ドラクエウォークはじめました

「背に腹はかえられない」って慣用句のなかでは比較的日常で登場する機会の多い方だと思うけど、最初に背に腹の代わりをさせようとした奴は何がしたかったんだろう。

「今日は土用の丑の日だからな。気合い入れて仕込まなきゃ」
「おい!サブ!」
「大将!お疲れ様です!」
「お疲れじゃねぇよ、お前!なにやってんだ!」
「いや、仕込みですけど」
「お前、鰻の背中から捌いてるじゃねぇか!うちは関西風だから腹から割くんだよ!」
「えー!すいません!全部背中でやっちゃいました!」

影響なさそうだ。

「オヤジ、オレはこの世界でのし上がりてぇんだ。背中にでっけぇ昇り竜を掘ってくれ」
「まったくテメェは…分かった。最高の一品にしてやらぁ」
(5時間後)
「おい、オヤジ!テメェ、これお腹に掘ってるじゃねぇか!」
「いや、オレも悪かったけどお前も気づけよ!」

これは影響デカそう。
でもどっちにしてももう銭湯に行けないから刺青なんて掘るもんじゃない。

そんなしょうもないこと考えて過ごすしかないくらい私は怠惰な暮らしをしている。
せっかく運動しようと思って今更ドラクエウォークをインストールしたのに、お外が命に関わる猛暑なもんでおよそウォーキングなんてしようと思えない。
「このままでいいのか?とはいえ熱中症になったらどうする?」
という自問自答を繰り返し、繰り返される諸行無常、よみがえる性的衝動、と向井秀徳に想いを馳せる。

とはいえあまりに運動していないと思い、私はついに夏の夜のウォーキングに出かけた。

不思議なもので家を出るまでは1歩たりとも歩きたくなかったのに、歩き出すと気持ち良くなってめちゃくちゃ歩いてしまう。気付いたらドワーフとの絆がものすごく深まっていた。
こうして歩いているだけで架空の異種族との絆が深まるのだから、現実の同種族との絆だってもっと簡単に深まっていいのに、人付き合いって難しいものだ。

ふと思ったが、「背に腹は代えられない」という言葉からうけるニュアンス的には「あー、腹のほうが欲しかったのに!背中かよ!」ってことが起きたのだろう。動物の肉をみんなで分け合ったのだろうか。
分け合うのが鮎の塩焼きだったら、はらわたの苦みが得意でないので背中の方が絶対にいいなぁ。
「背に腹は代えられない」を作った人がめちゃくちゃ鮎が好きだったら「腹に背は代えられない」にしたのだろうか。いっそ「はらわたは食べたくない」とかで良さそうだ。

「最近ずっと雨続きで洗濯できてなかったでしょ?そんで買い物にも行けてなかったから家に食べるものなんもなくて。さすがにコンビニでも行くかと思ったんだけど、コンビニ行く服もないのね。でもはらわたは食べたくないから昨日着たTシャツもう一回来たよ」

家に食べ物がはらわたしかない人みたいになってしまった。
慣用句にはその形になるだけの経緯と理由があるんだな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?