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高校三年生のころ(2015年)に書いたVRのレポートを実家で見つけたので公開する

以下、タイトル通り。ゴールデンウィークで実家に帰って、クローゼットを整理していたら見つけた。誤字脱字修正はないが、本文の後に2023年の視点から見た指摘や反省点など振り返りを記述した。題名『ヘッドマウントディスプレイの展望』。

1.ヘッドマウントディスプレイとは?


頭部につけるディスプレイ装置である。(仮想現実への没入を目的とする)ゴーグルのように視界を覆いかぶさるタイプのものと、(拡張現実への利用を目的とする)グラス(通称:スマートグラス)のように視界と映像を重ねるタイプのものがある。

2.仮想現実と拡張現実の違い

ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMDと表記する)の用途には仮想現実と拡張現実の二つに分かれている。

仮想現実とは

いわゆるバーチャルリアリティ(VR)のこと。コンピュータの中に、現実とは違うもうひとつ世界を作るという考え方。

拡張現実とは

いわゆるAR(Augmented Reality)のこと。コンピュータを使って、現実の世界をより広げる(拡張する)という考え方。
ゲームという言葉で分かりやすく表現すると、「コンピュータゲームの世界に入り込む」のが仮想現実で、「コンピュータを使って現実世界をゲームにする」のが拡張現実である。
しかし、最近(2015年現在)では現実と仮想空間を融合させるMR(Mixed reality)という概念も提唱されているので、明確な区別はそのうちなくなるかもしれない。

3.なぜHMDをテーマにしたか?

HMDは今ITの世界で最も注目を浴びている端末のひとつ。一部の人々のあいだでは、スマートフォンの次に普及する端末であるともいわれている。ここ最近では、インターネットに限らず、さまざまなメディアが取り上げている。
HMDそのものは10~20年前にもブームがあったが、当時のコンピュータの性能が足りなかったので中途半端のまま流行が終わってしまった。しかし、ここ最近の第二次HMDブームは本物なのではないかと期待されている。

4.なぜ今HMDが流行っているのか?

コンピュータ、液晶などその他パーツの性能の向上、低価格化がある。
第二次HMDブームの日付役はアメリカのベンチャー企業。画期的な手法を用いた(過去と比べて)安価な試作機を発表して話題となる。大手が後からHMDの流れに乗ってきた。
また、HMDは物理演算エンジンというツールを用いてソフトの開発をする。昔は、物理エンジンはコンピュータの高い性能を要求するソフトで、一部の研究者や3DCGアニメーターなのにのみ使われていた。しかし、近年は家庭用のコンピュータの性能が向上したことや、物理エンジンの開発企業側からツールが個人に(条件付で)無料で開放されるケースも増えたため、物理エンジンが個人の規模で普及した。
現在、HMD用のソフトウェアは、企業よりも個人で制作したものが数多くある。大企業はまだ商売につながるかわからない新技術に手を出しにくいこともあるが、意欲のある個人による小規模開発が用意になったことによってHMDの研究は日々進んでいる。物理エンジンの開発企業もHMDへの対応に積極的な態度でいる。これらのことから、HMDはITの民主化の象徴だと表現する人もいる。

5.現在のHMDは何に使われているのか?

ゴーグル型端末は、コンピュータゲームに用いられる。先述の物理エンジンはコンピュータゲームの制作にも用いられることから、熱心な開発者がゲーム開発に勤しんでいる。現時点でHMDで活用されている分野である。また、映像干渉に用いられる。映像の視界が360°(前後上下左右)に広がることから、新しい映像の企画や撮影機器が開発されている。あるアーティストが自信の新曲のPCにHMDを対応させたことも話題となった。仮想現実を利用した新しいビジネスを展開しようとする企業もある。(例:VRの本屋、VRのSNS)主に、Wiiリモコンのように体の動きを反映させるコントローラや、ゲーム機のコントローラ、視線追跡などで端末の操作を行う。
グラス型の端末は、一部の工場の作業員や整備員などに用いられている。支持や作業内容、地図などが神を見ずともグラスに表示される。いちいち視界を動かす必要がなくなり、フリーハンドになる。既に一部の工場や倉庫、整備場で試験的に導入している。
スマートフォンのGPSによる位置情報や、カメラを利用した、現実には見えない情報をスマートフォン越しに体感できるアプリケーションやゲームも多数存在する。
ただし、拡張現実は仮想現実と比べてまだまだ普及していない。
主に、音声や視線追跡、スマートフォンなどの他の端末からリモートで操作を行う。

6.将来的には何に使われるのか?

PCのモニターや紙など今まで2次元的な平面でしか把握できなかった情報を、3次元的な現実に重ね合わせることで他人とのより正確な情報共有がしやすくなる。
地理的・身体的都合の悪い相手とも、ヴァーチャルな空間でより臨場感・質感の溢れるコミュニケーションがとれるようになる。例えば、寝たきりの人がベッドの上から動かずとも、仮想現実によって様々なな人と現実と寸分違わぬ会話ができる。自宅に居ながら仮想現実の空間の職場で仕事をし、その場で同僚とコミュニケーションがとれるようになる。

7.今後の課題

ゴーグル型の場合

非常に酔いやすい。HMDに映る映像が人間の視界と比べて不安定(ちらつき、映像が人間の頭の動きに追いついていない)であったり、脳が認識する視界の情報と二院源のその他の情報(受領、聴覚)が一致しなかったりするので、脳が違和感を覚えて混乱してしまう。それにより、とても気持ちラルク感じる。
ある開発者の体験談だと、戦闘機をコクピット視点で操縦するデモを作って、実際にHMDを使って試したところ、一日中立てなくなるぐらい酔ったという。HMDは使い方を間違えると非常に危険な道具になる。
視界や聴覚まで完全にゴーグルの中の世界に入り込んでしまう。HMDをかぶっている間は現実の周囲を見渡すことができない。他人や周囲の者の存在に気づかずに怪我をして、周囲の人を巻き込む可能性がある。
非常に見た目が不気味である。ゴーグルをつけた人が何をしているのか周囲は把握できない。ゴーグルを着けている人と着けていない人の落差が激しい。

