見出し画像

スコセッシが絶賛!は誇張? 韓国映画【悪の偶像】

この映画はかなり好き嫌いが分かれるというか、もしかしたら否定的な人の方が多いかもしれない・・・。だってめちゃくちゃ変な映画だから。

2019年公開作品(日本は2020年公開)。冒頭は分かりやすいんです。市議会議員のハンソッキュは、息子が飲酒運転で交通事故を起こしてしまう加害者側で、ソルギョングが知的障害を持つ息子がひき逃げされてしまうという被害者側。
韓国を代表する二人の名優が、重厚な演技で社会の欺瞞や矛盾をあぶりだしていく映画なのかと思いきや、完全に明後日の方向に物語が展開していきます。

序盤のメインテーマがいつのまにかないがしろされて、別のことがメインに居座ってしまう…。監督はこれを意図的にやっているとは思うんです。でも決して成功していない(笑)。

【ここからネタバレ】
物語の軸である交通事故は中盤で終わったことになってるし、双方の息子への思いは結局うやむやだし、それなりに人格者だったハンソッキュは気づいたら悪代官みたいになってるし、ソルギョングは息子の嫁への執着が異常の上、いつの間にか自分の奥さんはいなくなってるし・・・。
【ネタバレ終わり】

名優二人に、ソルギョングの息子の嫁としてチョンウヒが怪演で食らいついているのはとても良かったけれど、出てくる人全員、思考回路が普通じゃなくて、「なんじゃこれ?」っていう感想が何十回と出てきました。

監督のインタビューを読むと、とても重厚なテーマを表現したかったってことがわかるんだけど、私には一つも伝わってこなかった(笑)。そしてこの映画の宣伝文句として、マーティンスコセッシ絶賛!と銘打たれているんだけれど、それは歪曲じゃないかと(汗)。だって、予告編で流れる本当のスコセッシのコメントは、「イ・スジン監督の新作が待ちきれない」だから。これって、「今回は残念だったけど、次回がんばってね!」っていうニュアンスなのでは…。

と、批判的なことばかり書いてますが、それでも私がこの作品を結構好きなのは、名優二人を使ってめちゃくちゃ真剣に映画を作ったのに近年稀にみるヘンテコ映画ができてしまった・・・という経緯がなんだか愛おしいというか。それに決してつまらなくないのです。共感は全くできないけど、こっちの思考が停止するくらい唖然としてしまう瞬間が何度もあったりするのです。予測不能なところに面白さを感じているのかもしれません。

この映画のヘンテコっぷりは、最初にソルギョングが息子について語るドン引きセリフに集約されていると思います(笑)。

極私的スキ度 ★★★★★★★(7)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?