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【ベルギー編-2】ヨーロッパ、ビールへの旅
4/14(金) 3日目
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De Dolle Brouwers
この日は一旦ブリュッセルを離れて、ベルギーの西部及び南西部のブルワリーを目指しました。まずは予約してあったレンタカーを受け取り、ブリュッセル市内から車で1時間ほどのDe Dolleに向かいました。
事前情報でタップルームは土日のみの営業ということで、この日はやっていないのを知っていたのですが、通り道だし外から覗いてみようということで立ち寄ることに。近くまで来るとその外観からすぐにDe Dolleだ!とわかりました。近くに車を停めて歩いて向かってる途中で、奥様(名前失念!)に遭遇。「ブルワリーに用があるの?」と声をかけてくれました。日本から来たことを伝えると「Ryoの友達?今日は息子が酵母の世話でたまたま来ているから中を案内するよ」と。(Ryo=De DolleをはじめとしたベルギービールをインポートするEverbrew社の社長である菅原亮さん)
アポをとるべきだったなと反省もしましたが、お言葉に甘えてブルワリーの見学をさせていただくことに。ユニークなブルワリーだという話しは聞いてましたが、中に入ってびっくり!なんと1835年製の醸造設備を今でも使っているのです。Cantillonのものよりさらに古く、木製のマッシュ/ロイタータンに直火仕様の銅製ケトル(約3000L)、そしてこちらも銅製のクールシップまで!あまりにすごすぎて言葉が出ませんでした。当然古さも感じますが、未だ現役であることを感じさせる雰囲気に圧倒されました。
また発酵容器がかなりユニークで、なんと銅製の角形オープンファーメンター!これは僕も本の中でしか見たことないです。石で作られた部屋は少し暖かく、その中に2層のファメンターがありました。一つには実際に発酵中のビールも入っていて確かフラッグシップのOerbierだったかと思います。キャンディのような香りが部屋に充満し、また密室なので炭酸ガスも多くちょっと息苦しさすら覚えました。笑
一次発酵はここで7日間程度行い、二次発酵タンクへ。こちらはステンレスの横置きタイプ。3-4週間程度のコンディショニングを経て瓶詰めしたのち、容器内発酵が行われるようです。
一部のビールはワイン樽などでの熟成も行われてました。あくまで野生酵母などの発酵を主体とするので、木の香りは不要。ウイスキー系の樽は使わず、フランスやイタリアなどで使い古されたワイン樽を購入しているようです。
ここで、奥様にバトンタッチ。タップルームでビールの試飲をさせていただきました。De DolleもCantillonと同じくクールシップを用いますが、あくまで麦汁を冷やすことがメイン。主発酵を行う酵母は後から添加しているようです。なんですが、当然そのプロセスから他の菌も介在するわけで、XLというPale Aleも爽やかな酸味があり明らかに乳酸菌のニュアンスを感じますが、乳酸菌の添加はしてないそうです。完全自然発酵では無いが、設備や建物がもつポテンシャルを最大限に活かしたビールは最高でした。OerbierのReservaも樽熟成を行った特別版。こちらも酸のニュアンスが綺麗に出ていて、また11%もあるアルコールは全く感じさせず、感動するレベルの美味しさでした。
こればっかりは真似など到底できないであろうと思わせる、ブルワリーそのものの独自性にやられましたね。帰る間際で、オーナーのクリスさんも登場。彼はブルワーでありながら、芸術家でもあります。愛嬌のあるロゴデザインをはじめ、タップルームにはたくさんの作品も飾ってありました。お礼にと思い、Tシャツをあげたのですがパシフィックのロゴも気に入ってくれて、とても嬉しかったです。
ここでもまたしても、彼らのホスピタリティのおかげで本当に素晴らしい時間を過ごせました。菅原さんがこれまで培ってきた繋がりのおかげというのもあるだろうなと、ひしひしと感じました。ありがとうございました!
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Westvleteren
De Dolleを後にし、さらに西に向かって40分ほど車を走らせました。目的地はDe Struise Brouwers。ここもタップルームは週末の営業のみなので、この日もお休みでした。近くのカフェ「’t Molenhof」で昼食を。春のヨーロッパはホワイトアスパラのシーズン、白身魚のソテーと一緒にいただきました。このエリアはフランスとの国境際に位置し、Poperingeという小さいながらもホップの産地としても有名な街でもあります。せっかくなので、Poperingeのホップをふんだんに使った”Hommel Bier”を頼んだつもりが”Omer Bier”がきてしまいました。残念!
