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NDAを結んでるから大丈夫なんでしょ?

秘密保持契約のことをNDAを言いますが、一般に自社の経営情報や技術情報、顧客情報などを他社に開示する際に、この秘密保持契約が交わされます。

一方、ベンチャー企業などが資金調達を目的に自社の開発情報をNDAを結んだ上で開示すると言った事例もよくあるようです。私の記事なので、もちろんこの後にNDAに関する警鐘が説明されるわけですが、結論から言って、まだ公開していない技術情報を始め、ビジネスアイデアやデザイン、商品名などをNDAを結んで開示したところで、それらの情報がリークされてもどうすることもできません。

あまり詳しく説明すると悪用される情報でもあるので手短に済ませますが、「偶然ですね、弊社も同じアイデアを考えていました」と言われてしまっては、その時点でNDAは破綻してしまうのです。

NDAは、あなたしか知り得ない情報、例えばお金の情報や誰と何の取引をしている、誰にいくらで何を売ったという、そう言った情報を開示する目的でしか効果を発揮しません。

ビジネス上のアイデア(技術・デザイン・ネーミング等)という創作物は、同じものを誰でも思いつくことができるため、結論としては上の例のようにすぐに破綻してしまうのです。

このような場合に備え、用意されているのが特許法であり、意匠法であり、商標法です。他社への開示前に特許出願をしておけば、意匠登録出願をしておけば、商標登録出願をしておけば、「偶然ですね、弊社も同じアイデアを考えていました」という理屈を跳ね除けることができます。現実問題、これらの法律を使う以外に、ビジネス上のアイデアを保護する方法はありません。

とある食品メーカーは「弊社はいかなるアイデアも受け付けません。」というメッセージを堂々と掲出していますが、特許出願や意匠登録出願をされていないお菓子のアイデアやデザインを持ってこられても、その情報の扱いに困るだけだからでしょう。

秘密保持契約をしたから大丈夫というのは、一般の人がそう考えることがあっても特段問題はありませんが、経営者や事業者がネットの情報で安易に早合点してしまうのは脇が甘いと言わざるを得ませんし、そもそも自分の思いついたアイデアが他の誰も思いついていないと考えること自体に視野の狭さが表れています。

20世紀の中盤ならまだしも、これだけ高度に発達した自由主義経済の中でネットや本で調べられる程度の知識でビジネスの船出をするのは完全に無理ゲーです。とりあえず、弁護士または弁理士という法律の専門家の知識を頼ってください。そんなに、世の中は甘くも優しくもないのです。

弁理士・中川真人