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【チェコ編-2】ヨーロッパ、ビールへの旅
4/20(木) 9日目
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Jelínkova Plzeňská Pivnice
8時過ぎに起床し、ゆっくりとシャワーを浴びて10時頃にホテルを出発。小雨が降る中向かったのはJelínkova。プラハでウルケル飲むならここ!といくつかの人に勧められたお店です。10時開店ですが、ついた頃にはすでに10人以上のお客さんがいました。新聞を読んだり、本を読んだり、もちろん片手にはビールが。日本人的感覚でいうと居酒屋というよりかは、喫茶店に近いイメージですかね。Jelínkovaのウルケルは、ややガス感が弱く全体に柔らかさを感じて、朝から飲むのに優しいバランスでした。お店によってもこれだけ違うのも面白いところですね。解読不能なチェコ語のメニューを見ながら指差しでオーダー。冷菜中心でしたがちょっとしたつまみもあってビールがすすみます。地元の人の日常が垣間見える空間で、とても居心地が良かったのでつい長居してしまいましたが次の予定もあるので12時前に退店。店を出たところでボビーさんという名注ぎ手が休憩をしていました。お店の中にいるときは結構怖い雰囲気だったのですが喋ってみるととても気さくな方でなんだか嬉しくなっちゃいました。
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Pilsner Urquell
Jelínkovaを後にして、プラハ駅へ。12:21発の電車に乗り込んで向かった先はピルゼン、プラハからは電車で1時間ほどの距離にある、言わずとしれたピルスナー発祥の街です。目的は当然、ピルスナーウルケルの工場見学。
駅から5分ほど歩くと、その立派な工場が見えてきました。大きな工場だけあって、一日数回ブルワリーツアーが用意されています。14:30から始まる英語の回を予約してあったので、少し時間を潰しながらツアーの開始を待ちました。
20人ほどの人が集まったところでツアー開始。まずはウルケルが生まれた背景やこの街の歴史の話しなど。ピルゼンという街はニュルンベルグとウィーンの中間に位置することから交易の街として発展したようです。ウルケル誕生以前はヨーロッパの他の街と同じく褐色のエールが作られていたんだとか。その後、ドイツで下面発酵酵母が流行したことからドイツ人技師を呼び寄せラガー作りへの挑戦が始まったそうです。
続いて、場内をバスで移動しながら現在稼働中の工場を見学していきます。仕込み設備はそれはそれは巨大で、1バッチが40,000Lの釜が4セットあり屋外には240,000Lと500,000Lのタンクが並びます。1日に4仕込みまで可能で、1年の生産量は途方もない数でした。ちなみにこれがどれだけ巨大かというと、パシフィックの1年間の生産量とウルケルの一仕込みがほぼ同じ量です。恐るべしピルスナー帝国。ウルケルの特徴の一つといえば、デコクションマッシングというもろみの一部を煮沸することで糖化を進めていく製法でしょう。温度系の無い時代に生まれたテクニックで、現在では行ってるところもかなり減っている伝統的な製法です。やや複雑な仕込みになるため釜の数もその分多かったのが印象的でした。ちなみにパシフィックも美味しいラガーを作るためにデコクションマッシングができるような釜に改造してもらっています。
充填設備などをみながら、いよいよ地下セラーへと向かいます。地下に続くトンネル内は外と比べると温度も低く、湿度は少し高めでした。いわゆる天然の貯蔵室とも言えるこのセラー。現在は使われていないようですが、一部はツアー用にビールが入った樽なども置いてありました。想像しているよりはるかに広大で、大樽が10本以上は入る部屋がとにかくどこまでも続いていました。
