【後編】鹿児島、焼酎の旅。
鹿児島、焼酎の旅。
3日目、後編です。
「なぜ、ビールではなく焼酎?」はこちらから↓
1日目↓
2日目↓
中村酒造場
3日目は霧島市国分にある「中村酒造場」さんへ。
「なかむら」や「玉露」などの焼酎を作っている蔵元です。
この日は、6代目杜氏の中村さんにご案内していただきました。
実は蔵の中で撮った写真はこの麹室だけ。
そう、この麹室だけで90分を要し、蔵見学もここで終了となったのです。
決して、意地悪されたわけではありませんよ。
中村さんは圧倒的な「伝える」力を持った方でした。
もちろん、ただのおしゃべり好きではありません。
酒造りの先にある「伝える」ということとても大切にされているのです。
特に“麹“にかける思いはとても強く、そのために蔵見学のほとんどがこの麹室で終わったというわけです。
昔ながらの麹室で、手作業での製麴を行い、温度管理も機械任せではなく肌で気温を感じ自然の換気で温度をコントロールしています。
通常麹造りの際、その元となる「種麹」は種麹屋さんから買ったものを使います。
ですが、手作業で麹造りをしていく中で「種麹」とはなんだろう?という疑問を持ち始めく蔵つき麹を探す旅?を始めたようです。
麹室はもちろん、蔵の中、蔵の外などあらゆるところに蒸米を置いて麹菌を探したそうです。
それを続けていく中で、麹室の入り口から見て右隅の上部(かなりピンポイント)においた蒸米に麹菌が集まってきたようです。
また麹には白、黒、黄の3種類あり、一般的には白麹と黒麹は相性が悪く共存が難しいとされているそうなのですが、自然に取り付いた麹はその3種類が共存していたようです。
蔵つきの麹を生かした手作業での麹作り。
そして、その中で醸される焼酎。
まさに中村酒造にしかなし得ない「風土」を表現した焼酎であると思います。
機械の発達や、技術の進歩で安定した酒作りができる時代になってきましたが、結局その“本質“ に迫るとまだ近代的な機械が存在する前の作り方に立ち戻っていくのだなと改め痛感。
これはビール造りでも同じことが言えるでしょう。
日本国内であればどこに拠点を置いても、1年中安定して原材料は手に入り、機械による温度管理のおかげで季節を問わずにビールが作れます。
それはそれでありがたいことですが、その場所で作る意味は?A社とB社のビールの本質的な違いは何?
こんな問いに胸を張って答えられるような酒造りをしていきたいな、と思ったのでした。
昼の部
全然イメージがなかったのですが、鹿児島はうなぎの養殖日本一だそうです。
ちなみにお茶の産出額も日本一。静岡県との関係が気になりますね。
国分酒造
つづいて、国分市の国分酒造さんへ
専務の笹山さんに蔵の案内をしていただきました。
これまでに行った蔵の中でも群を抜く大きさの仕込み設備は圧巻。
それでも、人気銘柄は入手困難となるそうでその人気ぶりが伺えます。
写真では伝わりにくいですが、この足場は地上5mほどの高さにあり熟成タンクの上部に位置します。
国分酒造さんの人気商品でもある「安田」や「Sunny Cream」の熟成中のものの香りを嗅がせていただきました。
「安田」は以前に飲んだことがあったのですが、バラやライチのような香りが特徴。
その香りは焼酎の概念を打ち壊すほど強烈でとても魅力的な焼酎です。
「Sunny Cream」はバナナのような香り。どこかビールにも通ずるようなフレーバーにとても驚きました。
これらの香りは原料となる芋を極限まで熟成させることで引き出されるそう。
また、麹との組み合わせや蒸留の方法(減圧or常圧)などもとても大切になってきます。
「使っていない原料の香りがする」
これは酒全般におけるとても重要な要素だと僕は思っています。
今回でいえば芋でできた酒から、バラやバナナの香りがするということ。
芋から芋の、麦から麦の、ぶどうからぶどうの味がするのはある意味当たり前のことですよね。
これはビールにおいて特に言えますが、バナナが入ってないのにバナナの香りがするから面白いのであって、バナナを大量に使ったバナナ味のビールが飲みたいわけではないのです。
もちろん、素材を活かした酒のことまでは否定しませんが。
今回、焼酎の蔵に興味を持ったのも「限られた条件の中で生まれる酒」の背景や造り手の思いを知りたかったというのが大きな理由の一つです。
なので、「安田」や「Sunny Cream」などの焼酎が生まれた背景や現場を目の当たりのできたことはとても良い経験でした。
最後に
3日間に及ぶ焼酎蔵を巡る旅。
パシフィックのこれからにとってとても大事な時間となりました。
お忙しい中時間を捻出して下さった各蔵人様、そしてアポ取り、運転と僕らの旅をサポートしてくれたゆうげん氏、改めてありがとうございました!
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