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高校野球選手におけるFunctional Movement Screenトレーニングの効果

▼ 文献情報 と 抄録和訳

高校野球選手におけるFunctional Movement Screenトレーニングの効果-無作為化比較臨床試験

Kenta S, Kiyokazu A, Takahiro O, et al.: Effects of functional movement screen training in high-school baseball players: A randomized controlled clinical trial, Medicine (Baltimore) (IF: 1.552; Q2). 2021 Apr 9;100(14):e25423

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 近年,傷害予防の手段としてFMS(Functional Movement Screen)やFMSトレーニングが注目されているが,高校野球選手を対象にその効果を検討した研究はない。本研究の目的は,FMSトレーニングが高校野球選手のFMSスコア,身体機能および野球パフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることである。

[方法] この無作為化比較臨床試験の被験者は、高校生の男子野球選手で、FMSトレーニング群(介入群)と対照群のいずれかに割り当てられた。介入群は週4回のFMSトレーニングを12週間行った。介入前、介入後8、12、24週目に、被験者の学校環境におけるFMS能力、身体機能、野球成績を測定した。

[結果] 15~17歳の野球選手71名を募集し,介入群(n=37)と対照群(n=34)のいずれかに割り付けた。2群間で参加者の特徴に大きな違いはなかった。トレーニングを継続した結果、ほとんどのFMSスコアが12週間後までに改善した。介入群は対照群と比較して、ディープスクワット、ハードルステップ、インラインランジ、アクティブストレートレッグレイズ、トランクスタビリティプッシュアップ、ロータリースタビリティのFMSスコア、トータルFMSスコア、目を閉じた状態でのシングルレッグスタンス時間がトレーニング8週間後に有意に増加した。12週間のトレーニング終了後、ハードルステップ、インラインランジ、アクティブストレートレッグレイズ、トランクスタビリティプッシュアップ、トータルFMSスコア、アイズクローズドシングルスタンスタイムは有意に増加したが、ピッチングボールのスピードは有意に減少した。目を閉じた状態での片足立ちの時間と疲労感は,トレーニング開始から12週間後に有意に改善した(下図)。介入群は対照群と比較して、FMSのトータルスコアが14点未満の被験者数が、FMSトレーニングの8週間後と12週間後に有意に減少した。

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[結論] 8週間のFMSトレーニングは高校野球選手のFMSスコアの改善に寄与するが、FMSトレーニングを継続しないとFMSスコアは下がる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

理学療法士としての視点でいえば、選手一人ひとり個別で身体特性、機能を評価できることが理想であるが、現実そうはいかない。そのため、スクリーニングテストが存在すると筆者は考えるが、FMSの優れたところは、この評価自体が(あくまで障害予防としての)運動療法になりえるところだ。今まで日本人スポーツ選手を対象としてこうした研究はなかったため参考になるだろう。しかしながら、実際に症状(疼痛)を認める対象に対して、「インラインランジのスコアが低い⇒インラインランジを練習する」という対応をしてしまうと、そこには仮説検証がなく、極めて短絡的となってしまう。大切なのは、「集団でFMSを実施し機能低下を認めた項目を各個人が練習する」までが一次予防として、その時点で疼痛を認める症例にはしっかり個別で対応することだろう。



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