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「Trendelenburg=股関節外転筋力低下」と言う勿れ

▼ 文献情報 と 抄録和訳

3次元動作解析と筋力測定によるTrendelenburgテストの妥当性と信頼性の決定

Luke M, Alexander A, Phoebe H, et al.: Determining Trendelenburg test validity and reliability using 3-dimensional motion analysis and muscle dynamometry, Chiropr Man Therap (IF: 1.512; Q1). 2020 Oct 19;28(1):53.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 股関節外転筋群は、歩行時に骨盤を安定させ、骨盤が過度に下がらないようにする。股関節外転筋群の筋力低下は、慢性腰痛などの筋骨格系疾患との関連が指摘されている。そのため、施術者は臨床の場で股関節外転筋の弱さを正しく診断することが重要である。トレンデレンブルグ・テストは一般的に使用されているが、筋骨格系の損傷がない場合の股関節外転筋の弱さを評価する上で、このテストの有効性は疑問視されている。本研究の目的は、股関節内の障害がない集団において、前額面の骨盤運動と股関節外転筋力を評価するために、施術者が観察するトレンデレンブルグ・テストの有効性を明らかにすることであった。

[方法] 本研究は、2019年6月14日から10月16日にかけて実施した。18名の参加者が本研究に採用された。Biodex System 4 アイソキネティック・ダイナモメーターを用いて、ピーク正規化等尺性およびアイソキネティック股関節外転筋トルクを両側で測定した(n = 36)。トレンデレンブルグ・テストは、大学院生のカイロプラクティック・プラクティショナーが「陽性」または「陰性」のサインを評価しながら、各参加者が両側で行った(n = 36)。このテストは、Vicon社の3次元モーションキャプチャーを用いて、前額面の骨盤の動きと挙上を同時に記録した。股関節外転トルクのピーク値と骨盤の動きの間で相関分析を行い、関係性があるかどうかを調べた。施術者と3次元解析の間の一致度は、カッパ(κ)統計を用いて算出した。

[結果] 股関節外転筋力と骨盤の動きとの間には、外れ値除去前には有意ではない弱い相関関係が見られた。外れ値除去後は、股関節外転筋力を除き、有意(p<0.05)でありながら弱い相関関係が見られた。カイロプラクティック施術者と3-Dimesnional分析の間には、トレンデレンブルグ・テストの評価において弱い一致が見られた(κ=0.22-0.25)。

[結論] 本研究では、健康な若年成人を対象としたトレンデレンブルグ・テストにおいて、正規化されたピーク等尺性および等力性股関節外転トルクと前額面骨盤運動との間に有意な関係は認められなかった。また、施術者の評価と骨盤運動の評価の間の一致率も低かった。股関節内の病変がない場合に、股関節外転筋の弱さを評価するためにこのテストを使用する際には注意が必要である。確定的な結論を出す前に、より大きなサンプルサイズの研究を行うべきである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

「トレンデレンブルグ徴候=股関節外転筋力低下」と完全に信じ込んでいるセラピストは今はあまりいないだろう。ただ、今回の研究結果は、その他のテストにもいえるのではないか。特に動作(筋力・柔軟性)をみるテストにおいて、「〇〇テスト=〇〇」と短絡的に解釈してしまいがちだ。こういったテストはあくまで判断の一つとして、複合的に評価していくのはもはやスタンダードだろう。

少しでも参考になりましたら、サポートして頂ければ幸いです。