サングラス型の場合

プライバシーの問題がある。グラス型のHMDにはカメラがついている。拡張現実は現実の映像に重ねる仕組みのため、常に周囲をカメラで撮影する必要がある。このカメラが周囲の人のプライバシーを侵害するのではないかという懸念があった。既存のデジタル端末では、映像を撮影する際にカメラを構える必要があるため、周囲の人もカメラの存在を把握できたが、サングラス型では構えなくても撮影が可能なため、周囲の人がカメラの存在に気が付かない場合があるためだ。
もうひとつの懸念が、操作方法である。拡張現実のグラス型玉津はフリーハンドが特徴であるため、将来的んは音声またはカメラから人体の動きの検出が主流になると思われる。しかし、もし自分の目の前に空中に向かって話したりパントマイムをしたりしている人がいたらどうだろう。おそらくその光景は周囲の人の目には異様に映るに違いない。実際、ある会社が発売する予定だったスマートグラスは前述の理由で一般販売を取りやめている。

8.これらの課題を解決するために

ゴーグル型のHMDは公共の場での使用は向かないのは明らかである。今後は個人での使用、もしくはレジャー施設などで限られた空間での活用が期待される。HMDをかぶっている人に体を大きく動かすような要求をするのは控えるべきであり、HMDを使用する際は椅子に座った状態を前提にするべきだ。開発者も使用者も安全への配慮を意識するようにしていくべきだろう。映像の不安定さはコンピュータ、HMDの高性能化で補えるが、人間にとって違和感がなくて酔いにくい映像の処理・演出を今後研究する必要がある。
ハードウェアに詳しくない人にも理解を得られるようにすべきだ。ハードウェアに詳しくない人が興味を持つためにはコンテンツの充実が欠かせない。かつて3D映像を特徴としていたニンテンドー3DSも似た事例があった。3D映像を強調するよりも、有名ゲームソフトなどのコンテンツを充実させたことがハードの売上げをけん引した。製品に詳しくない人から「自分には関係のないマニアックな製品」と思わせない工夫が必要である。
グラス側HMDのプライバシーの問題に関しては、カメラで映像を記録できないようする、グラス型HMDのアプリを厳しく審査して、プライバシーの審議が発生する恐れのあるアプリを規制するべきだ。また、車の運転中など、注意力が散漫になってはいけない状態での使用を規制すべきである。

9.終わりに

新しい技術には問題が付き物だが、それ以上に新しい可能性に満ちている。いままで小説やマンガでしか目にしたことのなんかった技術や現象がこれから現実でも活用されようとしている。現在はインターネットや生活の携帯の変化などによって人と人のつながりが薄れている時といわれている。HMDは人と人をより密接につなげられる技術である。これからさらにHMDの技術が発展し、一般の人々も恩恵を受けられるようになるように期待したい。

参考

「サマーレッスン」体験実録。「Project Morpheus」で話題沸騰の技術デモはいかにして生まれたのか。鉄拳チーム原田氏に根掘り葉掘り聞いてきた(4Gamer)

[E3 2015]西川善司の3DGE:網膜投射型デバイスを採用するHoloLens,試して分かったMR対応型HMDのすごさと課題(4Gamer)

グーグルグラスの販売中止に見る、今後のスマートグラスの展望

2023年からのフィードバック

文体について

筆者はこのレポートを書いてから一年から一年半後、つまり大学一年生のときにゲームライターになった。今でもやや見られる癖ではあるが、かっこ()を使いすぎであったり、修辞が二重になりすぎであり、出典や情報源を曖昧にしたまま話を進めすぎたりしている。とはいえ文体から感じられる雰囲気は当時(2015)も現在(2023)も大差ないことに我ながら驚く。そもそもこのレポートは何のために書かれたのかが曖昧なのだが、確かこのレポート内容を英語でプレゼンテーションした覚えがあるので、前段階として日本語でレポートを書いたということだろうか。国語の授業でこんなの出したら大目玉を食らいそうだ。筆者は文体の読み心地や文章の正しさの精度自体は今でもかなり低いと思っている。

内容について

2015年はメジャーなVR機器がそろった2016年、いわゆるVR元年の一年前であり、レポートも自身の具体的な体験よりも予測が中心だ。とはいえ当時から毎日4GamerとINSIDEを巡回するようなゲーム業界オタクだったので、勘所は抑えている(と我ながらにして思う)。レポート内容のうち予想通りだった点で目立つものは、VR/ARは大手企業のキラーコンテンツよりも個人やベンチャーの番狂わせが当たりやすい点である。VRゲームのセールスランキングなどに大手企業のコンテンツが入っている事例は少なく、VRに特化した小規模スタジオのゲームやサービスが当たりやすい(Beat SaberとかVRChatとかGorilla Tagとか)。一方、ARデバイスは2015年から2023年に至るまで一度も市場形成に至っていないため、市場やコンテンツの推測が外れている。特にプライバシーの問題は”ARデバイス”の個所を”スマートフォン”に置き換えてもほぼ同じことが言えてしまうので、これはナンセンスな指摘だった。

VRデバイスに関しては思っていたよりは遅いがまったく普及していないということはない。とはいえMetaのメタバースの展望の実現はなかなか厳しく、Metaがどれだけエンターテインメントに振り切れるかが勝負の分かれ目となるだろう。

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