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読者の新陳代謝を図らないとメディアもライター・編集も死ぬというお話

 ここ最近、お仕事はコンスタントに出来ているのだけど、世の中の事象やコンテンツに「ピンとこない」ことが多くて、「なんとなくスランプ気味だな~」と感じたこともあり、日帰りで鎌倉に行って稲村ヶ崎で海をぼーっと眺めたり極楽寺のあたりを散歩したりしてリフレッシュ。政府が「ワーケーション」なんてことを言い出していて、それ以前から実際に旅先でお仕事をすることがしばしばだったり、ビジネスホテルだと確かに作業が捗るというのはあるのだけど、タスクから離れて五感で自然や空気を感じる時間がだいじだと改めて思わされた。

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 さて。ここのところ『ガジェット通信』ではWebでの漫画紹介記事を意識して出しているのですけれど。「マンガがなんでニュースになるの?」という視点に関しては前に記したので、興味がある方はそちらを参照して頂きたいな~と思いつつ、最近のメディアや書き手が陥りがちになっていると思うことについてつらつらメモしておきたい。

 自分は『Yahoo!ニュース個人』でも記事を出していて、アクセス数だけでなく年齢属性なども見ることが出来るのですが、政治関連の記事だと40代以上、エンタメ関連だと30代がボリュームゾーンで、20代以下の若い人の割合が低いというのが実情だったりする。これはYahooというプラットフォームの特性でもあるのだけど、「若い人に読まれていない」ということに対しては書き手として相当な危機感を持っていたりするんですよね。

 同じようなことは『Yahoo!ニュース』や『ガジェ通』に限らず他のメディアでも起きていて、それって中の人が「懐古厨になっているからでない?」という疑問をだいぶ前から感じていた。

 例えばアニメ関連だと、スタジオジブリが作品画像を公開したということが話題になった。当然ながらもともとの知名度が高いし、そのことをストレートニュースとして出すことに意味もあるし、アクセスもある程度見込める。だから「出すべき」という判断それ自体は間違っていない。

 とはいえ、最近公開された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、京都アニメーションの事件もあって、完成したことそれ自体が奇跡的で、やはりニュースとして取り上げられてはいるけれど、「作品のファンの外に響いているか」と言われると正直なところ自信が持てない。正直に言えば問答無用で「いいから観ろ!」となるし、そういう記事もたくさん目にするけれど、将来的に見てジブリ作品に匹敵するだけの知名度を得られるかといえば、可能性は高くないだろうと思う。それが悔しいんですよね。

 どうしてそういうことが起こるかと言えば、例えば『ガンダム』や『エヴァンゲリオン』、『セーラームーン』のような読者の記憶に残る名作とされるものだったり、大御所とみなされるようになったコンテンツメーカーの記事の方が、新しく価値を付加していくことよりずっと「ラク」に数字が取れるから。グッズなども出て相対的にプレスリリースが多く、ファン層が確実に「読める」。必然的に各メディアの出す記事も多くなる。

 とはいえ。それで10~20代の人が「視聴」あるいは「購入」という行動につながっているかといえば、何ともいえないところがある。その世代は物心ついた時にはインターネットが既にあって、YouTubeやニコニコ動画で音楽やアニメに触れているし、漫画もpixivなどで無料で見るのが普通になっている。Twitterで漫画を公開している作者さんと読者との交流するというのもリプを書いて送るだけで出来る。そういった環境で育った世代の感覚は、30代以上とは確実に違うんですよね。

 そんな中で、メディアが過去の作品や「知名度」でピックアップするコンテンツを選んでいると、どんどん読者の高齢化が進んでいくし、飽きられる速度も増していく。「ネット発」というコンテンツ形態だってもはや「古い」と言えるし、「売れている」ものばかりをピックアップしていて、今出ている作品や作者さんにも目を向けていかないと、確実にやせ細って死んでいく未来しかないと思う。

 これはライター・編集という立場でも同じで、自分の「好き」をアップデートし続けないと、お仕事ができなくなる時期が確実にやってくる。そのためには、とにかく沢山のコンテンツに触れていくことを地道に続けるほかない。ここで、過去の「好き」を否定することではなく、今の「好き」と繋げていく感覚が大事だろう。そうすると作品の良さを多面的に説明することができるようになっていくし、何より出せるコンテンツの「幅」が広がる。

 そんなわけで、今年のはじめにお仕事に復帰してからは、漫画をKindleで購入することが増えたし、NetflixやAmazon Prime Videoで今まで観たことのないアニメや映画を観る時間が格段に増えた。ぜんぶ自腹だけど、自分で「お金を出す」という体験も含めてファンに寄り添うことができるようになる気がする。まぁ、あくまでこれは私個人の感覚ですが。

 とにかく、現在のメディア環境では「売れている」「バズっている」「知名度がある」というコンテンツが読まれる傾向があるし、それを出す意味もあるし収益構造としても逆らう理由がない。とはいえ、そこばかり追っているとあっという間に時代に置いていかれて死ぬことになるので、自分の「好き」をどんどん広げましょう、というお話でした。 


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