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知的財産の構築は(敬遠されがちな)努力を伴うプロセスが必要不可欠

知的財産の一つに商標権があります。これは「スターバックスといえばカフェ、カフェといえばスターバックス」というA(商標)といえばB(商標が提供している商品・サービス)、B(商品・サービス)といえば(その代表的な商品・サービス提供者)という図式が成り立つ業務に化体(かたい)した信用のことを言います。

ニトリ、ユニクロ、MUJI、マクドナルド、これらといえば「〇〇」と、そのサービス名と業務内容が密接にリンクしている状態であればあるほど、商標としての価値は高くなり、いわゆるライセンス料や市場における優位性というものも高額になっていきます。

さらに、ニトリ、ユニクロ、MUJI、マクドナルドといったサービス名は所詮文字列に過ぎないといえば文字列に過ぎないため、誰でも簡単に真似をしたり、釣り(おとり)に使ったり、偽物を流通させることも簡単にできてしまいます。

そこで登場するのが商標法です。商標法を使って正しくニトリ、ユニクロ、MUJI、マクドナルドといった文字列を権利として保護しておけば、偽物を市場から裁判所の力を使って駆逐できたり、実行犯を刑事告訴して逮捕してもらったり、貿易制限をかけて流通規制を敷くこともできるようになります。

せっかく構築した「スターバックスといえばカフェ、カフェといえばスターバックス」という業務に化体した信用を、他人においそれと持っていかれてはたまったものではないでしょう。

この「せっかく構築した」の部分が、知的財産戦略の重要な要素になります。知的財産の構築には「せっかく」という言葉からもわかる通り、時間と反復という努力を伴うプロセスが必要なのです。

簡単な式で表すと、商標の価値は「使用期間×使用回数×認知度」で計算されます。使用期間が長ければ長いほど、使用回数が多ければ多いほど、そしてよく知られていればいるほど商標の価値は高く、商標の価値を高めるには長く、繰り返し、そして多くの人に認知してもらうという努力のプロセスが必要なのです。

ここが広告戦略とは全く異なる部分です。すでに認知度を持っている人(有名人など)に宣伝してもらって一発ヒットを飛ばしたところで、知的財産上の価値は上の数式上たいして生まれませんし、使用期間のパラメータを維持するためにはそれこそ永遠にそれら有名人たる人々に広告費を払い続ける必要があります。

私も営業上これらの話を幾度となく繰り返してきているのですが、正直今の時代は努力を伴うプロセスよりも手っ取り早く簡単な方法に魅力が囚われやすく、正しい知的財産上のブランド戦略を取られている方、取ろうとされる方は少数派です。

とはいうものの、人々の興味の対象が移ろいやすい現代に、広告戦略で一発当て続けるというのは今となっては大企業の財力をもってしてもムリゲー化しつつあることは明白です。

ここは一つ、つべこべ言わずに20世紀からの王道である知的財産制度を利用したブランド戦略に早めに舵を切ること・切り直すことをお勧めします。もう一度言いますが、今の時代に広告戦略でヒットを当て続けるというアプローチはムリゲーです。

今回は久しぶりに広告を入れました

弁理士・中川真人