腹ごなしが済んだところで、再び移動。10分ちょっとで着いたのが、あの”Westvleteren”の醸造元でお馴染み「Saint-Sixtus Abbey」です。いわゆる修道院で作られるビール”トラピストビール”のうちの一つ。その味わいや入手の困難性、ラベルの無いデザインなどから長らくビールの評価サイトでも世界1位に君臨し続けたビールです。いわゆるブルワリーでは無くあくまで修道院なので、中に入ることなどはできないのですが、敷地の外から礼拝にくる人たちなどを眺めてみました。周りは広い畑なのですが、その中にポツンと独特の存在感のある修道院で不思議な場所でした。向かいのカフェでビールが飲めるようですが、この日は定休日。すぐそばには「Sint Bernardus」もあるのですが、だいぶ時間も押していたので泣く泣くスルーしてこの日の最後の目的地へと向かいました。
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Brouwerij De Ranke
Saint-Sixtus Abbeyから車で50分ほど、ベルギーの南西部にあるDe Rankeがこの日の最終目的地。週末のみタップルームの営業もあるので、それに合わせて予定を立てていました。Dottigniesという小さな街にあるので、最寄りの宿は徒歩で30分。地平線まで見渡せそうな畑の中にある、ヨーロッパ式民宿とも言えるような素敵なお宿に泊まりました。
車を置いて、いざブルワリーへ。17時頃に到着しましたが、すでに地元のお客さんなどで盛り上がっていました。タップルームはブルワリーの2階部分にあり、テラス席からはDottigniesの街が見渡せる抜群のロケーション。
ドラフトは6種類で、当然ボトルビールもフルラインナップ。一杯目は”Simplex”!と心に決めていたので、すかさずオーダー。そりゃあ、うまいっす。メモを見返すと”秒で飲み干す”とありました。そしてタップから飲む”XX Bitter”も当然最高です。個人的には、最も好きなビールと言っても過言では無いので、本当に幸せな気分で飲みました。両ビールとも現地クオリティのフレッシュ感が抜群で、収穫したてのホップのような瑞々しさと青さがあり、はっきりとした味わいなのにどこか柔らかさすらありました。
De La Senneもそうでしたが、正直スタイルや製法的に日本で飲むのとそれほどクオリティに差がないのでは、と思っていたのでびっくりしましたね。Hazy IPAのような、ドライホップもしっかり行い、またそのフルーツのようなフレーバーのものは鮮度が大切なのはイメージができるのですが、De La SenneやDe Rankeのビールはドライホップすらして無いものも多いですし、容器内発酵などもするので多少の輸送や時間経過にも強いのではと思っていたのです。この繊細なフレッシュ感との出会いは、この旅の中でもかなり衝撃的だった出来事です。
タップルームの営業日はブルワリーツアーもあるのですが、時間に間に合わず今日は無理かななんて思っていたら、バースタッフのケーシーが良かったら案内するよ!と。実はこの時、De Dolleで「このビールをDe Rankeチームに渡してくれ」とお土産を預かっていたのです。ベルギー流のナイスパスに助けられ、ケーシーとも会話が弾み、見学もさせてもらえたという訳なのです。
De Rankeのビールの特徴の一つに、シンプルなモルト構成でありながらその強烈な苦味を支える豊かなボディというのがあります。で、それは何に起因してるかというと”直火”の煮沸釜だと僕は思うのです。パシフィックを始め、現代の多くのブルワリーは蒸気で加熱する釜を使っています。蒸気の温度は約170℃、対してガスバーナーなどの直火は1700℃とも言われています。糖分を豊富に含む麦汁に於いては場合によっては焦げるリスクすらあるのですが、温度の差からメイラード反応なども段違いで行われる、と僕は想像しています。
前振りがやや長くなりましたが、白いタイルで覆われた釜のうち細長い方がその”直火式煮沸釜“です。この日は夕方まで仕込みが行われていたそうで、タイル面はまだじんわりと暖かかったです。「この釜、生きてる」なんて思って抱きつきたくなりました。
釜の中にはまだたくさんのホップが。仕込み当日は中が熱くて掃除もできないそうです。ホールホップ100%で仕込んでいて、またバッグなどには入れず直接投入しているようです。写真では見えませんが、釜の底面に傾斜がついているので、煮沸時は自然な対流が起きるそうです。ちなみにこの設備は、古くからあったものを流用している訳ではなく、オーナーのニノさんが元修行先で使っていた古い設備を模して造ったそうです。
発酵タンクはここもフラットボトムで、背が低いものを使っていました。また発酵のプロセスも高温での短期発酵から、やや低い温度でコンディショニングも兼ねた緩やかな発酵も行っており、少し独特な感じでした。
“Cuvée De Ranke”などのサワーエールにも取り組んでいるので、バレルもたくさん。3000-4000Lレベルの大樽を中心に使っているそうです。
またホップ保管庫も見せてもらったのですが、これがまたすごくて。ローカルエリアのホップを中心に使っているそうなのですが、圧倒的なフレッシュ感から、もしかして収穫したて?なんて思わせるほど。ホップの収穫時期は9月、この時は4月。半年以上経過してこのフレッシュ感は一体なんだと、衝撃を受けました。ホップのキャラクターが特徴だからこそ、そのホップの品質にも当然影響を大きく受けるようで以前は、夏の仕込みのビールは美味しくない(収穫から一番時間が経つので)という問題もあったそうです。今では、農家さんと協力して栽培品質を高めることはもちろん、温度管理による品質の維持に力注いでるそうです。帰ってから振り返ってみて思いましたが、一般的なホップに比べて水分が多かったように思います。もしかしたら、品質を保てるぎりぎりの範囲まで水分を残して保管しているのかもしれません。なんてことを考えただけで、ドキドキしてきちゃいました。
ツアーを終えて、再びタップルームへ。Cuvée De Rankeや、Grapevineなどサワー系も飲みつつ欲張りな僕らはXX Bitterをチェイサー代わりに片手に持ち、とDe Rankeワールドを堪能。バースタッフのケーシーは元々プラハに住んでいたようで、ビアガイドなる仕事をしていたとか。旅の予定を伝え、プラハのおすすめのビアバーなどを紹介してもらいました。
テンションが上がりきった僕らは「宿飲みしよう!」とか言ってビールをたっぷりと買い込んで帰路につきました。真っ暗な農道を歩きながら、「XXサイコーだったなー」なんて話しをしたりして。
ゆっくり歩いていたら、宿に着く頃には酔いが回り結局小瓶を1本ずつしか飲めず、眠りについたのでした。
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