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舞踏会

踊れ、踊れ、この時間は一瞬
顔には笑顔、足元には軽やかなステップを
心の中は欲望と野望と栄達への近道を探りながら
互いの望みと勝利への駆け引きを巧みに巡らしながら
幾重もの思惑を何重にも巡らせながら夜は更けていく

私はこの国で女王に仕える侍女。
侍女の中ではかなり上位の方だと思う。
この宮廷で女王が女王でいられるよう私たちは暗躍する。
私たちは女王の手足となり情報を収集する。
女王と臣下は一見すると忠誠心と信頼にあふれた騎士道精神のように見えるが、その実はいつだれが裏切るか疑心暗鬼にあふれた関係だ。
表面上はにこやかに、その裏では一瞬も気の抜けない一見優雅な駆け引きの取引場。
侍女の中でも女王側ではなく臣下側の者もいる。
仲間であるはずの侍女の中にも臣下側の者がいる、そしてそれが誰かはわからない。
この一見華やかな舞踏会。
侍女と臣下は女王の前で楽し気にダンスを踊る。
女王もその光景をほほえましそうに眺める。
しかしその場にいる誰もが何かをたくらみ、実行する機会をうかがっている。
仲良く踊っていても、高度な神経戦を繰り広げている。

私を女王に忠実な侍女、という風に思うかもしれない。
しかし私はそこまで女王にも臣下たちにも忠誠心があるわけではない。
女王であろうと臣下であろうと生き延びられる方について仕事をするだけだ。
女王の方が生き残ると私は判断した。
だから女王のために働いている。

今まで私の判断は間違ったことはない。
そして今日も女王の前で臣下たちと偽りの笑顔を振りまきながら踊りあかすのだ。





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