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こんなことがあっていいのか…と思った話

このときの気持ちを一言で言うと「怒り」、いや「憤り」だ。

6月のある日、帰宅すると一通の封書が届いていた。特定記録とある。
中身は某債権回収会社からの「相続意向確認のお尋ね」。
はい?なんのこと?

読んでみると30年以上も前に亡くなった父の代襲相続だというのだ。
相続といっても「負の遺産」。
ある日突然、お金持ちになったり…では当然ない。
色々あって、父亡きあと父方の親族とはほとんど付き合いがない。最後に接触したのは祖母の葬儀だったと思うが、それも20数年前のことだ。

特定記録で届いたのは住宅金融公庫からの委託を受けてサービサー(債権回収会社)からの「お尋ね」。
債務者の名前に憶えがないが、おそらく従弟にあたる人物だろう。(会ったことがあるかどうかすら記憶にない)
連帯債務者に父の弟である叔父の名前があり、そこに10年以上に亡くなっているとある。(それも今回初めて知った)

叔父の法定相続人は本来配偶者と子供達だ。配偶者である叔母はすでに亡く、たしか従兄弟が3人いて本来は子供が第一順位だが、どうやら当事者以外の2人が相続放棄し、第二順位の両親(祖父母)は既に亡いので第三順位の兄弟姉妹へと順番が廻ってきたということのようだ。

うちの場合は、叔父の兄である父が亡くなっているので私と妹が代襲相続することでお鉢が回ってきたらしい。(全然いらない)
おそらく父の他の兄弟姉妹もしくはその子供達へも同じような知らせが行っているのだろう。

まず最初に文面を見たときは、これは詐欺ではないのか?と疑った。社名を調べると実在する会社で住所も合っている。メガバンクの子会社だ。
それにしてもどうも胡散臭いがこれが詐欺でなければ妹のところにも来ているはずと思い、妹に連絡した。(そのときはまだ確認できなかったが、結局来ていたと後でわかった)

その時点で写メで書類を送ると、
妹:この債務者は誰?
私:知らない。たぶん従弟だと思うけど。
妹:会ったことあるっけ?
私:お父さんのお葬式に来てたかも?
妹:覚えてないわ。
私:……だよねぇ。

父が亡くなったとき、私は大学2回生、妹は高一だったのだ。そんな昔に一度会ったかどうか、しかも父の突然の死で通夜葬儀の真っ只中のことを何十年も経って覚えているわけがない。

大体、従弟が住宅ローンの借入をしたときにすでにこの世にいない父に相続権があるのか?など腑に落ちず色々考えたが、とにかくプロに相談してみることにした。
義弟が、同級生の弁護士、取引のある不動産の管理会社、税理士などにそれぞれ聞いてみてくれたところ・・・。
どうやらこれは詐欺ではなく、この世にかなり頻繁に発生する事象のようで、粛々と相続放棄の手続きをするしかないという結論が早々に出た。

私も同時に色々調べて、どうもその方向になりそうだと思っていたのだけれど、相続放棄と一口に言っても、簡単ではない。まず、申述は故人の最後の住所を管轄する家庭裁判所にする。自分の戸籍謄本はともかくとして、故人の生まれたときからの戸籍謄本や附票を取り寄せなくてはならない。これが、また厄介で、今回の場合は私達が直接の法定相続人ではない代襲相続者なので取り寄せの手続きが煩雑になる。
時間もエネルギーもこんなことに注ぎたくない。ただでさえ、忙しいのに勘弁してほしい!

妹と相談して、二人一緒に弁護士にお願いすることにした。
費用が一人あたり、数万円かかる。それでもこれをしておかないと、下手をしたら数千万という請求が来る恐れがあり、仮に他にも借財などがあったらそれも降りかかるかも知れない。そうなってからではかなり面倒らしいので、今手続きしておくしかない。

お世話になったことなどまったくなく、どちらかというと父が面倒を見ていた叔父。その息子がしでかした不始末。クズはクズを生むと怒り心頭。(汚い言葉でごめんなさい)
本当に怒りしかなく、母も激怒しているが、降りかかる災難は払っておかないとね、と諭された。
いやはや、まったく「災難」であり、この家族に関して良いことなんて廻ってくるはずもない。そもそも連絡先も知らないのだ。
叔父の最後の住所は、うちに控えがあったものとは違っていたし、念の為に電話をかけてみたが当然ながら「現在使われておりません」とアナウンスされた。

まったくお恥ずかしい話だが、あえて記事にした目的はひとつ。
もし、債権回収会社から連絡が来たら絶対に「無視してはいけない」ということを知ってほしいからだ。
相続放棄は、その事実を知ったときから3か月以内に済ませないといけない。
訳がわからないからと無視しておくと、支払義務が発生する危険がある。
「無視してはいけない」
それを強調しておきたいと思う。
(誰の役に立つのかはわからないけれど…)

妹夫婦の高校の同級生の弁護士に、手続きを依頼することにした。
どうせ取り寄せてもらう書類は同じ。2人分ということで少し割引料金になったけど、それでも5万近くかかる。
まったくもって、文字通り捨て金で、ドブに捨てるようなもの。

義弟が、こういうことは淡々と処理を進めて早く終わらせてしまいましょう。そうしたら、きっと良いことがありますよと慰めてくれた。

いやはや、そう願いたい。
そう思って書類を取り寄せて弁護士へ送り、何度か確認のやり取りをして。
やっと先日、裁判所から「相続放棄申述受理証明書」が下りたと弁護士から連絡があった。
これで一件落着。やれやれ。

妹からは、彼は高校時代には生徒会長、弁護士会の会長経験もある優秀な弁護士であり、今後ともご贔屓にだって。
いやいや、願わくば弁護士さんにお願いすることがないことを祈りたい。

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