特許法第17条の2第1項

●条文:
 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。
(以下略)

●法律としての概要:
この条は、特許出願(特許庁への申請)の際に提出する書類のうち「発明」が記載された明細書(発明の説明をする書面)などについて、補正という手続きで修正することができることが規定されています。
別の条文で詳細の説明はしますが、日本の特許法では「先願主義」という制度を採用しています。これは、早く特許庁に出願した出願人の出願に特許を認めることルールで早く出願するのが好ましいため、出願人として発明の内容について吟味する時間があまり時間ない場合が多く、誤った記載をそのままで出願されてしまうことがあるのです。
このような場合に、発明の内容を同じ分野の技術者が見て実施できるのに、その点が誤っているだけで権利が無効になってしまうようなことになれば、出願人にとって酷になってしまうため、ざっくり言えば元の出願の内容からわかる範囲であれば記載を修正しても良いというルールになっています。
また、特許を求めるすべての出願について特許としての基準を満たしているかの審査が行われることになるのですが、基準として、客観的に見て新しい技術を開示しているか否かという基準があり、そのような基準に記載があうように修正する必要がある場合もあります。このような時に補正の手続きが有効になります(ただし、無制限に修正できるわけではありません)。

●マーケティング視点で見ると:
「出願時」と「補正時」とを時系列的に比較すると、この補正という手続きは、「出願時」から見れば必ず「後」にされることになるため、出願時点より現在の出願人の意図に近い内容を反映させる手続きといえます。
このため、先に述べた審査に応答するような場合に、発明の内容を部分的に変更することがあるわけですが、この時に変えた内容を見てみると、より出願人の意図に即した内容、すなわち、ビジネスとして今やろうと考えている技術内容(やっている内容)により近い技術に記載が改められている可能性が高くなるといえます。
また、ここでいう通常の「補正」の手続きは、特許庁への手数料の支払いは無料であるものの、一般的に特許庁とのやり取りは「弁理士」または「特許業務法人」のような代理人を立てて行うことになり費用が発生するため、このような費用をかけても記載を改めたいと思う状態、すなわちそのような必然性がある場合にしか、一般的には補正の手続きは行われないと考えてよいといえます。
以上のように、「補正」の手続きは、出願人のビジネスの意図を汲むうえで非常に重要な要素であり、特許出願について調べる際には、「補正の有無」、「補正の内容」、「補正の時期」 が重要といえます。

●条文の参照元(e-gov)は:
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=334AC0000000121&openerCode=1
●各条文の特許庁の公式解説(いわゆる青本)は:
https://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/hourei/kakokai/cikujyoukaisetu.htm

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