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異教の守護者

もうすぐここも霧に閉ざされてやがて誰もたどり着けなくなる。


湖の中の霧に包まれたこの島を訊ねてくる人ももう少なくなった。


私はこの島の中に入る門の番人で、かつ残された数少ない巫女の1人だ。

いつもはこの門の前で外部の人間が島の内部に入るときの案内人をしているのだが、
もう最近は訪ねてくる人間もめったにいなくなった。

この島の教義を信じる者も減っていき、今ではもう数えるほどだ。

私は最後の巫女になるだろう。
忘れ去られる宗教の信者として、滅びていくのをただ見ているしかない。
霧もだんだんと濃くなり島の存在も忘れ去られるのは時間の問題だ。

もうほとんど人が訪ねてくることがないので門番としての仕事もほぼなくなり、出迎えるはずの私の装いや心も荒れている。
自暴自棄の酔っぱらいのようだ、と自分でも思う。
繁栄は過去に過ぎ去り、私はただ手をこまねいているしかない。
何もできない歯がゆさに、ますます心が荒れていく。

だけれども今日は人が訪ねてくる。
私の信じる教義とはちがう、今勢力を拡大中の宗教の信者たちだけれども
何か私たちに話があるあるらしく、ここに来ることになった。

その人たちを私は知っている。
知り合いというか、その中の1人とは深い関係があった。
いまさら何を言いに来るのだろうか、過去の話などをしに来たわけではないだろう。
私たちを消し去るために来たのかもしれない。
異教は滅しなければならないと教える教義の信者だ、私たちとの融和などはあり得ない。
それでもここを訪ねてくるものは島を案内せねばならない。
それが私の門の守護者としての仕事だからだ。


……そして彼らはやってきた。

湖と霧


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