地下なので、それだけでも涼しいのですが場内には数箇所天窓のようなものが空いていて、それは冬の間に雪や氷を落とすためのものでした。冬の間に氷を部屋いっぱいに貯めておくことで夏の間も低い温度をキープできることから質の高いラガービールを作り続けられたのでしょう。ピルスナーウルケルが誕生した1850年前後といえば産業革命の入り口付近。蒸気機関の発達から、物つくりの工業化が加速、時を同じくして焙煎技術の向上により淡色の麦芽が作れるようになったことや、酵母の培養技術の確立、冷蔵機の発明による下面発酵酵母の流行などビールを取り巻く環境がそれまでと大きく変わったことが想像できます。そしてピルゼンでいうと麦とホップの栽培に適した気候、冬に雪が降ることから上記のような天然冷蔵庫を作ることができたり、ピルスナーに向いた軟水の地下水などなど、偶然が重なったことで、もはやピルスナー誕生は必然でもあったとも言えそうな環境ですね。こうして、ピルゼン生まれのピルスナーは瞬く間に大人気商品に。その流れの果てが、現在にもつながる世界のビールのスタンダードスタイルを生み出したというわけ。
今回、陸路で旅をしてきたのもあって、こういったビールの歴史がストンと頭に入ってきました。そして、ある意味でヨーロッパのビール史の一つの終着点がこの地下セラーに集約されていたように思います。
ツアーの最後には木樽熟成のウルケルのテイスティングを。無濾過なので、薄く濁りがあり甘みもやや強く感じました。木や藁のような香りもあり好みではありましたが、街で飲むウルケルの方が美味しかったようにも思います。
肌で感じるとはまさにこのことか、なんて余韻を感じながら17:20の電車に乗って再びプラハ市内へと戻りました。
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Dva Kohouti/Lokal
プラハに戻ってからまず向かったのはDva Kohoutiというブルーパブ。MATUŠKAというチェコのクラフトブルワリーとウルケルのサービングチャンピオンがプロデュースしたお店だそうです。飲食店が複数並びテラスを共有する空間で、街の話題のスポット的雰囲気。若い人もたくさんいました。タップは店内で醸造するビールとMATUŠKAのビールが並びます。カウンターには大きなサービングタンクもあり、ひっきりなしにビールを注ぎ続けていました。肝心のビールは、んーなんだかなという感じ。多分、全然生産が追いついてなくて短い期間で仕上げているのでしょう。人気店ほどビールがイマイチになるという悲しい事態です。雰囲気を楽しんだところで、背中合わせのような位置にあるLokalというお店へ。ここは料理も評判で市内に何店舗かあるようです。こちらも今時な雰囲気ではありますが、提供しているビールはウルケルやコゼルなどのチェコクラシックビールです。しかもカウンター下や店内奥には500L程度のウルケルサービングタンクまで設置されていました。偶然かもしれませんが、この日のスタッフはほぼ女性。これまで実に男性社会的なパブばかりだったので少し新鮮でした。ウルケルの味はバランス型で、際立った印象はありませんが、素直に美味しいと思える味わいです。
やや疲れもあったのでまだ22時前でしたが、宿へと向かいました。が、宿が近づくにつれ気になるのはティグラの存在。「もしかしたら入れんじゃね…」と。正直にいうと、1人だったら入れる可能性高そう、と抜け駆けする気も満々でした。ですが、さっきまでぐったりしてたメンバーもなんだか急にやる気が出てきたようで結局みんなで向かうことに。閉店1時間前、どうなることかと思いましたが扉を開けると常連さんの手招きもあり入り口付近のスタンディングテーブルを使わせてもらえることに!前日の夕方に行った時とは違う雰囲気で、酒場としての熱気のピークのような状態には圧倒されました。ビールの味もさることながら、”酒場”がもつ本当の魅力というか、この店の真の姿を見られて感慨深い気持ちに。きっと忙しい一日だったのだろうと思いますが、スタッフの機嫌も本当に悪くて、でもビールを頼むと嫌な顔をしながらもすぐに出してくれるんですよね。後から数組お客さんも入ってきましたが、入り口付近の常連勢が入店をコントロール。みんなで秩序を保っているのだなと。そんな光景を見ていたら、ここでこうしてビールを飲めていることがとても嬉しくなったのです。
23時前にはカウンターの電気も消灯。滑り込みセーフな感じでまたここに来れて、本当にラッキーでした。
テンションが上がった僕らは宿に戻って部屋飲みを開始。後の「プラハ宣言」が行われたり、朝まで熱く語りあったり。翌日辛いのもわかってたけど、必要な時間だったと思います。日記を読み返すと「後悔はない」という言葉で締めた一日。今振り返っても、全く後悔のない特別な日だったなと思うのです。
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