けがあるもの。負けましたを言えない子には、「対局をしてくれて感謝の意味を込めて」「次の対局に向かう為のおまじないとして」きちんと発声するように指導している。自分の納得いかない負け方もあるだろうが、これだけは守ってもらうようにしている。
しかしこれは言い訳かもしれないが取りつく島が無かった。。ちょっとお手上げ状態でした。
こうなる理由としては、自分の納得いっていない所が解消されていなかったり、自分の負けた結果や内容を自分の中で消化しきれなかった、・・・みたいなのが考えられる所。全部が全部目が届くほど私も優秀じゃないですが、こうなる原因の部分を気付いて解消してあげれなかったのかなぁと。自分の心残りではあります。


③野球に進む子

上二つがネガティブな内容でしたが、この子はポジティブな理由。やめるのにポジティブってなんじゃいと思うのですが、今回はそのケース。

2019年の教室がスタートした当時から参加していた子。当時は小1か。その頃から約3年でこの度退会になった。

始めた頃から私の言う事は聞かないんだけど、将棋はガンガンやる子。教室以外では一才勉強をしないらしく(親御さん談)、教室来て将棋するのが楽しいっていう感じ。基本的に言うことを聞かないので、序盤の決まった形はやらないし、〇〇スペシャルと言ってぶつけてくる。
玉飛接近はいかんぞ〜といっても、めっちゃ近づく。時々角まで近い、玉飛角接近。
「角交換は5筋を突くな」やで。気をつけてもう一局いくぞー。
⇨初手バシーン(5六歩)。貴様自由か、自由だったわごめん。

この子上達するんかなと当時は相当頭を悩ませていた。
ひとまず出来るところからやろうと。

毎週詰将棋は繰り返し解いてもらう。解けたら褒める、マジ天才。
解けなくても私や周りの皆で協力しながら解いていく。
次の一手も出した。どうしてそうなったっていう手を出してくる。誰もが通る道、いいぞいいぞ
生徒同士の実践もやる。銀が上がって角がボロッと取られてる。「角の利きは3万回確認」やで。
駒落ちもやった。級位者証を作り目標が出来たことでどんどん挑んでくるようになった。定跡?そんなもんはいいから自由にやってこいで。(当然こういうのあるのよって提示はしてる)

習い事で忙しいなかで休まず来た。毎回楽しそうにやってやってきてゴキゲンで帰っていく。参加の時はいつも賑やか、うるさいとかでは無く賑やか。
彼も私から出したものをどんどんこなしてくれた。わからない物はわからんで良い。ひとつでも多く解き切るのが大事。

良かったことは、ずっと楽しそうにやっていた事。解けようが解けなかろうが、対局で勝とうが負けようが楽しそうに続行してくる。私との対局で自玉が詰まされた際に時を止めて玉が生還している場合もあるけどそれもご愛敬。時を止めても私は詰ましに行きます。


全肯定しながら教えていると、ある時から変化が訪れた。
駒を成るのを忘れなくなった。
簡単な詰将棋を生徒らで一番に解くときが出てきた。
次の一手で急に切れ味のいい手が飛び出るようになった。
終盤勝負で競り勝つようになった。
自分から積極的に角交換しようとするようになった。
なぜかノーマル三間飛車の形を覚えた。(私の棋譜を見せすぎた。。)
いつの間にか6枚落ちはもう敵わなくなった。4枚も危うい。

ある時、その子の親御さんから「JT杯の大会に応募したら通っちゃいました」と。マジでかと。ノリで申し込むとか勢い良すぎだなと。

教室や学校の子たちとは対局したことがあっても、JT杯というそれなりの大きな規模の大会に出るのは初めて。場所は幕張メッセ。席上対局は藤井豊島戦。決勝戦。めちゃくちゃいい舞台でやってるな君って思った。
親御さんから代わりに行ってくれませんかと頼まれたが、流石にそこは見守ってあげて下さいと断った。

教室でチェスクロの練習もしていざ本番当日。
朝に気楽に楽しんでやっておいでとメールを送ったが、内心は全敗して落ち込みやしないかと割と気が気ではなかった。

当日は遠出をしており逐一はチェックは出来なかったですが、
夜までずっと気にしていると、親御さんからメールが。

「2勝1敗でした!!」

なんと勝利を納めている。目を疑った。それも2勝。
3回勝てば決勝トーナメントで、最後は強めの子に当たってしまったそうだが、正直ちゃんとやってる子と当たったら敵わんと思っていただけに、2勝もしてきた。

