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これからのデザイン

これからの時代、僕ら作り手はどうサービスや製品をデザインしていくべきだろうか?

この先、環境へのインパクトという観点からも、企業として事業を持続させていくという意味でも、「必要とされないものをつくらない」ということが、極めて重要になってくるように思う。

僕らの身の回りには、もしかしたら「本当はそこまで必要でないサービス」や「それほどなくても困らなかった製品」はそれなりの数があるかもしれない。もちろん企業にとって、本当に必要とされる・求められるものを提供するということは、利益につながる活動だ。しかし、本質的にこの問題はそこだけが重要なのだろうか?

僕らが何かを作り手から受け取るとき、その製品やサービスを通じて「コミュニケーション」しているような感覚になる時がある。そういった製品やサービスを通じた対話のようなものの中で、僕らは腹を立てたり、喜んだり、感激したりもする。この対話を通じて多くが伝わってくる。

結果として「あなたは友人や家族に、この製品(サービス)をどれくらいの度合いで薦めますか?」というよくある質問に対しては、「これは友人にはとても薦められない」とか、「ぜひ母親にも使ってほしい」という、比較的はっきりとした結論が出ることになる。

この質問に対応した11段階のスコアから、全ての受け取り手の中にどれくらいの割合で製品やサービスの「ファン」がいるか?を算出したスコアをNPSという。NPSはAppleをはじめアメリカの多くの企業で指標として使われており、サービスや製品の長期的な収益性と大きな相関があることがわかっているらしい。

また、僕のスタートアップでは「デザイン思考」や「HCD(人間中心設計)」といった手法で、サービスや製品のデザインを行おうとしているが、これらのやり方の根底にある思想は「観察と共感、対話を通じて、受け取り手の生活や考え方を徹底的に理解する」ことだと思う。

的確に問題を解決してくれる製品やサービスに触れたとき、僕らはしばしば「本当に助かった!」と思う。正しく設定された課題(issue)を、正しく解決すべくデザインされた解決策(solution)に出会う、というのは恐らくそういうことだろう。

自分自身が作り手に理解されている、とさえ感じるものだ。

製品・サービスを通じた、この受け取り手と作り手のコミュニケーションは事業の収益性だけにとどまる問題ではない。作り手は鼓舞され、受け取り手の生活や仕事の質は改善する。

そして、このコミュニケーションが最終的に目指すべきは、製品やサービスを作り、受け取り続けるために「地球や自然の環境にダメージを与えない」ということだと思う。荒廃しきった地球ではそもそも人間はこういった経済活動なんてまともにできっこないのだ。

製品やサービスが正しく実装され、多くの人に愛され、育てられていくこと自体に大きな力がある。そして大きな力には大きな責任が伴う ("With great power comes great responsibility")。

単に環境のためにみんなで資源の無駄を減らしましょうとか、売上と利益のためにまずスコアを増やしましょう、とかいう理由で「必要とされないものをつくらない」というアイディアを考えているわけじゃない。

僕らが製品やサービス、事業のデザイナーとして「これを作ることには、いったいどんな意味があるのだろうか?」という問いへの答えを探し続ける中でこの命題に出会うのだと思う。

自分たちが作るものと世界との関係を問い続けること。この哲学的なプロセスこそがデザインの本質であるし、これからの時代においても変わらず価値を持ち続けるのではないかと感じる。