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誇りと呪いと

旗本の跡取りとして私は生まれた。
そのまま成長し、親や周りの決めた女性と結婚した。
その女性、~一般的には妻といわれる~ は私の家と同程度の家柄の出で
相手も親の決めた相手~私~と夫婦になった。

お互い相手は誰でもよかった。
誰でもよいとは語弊があるが、周りから勧められた相手と結婚するのは当然だと思ってたし同程度の家柄なら問題は家風に違いもそれほどないだろうとお互いに思っていた。
家同士の結婚、なのでお互いの感情は必要ない。
義務としての結婚だった。

なので夫婦の間に愛情や好感などあるわけもなく、ただ同じ屋敷に暮らすものとして互いに干渉もなく暮らしていた。

年月が経ち、私がそのような冷たい空気の屋敷と妻に耐え切れなくなってきた。
私は町に愛する女性を見つけ通うようになった。
一緒に暮らすことはさすがにできなかったが、頻繁に通うようになった。
正妻とは作れなかった、作ろうとはしなかった温かい家庭をその女性と作っていた。
正妻は今の暮らしを変えることはできないし、気位が高いので町の女に負けたと認めるようなことはしない(自分から離縁を言い出すことはないだろう)と、第一私には関心がないだろうとすっかり安心しきっていた。

だが違った。

妻はとても気位が高かった。

愛情を持っていない夫とは言え、夫が身分も美しさも持ち合わしている自分よりも町場の女にうつつを抜かしている状況はとても耐えきれるものではなかったのだ。
自身の誇りを傷つける者はたとえ誰であろうとも許すことはできなかったのだ。

そして妻は行動に出た。
蛇を使った呪いを私にかけたのだ。
そしてその呪いは成就することになるのだが、
死ぬ間際に
「武家の家に生まれたのに戦で死なずに蛇の呪いで死ぬことになるとは。何たる不名誉だ。悔しい。」

そうして妻の呪いは成就し、そしてその呪いは今も続いている。




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