そして俺は、騙されたままの人生を生きていくことにした
先日、帰省した時に、地元の連れが車で迎えにきてくれた。
そいつは意味ありげな笑みを浮かべていた。
「えっ、なんでお前なんだよ」
そいつは何も答えなかった。
車に乗って、定食屋にいる他の連れ二人と合流した。
俺は混乱していた。
「びっくりしたやろ」
「実はドッキリやった」
ドッキリ?
3人の顔を見渡すと、薄ら笑っている3人のおっさん。
次第に怒りが込み上げてきた。
俺がずっと、どんな気持ちで過ごしてきたか。
そんな俺の心の動きに気づいたか、
「いや、だから、俺はやりたくなかったんだよ」
「細かいところまで仕込んだからな。リアルやったやろ」
そりゃそうだ。
棺の中の写真を見せられ、一切音沙汰なし。
全てのSNSからも退出。
これだけのことされれば、そりゃ信じるはな。
ただ、込み上げてくる怒りは安堵と混ざり合い、動悸は激しさに向かっているのか、落ち着きに向かっているのか、自分でも推し量れない。
手の込んだドッキリか。
そうだよな、ドッキリだったんだよな。
ニヤニヤしているお前は、生きているんだよな。
騙されようが、笑われようが、そんなことはどうでもいい。
会えればそれでいい。
今までの怒りが安堵に包み込まれ、言葉を飲み込みながら自分に言い聞かせたが、自分を包み込んでいたのは一枚の毛布だった。
どういうことだよ、あいつは生きていたぞ。
全てが混乱した思考の中で、二度と見ることのないと思っていたあいつの笑顔だけが、生々しく脳裏にこびりついている。
ドッキリだよな。
確かにドッキリって言ったよな。
あれから2年3ヶ月経つけど、まだドッキリが続いているんだよな。
俺は騙されないぞ。
いや、騙され続けてやる。
タネ明かしがされるその日まで、俺はドッキリの世界を生き続ける。
地元の連れにこの話をしなきゃ、タネ明かしされることもないしな。
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