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「なんて長く、素晴らしい旅だったんだろう…」

今日、葬儀の司式をしてまいりました。その中の説教の一部をご紹介します。

 先日、世界的なロックバンドVAN HALENのギタリスト、エドワード・ヴァンヘイレンが癌のため亡くなりました。世界中のミュージシャンやロックキッズ…いやロックオヤジたちが悲しんでいます。ミュージシャンたちのコメントはどれも限りないリスペクトと慈愛に満ちていました。でも最も素晴らしかったのは、やはりVAN HALENのヴォーカルのデイブ・リー・ロス。同じ高校で一緒にバンドを始めたデイブは、若い頃のバックステージでの2ショット写真を載せて「What a Long Great Trip It’s Been..(なんて長く素晴らしい旅だったんだろう…)」というツイートをしています。

 でもこの二人ずっと仲良しでいたわけじゃない。せっかく世界的なヒット曲(JUMPだとかPANAMAとかね)を出したのに、その直後に大げんか。袂を分かちデイブはバンドを脱退。怒ったVAN HALENは新ヴォーカルを迎えた次のアルバムでデイブの存在を揶揄するようなジャケットを作り挑発。対するデイブは新バンドのアルバムに「Eat em and smile(ヤツらを食って笑ってやる)」なんてケンカ腰のタイトルをつけました。世界中がこの分裂とケンカに呆れつつも「まあゴキゲンなバンドが二つできたと思えば」と楽しんでいたわけです。

 それから22年経って紆余曲折あってデイブはVAN NALENに復活するのです。詳しくは知らないのですが、デイブはエディがガンだということを知ったからだったのかもしれません。「もう俺がアイツの隣で歌うしかねえだろ?」と思ったのでしょうね。少年時代からずっと一緒に時を過ごし、理解し、ケンカし、離れ、再び理解しあって相手を見守り、そして見送った。うん、だから「なんて長く素晴らしい旅だったよな?」って心から言えるんですよね。

 Aさんとご夫人のB子さん、そしてご家族、また職場でご一緒された皆さんにはそれぞれAさんと共に歩まれた旅路の時間があったことでしょう。それぞれ簡単じゃない、色んな感情が生まれもしたでしょう。でも死とはその感情が断ち切られる時でもあります。許せない、という怒りが赦しへと向かわせられる、これは人間にはできないこと。神様によって備えられた時なんです。


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