見出し画像

輝かしき日々

修道院に入って数年後、私は下位の修道女として日々を過ごしていた。
主に聖堂の掃除が担当だったのだが、修道院に入ってからできた友達とほぼ毎日一緒だったので掃除がつらいとかは感じていなかった。
いつもおしゃべりしたり笑いあいながら名ばかりの掃除をしていた。
この友達とはとても気が合うらしく、何をするにも一緒だった。
年齢も同じくらいで修道院に入ったのも同じような時期だったから自然と仲良くなった。
私はこの友達とこの修道院でずっと一緒にいられるものだと固く信じていた。

別れは突然訪れた。
この親友といってもいいくらいの友達が死んだのだ。
いつも一緒に掃除をしていた聖堂で自ら首をつっていた。
第一発見者は私だった。
あの時の光景は忘れることは無いだろう。
目の前で揺れている足がいまだに目に焼き付いている。

理由は失恋だった。
月に一度修道院に説教をしにくる神父に恋をした。
そしてその恋心を神父に打ち明けたのだが、自分にその気はないとけんもほろろに断られてしまった。
神父と修道女の関係では成就するはずもなかったが、友達はとにかく気持ちを伝えたくて告白した。
だけれどもその恋心を完全に否定され、友達は生きる希望をなくしてしまい自ら死を選んだ。

許せなかった。
唯一の心を許せる友達を失う原因となった神父を許すことができなかった。
神父という立場ゆえ恋心を抱かれた相手にどうすることもできないのはわかってはいるが、私はどうしても許せなかった。
神父を思いっきり罵倒した。
「あなたのせいで友達は死んだ。絶対に許さない。」

なんとなく感じていたのだが、この神父は私のことが好きだったのだ。
今度は私が拒絶した。
「お前に好かれたくない。私はお前を憎む。」

そして私は背を向け、この後誰にも心を開かずに修道女としての人生を終えた。

修道院2


励みになりますのでよろしければサポートお願いいたします。