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せめてもの日記 #01

11 / 11 

花瓶をもらった。自分の人生のなかでは大きな事件。ずぼら、がさつ、脱いだものを散らかす。花を飾るなんて余興から縁遠かった私がとうとう・・・!と心震わせた。さっそく地元の商店街の花屋で、飾るための花を買う。「弱くてひょろひょろしてるやつください」ーというのも理由がある。私は「どちらか」と言うまでもなくネガティブな人間なので、帰って花がビンビンに咲いていたらまぶしすぎて砂となり霧散しちゃうのだ。(のだ。)菊がきれいだったので買おうとすると店員に止められた。別に自分用なんだからいいじゃんね。それじゃあ、小さな白い花がたくさんついたかすみ草を買おうとするとまた止められた。買っていいものだけ置いてくれよ。強引にかすみ草をお願いし、渋々包んでもらった。かすみ草はバラとか目立つ花に添えるサブポジションらしいので、この花だけを活けるのは花屋の美学的にありえないのだろう。けれど、ひょろひょろ人間の私にはかすみ草がぴったりなので仕方がない。私がダレノガレ明美だったらバラを飾って、横にかすみ草を従わせるよ。「引き立てといて」つって。

家に帰り、花瓶にかすみ草を挿してみるとあまりぱっとしない。庭に咲いている葉っぱを足したらかっこよくなった。結局かすみ草ひとりで主役をはることはできなかったけれど、落ち着くべきところに落ち着いた感じがしてよかった。次はどこの花屋で買うかだけが問題に残る。

10 / 🏡

今週のドラえもんはブラックだった。のび太は指定した人物の顔面とその人能力をコピーできるひみつ道具を使って、宿題やその他雑務を切り抜けようとする。しかし、道具を乱用したことによって、顔面が定まらなくなる。(整形を繰り返した人間の末路みたい!こわ〜)目はしずかちゃん、鼻はジャイアン、口元はスネ夫、になったり流動的に誰かの顔面パーツへとコロコロ変わる。

たま子(のび太ママ)は「家の前に知らない子がウロウロしているのよ」と実の息子を認識できないでいる。

のび太もこんなんじゃ家に帰れないよと途方にくれ、夕日にそまった住宅街の道路まんなかで泣き崩れて終わる。

外面が変わった時に自身を証明する術を持たないのび太。かわいそうだ。じゃあ自分はどうやって証明できるのかと少し考えたけれど難しい。自分にはアイデンティティというものがないのかと同じく泣き崩れた。

11 / 🔎

右手の親指のつけねあたりにパソコンだこができてしまった。この野郎、とパソコンをにらんで見ると、パソコンもすれて色が変わっていた。お互いの肉体で削りあっていたようだ。

11 / 🆕

パソコンがパーソナルコンピューターの略であることを忘れがち。機械なのにパーソナルと人間味のある言葉が頭についているのがおかしいと思う。

そもそもコンピューターとは機織り機を使えるのことを指していたらしい。だからcomputerなんだ。

11.16

今年で通うのが5年目になる美容院に髪を切りに行った。担当の美容師さんは正直で思慮深く、カルチャーの話をするときは小声になるあたりが信用できる。最近面白かった話をお互いに話した。私は地元の喫茶店での老人の会話。お店の雰囲気はほこりくさいおばあちゃんちで、老人の集会所のような役割を持っている。店内に入ると必ずおばあちゃん(客)がいるので挨拶をして席に座る。おばあちゃん(店員)が「タイミングいいね!いま餅がやけたよ!」と頼んでいないのに七輪で焼いた磯辺餅を出してくれた。もちもち食べながら何を注文するか悩み、クリーム小倉あんみつに決める。そしてここからが本番で、おばあちゃん達の会話を盗み聞きするのが楽しい。「今日はポツンと一軒家あるんかね?」「あるはずだよ?」など、独特な会話が浮かんでは消え、浮かんでは消える。11月の半分も過ぎ、もうすぐ12月という話題になった。「もうおせちは食べ飽きたよ!!!」と叫ぶ声が聞こえる。もう食べ飽きちゃったのか。すごいな!年をとるたびに年月をすぎるスピードは早くなるというし、そのくらいの年齢にもなると、おせちを食べたのなんてこの前ぐらいに感じてしまうのかもしれない。感覚がもはや別次元だよね、と美容師さんと盛り上がる。「俺もこの前テレビで天皇の即位式見ててさあ、忘れられない発言があるんだよね」。熊本地震の際に訪れた天皇がくまモンを見て、熊本県知事にこう尋ねた。「くまモンさんは何人いらっしゃるの?」困った県知事は「その〜、子供の夢とか、思いとか、ありますので、そういったものはその〜、ないです。」その答えで納得したとは思えないが、天皇は微笑を浮かべ「そう、ご苦労様くまモンさん」とくまモンに声をかけた。子供のような質問をする天皇とガチレスする県知事が対照的でおかしい。にしても、ご苦労様には色々な想像が広げられる。バイトに声をかけるオーナーのような気持ちで言った「ごくろうさま」なのか、もしかすると天皇はくまモンに対して仲間意識が芽生えていたのかもしれない。くまモンは熊本のマスコットキャラクターで、天皇も象徴の存在という点については共通するものがある。「わたしたちも何人か代わりの者がいればいいのに」と思ったかもしれない。偶像という足場の上に立ち続けるのは、なんと疲れることだろう。それを理解できるのは、当の本人だけ。やんなっちゃうわね、くまモンさん。とかとか。

11 / 👯‍♀️
Kinki Kidsのふたりは兄弟ではないことを知った。ええええええ!?なんですかその兄弟ノリは?びっくりして「知っているか、堂本兄弟は実はな・・・」と周りに話してみると「常識だよ」と返された。兄弟じゃないのに兄弟と名乗る常識があるもんか。いや、思い返すと私もそう詐称したことがある。中学生の時に、仲がいい友達と二人でプリクラを撮ると「双子ちゃん♡」「前世は双子🍒」と書かれた。よくわからんけど、私と精神的なつながりを感じてくれているのか!と嬉しかった記憶がある。仲の良さを「兄弟♡」「双子♡」と表現するノリはどこから来たのだろう。「前世は双子」で検索してみると美輪明宏のスピリチュアル記事まとめがヒットした。そういえば小学生時代は、いまよりもっとスピがテレビで扱われていた気がする。きっと美輪明宏がゲストの二人に対して「あなたたちが強い絆で結ばれているのは、前世で双子🍒だったからなのです」とか言い、それを見た小学生女子たちが「美しい関係は前世から由来するものなんだ」と憧れたのだろう。プリクラ機にバリエーション豊かなさくらんぼスタンプが搭載され、こぞって前世の関係性を写真の上にネオンカラーで書く。前世のふたりが見たらちょっと引くかもしれないが、それはそれでかっこいい。しかし、美輪明宏はそこまで影響力の強い人間だったか、


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