もうたぶん振り返らない
ティーンエイジ・ファンクラブ(以下、TFC)5年ぶりの来日公演を、梅田クラブクアトロに観に行ってきた。
もう1カ月以上経った上に未だにまとまっていないけど、もう彼らが来てくれたからには書かないとだめでしょう、と思って徒然に書いていきます(タイトルも適当です)。
それほど僕にとってTFCは結構特別なバンドで、なんせ初めて自分の意志でチケットを取って観に行ったバンドであり外タレ(死語?外国人ミュージシャンのことです)である。
過去に2回もnoteで記事を書いている。5年前の来日公演を観に行った時に感じたことなどを、5年前とそして4年前に。
今回の来日は新作アルバム『Nothing Lasts Forever』のリリースツアーである。
と言いつつも、実はその前にもう一枚『Endless Arcade』というアルバムが出ている。このアルバムが出る前に長年ベーシスト兼ソングライターで自作曲のボーカルも担当していたジェラルド・ラヴ(以下ジェリー)が脱退し、ノーマンとレイモンド(共にギター・ボーカル)のソングライター2人体制での初めてのアルバムになった。
折しもコロナ禍2年目の2021年。来日も叶わずで、少し気持ちが離れそうなところ(ジェリーの脱退がショックだったのも大きい)に、そうはさせないとばかりに去年新作が出るというニュースが!
それ以前の彼らといえば、1990年代は2年に1枚のペースでアルバムが出ていたものの、2000年以降は3年~5年と間隔が空き始めていた。それが今回は2年振り。おー、やる気出した?というか、コロナ禍もあり思うようにツアーができなかった時期もあり、考えることや創作に費やす時間も増えたのだろうなと思う。
今回ライブを観て感じたのは、ノーマンやっぱり良い声してるなーと。見た目やキャラはどちらかと言うと三枚目で剽軽な人なんだけど、歌うと男前なんですよ。温かさと爽やかさと哀愁を併せ持ってる。
基本は自作曲は自分で歌うスタイルだけど、レイモンドはほとんどコーラスはやらない。かたやノーマンは歌いっぱなし(笑)
ジェリーのパートのコーラスはキーボードのエイロスが一任している。
エイロス(またはユーロス)はかつてゴーキーズ・ザイゴティック・マンキという少々風変わりなバンドをやっていて現在はソロでも活動している。
出身はウエールズ。イングランドともスコットランドとも違う歴史や文化があるようだ。スーパー・ファーリー・アニマルズやダフィーなんかもここの出身(調べたらトム・ジョーンズとかもっと有名な人いた)。
ドラムのフランシスはノーマンとの共作である「プラネッツ」ではずっとハモっていて、他の曲もちょこちょこコーラスしてた。彼は結成時のオリジナルメンバーだったがすぐに脱退(当時19歳とかだからまあ色々あったんでしょう)、10数年経って復帰している。
そして、前回はジェリー脱退のショックでいささか失礼なことを書いてしまったデイブ・マクゴワン。彼は恐らく5人の中で最年少で、グラスゴーの便利屋セッションマンとしてベル&セバスチャンを始めとした様々なバンドに参加している(まあグラスゴーはこういう人多いけど)。
彼は元々キーボード&ギターでTFCのサポートに入ったけど、ベース&ボーカルのジェリー脱退後はTFCのボトムをしっかり支えてコーラスもやらず決して出過ぎない。以前はスキンヘッドでいかついイメージだったが、今回は幾分か柔らかい感じがした。よく見るとつぶらな瞳にヒゲで熊さんぽい。
ある曲の前でデイブが水を飲んでるなーと思ったら、次の曲でコーラスをしていた。「次の曲、コーラスだ…」って緊張して喉を潤したのかな?かわいいやつめ(印象変わり過ぎやん)。
Nothing Lasts Foreverー「永遠に残るものなんて何もない」というのは意味深なタイトルだ。コロナ禍を経て感じたことを一言で表すとなると、こうなるのかもしれない。
当たり前にあると思っていた事、当たり前にいると思っていた人。
実際コロナで亡くなったミュージシャンもいるし、パンデミックが起きてロックダウンされた街もある。ツアーもできなくなったりして、彼らなりに考え込むこともあったかもしれない。
我々日本のファンも、新譜を出したら必ず来日してライブを少なくとも東名阪でやってくれるので楽しみにしていた。だがそれが前作の時は見送られた為、お互いに「久しぶり!」という感じがあった。
曲の最中も曲間でもメンバー(特にノーマン)は笑顔で再会を喜んでくれていた。我々ファンもそうだ。また来てくれてありがとう!
煎じつめて言えばそれだけ、なんだけどもう少し書こう。
音楽シーンにおいても彼らは確実にキーになる人達である。80年代末にグラスゴーから出てきて、91年のセカンドアルバム『バンドワゴネスク』で素朴でメロディアスな楽曲にニルヴァーナで火が付いたグランジサウンドを合わせて、世界的な評価を得た。
(その一曲目「ザ・コンセプト」はアンセムになっている。このライブでも本編最後に演奏されて観客席で大合唱になっていた。僕もマスクの下で歌った。みんな多幸感に包まれていた)
その他にも名曲目白押しで、91年以降更に人気が出てもおかしくなかったけれど、ドーンといかずにジワジワと売れているという感じであった。
それは彼らの少しシャイな部分もあるのだろうけど、自分たちのペースを崩したくないという考えがあったと思う。
いわゆるロックでブレイクするアーティストにはバックグラウンドに色んな物語(例えば過酷な生い立ちであったりとか)があったり、時にそれを求められたりする。彼らのほのぼのとした佇まいはそういうものとは無縁に見えたし、僕は逆に親しみをおぼえた。
最新作に収められている「Back To The Light」 のMVはなんか不思議だ。
深夜にやっている外国の風景に音楽をのせた映像みたいになっている。多分彼らのホームグラウンドであるグラスゴー、またはスコットランドまたはウエールズのどこかの風景だと思うんだけど、メンバーが出てこないどころか、最初のワンコーラスは角度すら変わらない。ちょっと戸惑った(笑)
その後も風景は変わるけれどメンバーは出てこず動物も出てこず、最後にニューアルバムの宣伝画像が出てきて終わってしまう。
けど、これはこれで美しい風景といい音楽が純粋に楽しめる、とてもいいMVだなと思った。そして彼らなりの、バンドメンバーが出てくるありきたりなMVへのアンチテーゼな気もする。
Teenage Fanclub - Back To The Light (youtube.com)
とか書いたけど、別の曲のMVを観たらちゃんとメンバー出てましたw
この曲はアルバムのリード曲で彼らにしてはアップテンポで、派手に歪んだサウンドではないけれど、レイモンドのギターとエイロスのキーボードがちょっとインドっぽいスパイス?を加えている。
Teenage Fanclub - Foreign Land (youtube.com)
彼らの過去のインタビューで「僕らは音楽産業に対するHealthy Disrespect がある」といった発言があったのを覚えている。
「Commercial Alternative」なんていう人を食ったようなタイトルの曲も書いている。
彼らがずっと地元グラスゴーに住んでいるのは、マイペースに音楽を作り続けるという大切なことを守るためなんだろうなと思う。
これからもずっと活動を続けてほしいし、次のアルバム・次の来日を楽しみにして自分もまた明日からがんばっていこう。
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