しっかりと結果を残して本人も楽しかったと言っていて、私としてもこんなに嬉しいモノかと思ったのもあるんですが、疑問がひとつ。

「どうやって勝ったの?????」
失礼な話である。

後日確認してみた。
中飛車からのカニカニ銀+端角のゴリゴリに攻めつぶして勝ったという。確かに教えた中のひとつだが、実際に採用している所は初めて見た。彼なりに大会で勝とうとして用意してきたカードだったのだろう。
「角ボロッととれたよ」角の利きも3万回確認出来ている。

いつも側から見たらいつも無茶苦茶な形をやっているのだが、続けて見てると彼なりの理屈の中で構想を立てて、その上で勝ちに行ったわけだ。すげーな君。
真剣な実践は大きな成長に繋がるのですね。。本当に成長している所をみせてくれました。


そんな彼にも教室をやめる時が来た。
なんでも野球をやる為だそうだ。確かに小4くらいになると始めるよね。私も少年野球始めたの同じくらいのころだわ。
やめるに当たって親御さんからも連絡があって、「将棋続けたい!」と言っていたそう。有り難い話ですよ。その上での選択として野球を選んだという事ですね。

前述のnoteでも書いておりますが、そもそも私は野球あがりの人間です。
それなりの長い期間やってきております。やっと将棋が歴としては追いついて来たのかな。

まぁなので野球の面白さも分かっているので、私としては賑やかなのがいなくなるので寂しいですが「おうやってこいw」という感じ。
野球って割と大人になってやるって大変で、経験するなら子供のころやった方がいいとは思うし、将棋教室終わった後に私と鬼ごっこを争うくらいの元気いっぱいっぷりだったので運動やるのも納得なんですよね。
将棋はぶっちゃけいつでも出来ます。オンラインならばいつでも。
盤駒でってなると相手と場所を選ぶので、また指したくなったらいつでもおいでと言っておきました。

仮に彼がこのまま野球をやり続けて将棋をやらなかったとしても、何かのきっかけでまた始めるかもしれないですし、
康光会長が提唱してたキャッチコピー「盤上に感謝と最高のコミュニケーションを」の彼の先々のコミュニケーションの手段として将棋を教えられたのではないかなと思ったりしています。使わずとも何かしらの役に立てばめっけもんである。

んで彼の教室最終日。
毎年末に棋譜を取って棋譜用紙に起こして棋譜添削でコメントを付けて返すってことをしてましたが、今回は特別に卒業テストという事で私と平手で対局した棋譜を取り、平時の小忙しい中で頑張って気合を入れてコメント返しを作った(しっかり彼に勝ってもらいました)。教室初期からいた子で、私も沢山勉強させられたので感謝を込めまして。

教室が終わって親御さんとの挨拶も終わり、
さて帰るかと思ったら彼はグローブを持って来ていた。

「しょうがねーな、よしキャッチボールやるぞ!」
完全に時間外労働である。ついでに私はグローブなしの素手。

思いっきり明後日の方向に投げられるのがほとんどだったが、自分の身体は思ったよりも動いてくれた。そう簡単に見についた動きは忘れないということだろう。何年ぶりかのキャッチボール、素手で多少痛いが私も楽しい。
キャッチボールも取り方とかも教え、軽く動いて無事にケガ無く終えた。
将棋教室やってケガってなんじゃいと。

こんな感じで彼は卒業していった。
本当に大変でしたが、こちらも楽しく学ばせてもらいました。
ありがとうございました。また会いましょう。


ベストと思うやめ方

ここまで読んでくださった方ならわかると思うけど、要は③が書きたかったってことですわw

いろんな事情でやめて行く方もいますが、
私の一番ベストだと思うやめ方は、「将棋が好きなまま卒業する」という事ですかね。嫌いになってやめるよりは全然良い。またやってみるかーってなる可能性を秘めた方が増えたと思うと私としては万々歳というか。
理想はこういう人が増えればいいなと思ってます。何事もずっと続けるって大変ですし、人間いろんな事に興味を持つのも当然で、そればっかりやっていられなくなる時も訪れるわけで。将棋をやめていて、何かしらのきっかけで「なんか昔教わったなー」くらいでまた興味を持ち始める。そこで指す指さない関係なしに。そういう感じでいいと思ったり。

当然続けて行って強くなるのもよし。有段者になってどんどん強くなる道を進むもよし。研修会とか奨励会とか行きたい子たちは他の先生にお任せして。
将棋を趣味や遊びとして楽しく続けたいという要望だったら、私でも多少は助力できるのかなぁと思わせてくれた良い経験を得たというお話でした。



彼がやめた後、子供達がドカッと増えた。数にして1.5倍。
6月は毎週体験体験体験と立て続けに入り、すべて入会という。。
私のキャパは持つのかどうかより、教室の広さの方が限界を先に迎えたというね。。。

さて、私はこの子らと楽しく将棋がやれるんだろうかw
人数増えたし頭をひねる事も多いですが何とか可能な限りで頑張ります。

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