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『トヨタイムズ』で「ジャーナリスト』をするのに必要な唯一のこと(そしてそれは無理では?)

 トヨタのオウンドメディア『トヨタイムズ』に元テレビ朝日アナウンサーの富川悠太氏がジョインして「ジャーナリスト」として活動すると発表されたことで、メディア界隈をざわつかせた。

 個人的なことを言えば、自分のやっていることが「ジャーナリズム」的になることが結果的にあることはあっても、自分自身が「ジャーナリスト」だと名乗る気はないし、新聞・テレビなどの「公正・中立」であるべきだという「ジャーナリズム」論には、「いや、思いっきりバイアスかかってますよね?」とツッコミたくなることが多々あるから、宮川氏が「ジャーナリスト」だと称するなら、「そうなんだー」以上でも以下でもない。
 とはいえ、例えば徳力基彦氏が「メディア以外の企業所属のジャーナリストという新しい形を体現する可能性もあるのではないかとも感じています」と述べているけれど、自分の目には「予算たくさんかけられるオウンドメディアがネームバリューのあるタレントによってブランド力を高めていく」という以上でも以下でもないとしか思えないんですよね……。

 確かに、同業他社トップの対談とか、労使交渉のコンテンツに挑戦したり、一見すると経営陣に都合の悪そうな内容の記事・動画を上げているあたり、会社としての透明性を上げる努力をしているな、と感じることができるし、そこにメディア出身者が入ることにより、コンテンツとメディアの信頼性を担保できるという効果は期待できるのかもしれない。

 とはいえ、やはり『トヨタイムズ』に元テレビ局アナウンサーがジョインして「ジャーナリスト」として活動するためには、個人の資質に関係なく、ある一つの条件が欠けているように思える。

 それは『トヨタイムズ』の編集権が、果たして「編集部」にあるのか判然としないからだ。香川照之氏が「編集長」となっているけれど、例えばトヨタに不利益な記事を配信したいとして、どこからか圧力があった際に、それを突っぱねることができるのか、と言えばできないだろう。
 富川氏が「リコールの現場を取材した」と望んで企画を出したとして、それが通るとは思えない。まぁ、ある程度の裁量が与えられて(例えばYouTubeに動画を投稿する権限とか)、出すような蛮勇ができるのであれば別だけど、そういう一見会社の不利益になるようなコンテンツを出した人を「編集部として守ることができるの?」といえば、そういう体制にはなってないように感じざるをえない。

 簡単に言えば、『トヨタイムズ』はトヨタという会社やブランドに対して、「透明性」を上げることに寄与しているだろうし、その一環として「ジャーナリスト」の肩書きがあった方がいいに決まっている。一方で『トヨタイムズ』というメディアの「透明性」はサイトを見る限りに置いてはブラックボックスで隠されている。このズレを埋めるような活動を、果たして富川氏が「やる気」があるのかどうか。このあたりが現時点では見えないが、例えば販社との関係とか、短期派遣の労働者の実態とか、そういう話に踏み込むようなことはないんじゃないかなぁと思うし、トヨタで働く人に質するメディアになれるかというと疑問符がつくというのが正直な感想になる。

 まぁ、富川氏個人に限らず、やりたい時(課題意識を感じた時)に「ジャーナリスト」と呼べる活動をすればいいのでは、と思うので、ご活躍をお祈りする以上でも以下でもないのだけど。ただまぁ、「ジャーナリズム」についてあーだこーだ言っていることに対して、醒めた気持ちにさせられたのでババッと記しておいた。

 連休中ですが、作業やらなきゃなのでこの辺で!

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