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【編集部コラム】その引用は、リスペクトか、ウォッシュか?

この記事は、ChatGPTを活用しながら、遠藤光太が書いています。

「創作物」が爆発的に生み出される時代に

もし私が他の人々よりも遠くを見ることができたなら、それは巨人たちの肩に立っていたからだ。

アイザック・ニュートンは、ニュートン力学の確立や微積分法の発見を実現した。この名言は、自分の成果が先人たちの研究や知識に基づいていることを認め、リスペクトを表している言葉である。「引用」は、このように過去から未来へ叡智をつなげるために、重要な役割を持っている。

引用には、法に定められたルールがある。例えば、以下の内容はその一部だ。

「公正な慣行に合致すること」
「引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる」

文化庁ウェブサイト「著作物が自由に使える場合」より引用
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu_jiyu.html

ただし、最近では引用や著作物をめぐる環境が大きく変化してきている。YouTubeやTikTokの切り抜き動画を、私たちは常日頃から目にしていて、「それらが著作権を侵害していないかどうか」をいつも理解した上で利用している人は少ないかもしれない。

Instagramでは、国内外のさまざまな楽曲をリールにつけて利用できる。TikTokも同様だ。日本レコード大賞の受賞曲を見れば、その影響力の大きさがわかる。

AIが作った曲の著作権はどにあるのか?VTuberが歌った曲の著作権は?Twitterで流れてくる、海外記事の翻訳ツイートは?

新しい「創作物」(カギカッコ付きだ)がかつてないスピードで生み出され、インターネットで共有される時代に、引用について考えることは、実に難しい。

その引用は、リスペクトか、ウォッシュか?

著作権法を遵守することは前提であるとして、その上で引用を考えるべき判断基準として「それはリスペクトか、ウォッシュか?」を提案したい。

リスペクトは、明確に線引きするのは難しいものの、理解されやすい概念だろう。引用元の著作物に対して、リスペクトを持って引用しているかどうか。

ウォッシュは、理解されにくい概念かもしれないので、詳しく解説したい。

例えば、「グリーンウォッシュ」といった使い方がなされる。グリーンウォッシュとは、企業が環境に配慮しているかのように見せかける行為を指す。また、「SDGsウォッシュ」とは、企業がSDGsに取り組んでいるかのように見せかけて、その実、自社の利益のためにしている行為を指す。

私が以前執筆した記事では、斎藤幸平さんが「スポーツウォッシュ」について語っている。

「ワールドカップに水を差すな」はスポーツウォッシュ。観戦したい人、ファンにできること(ハフポスト日本版)

スポーツウォッシュとは、一部の国や企業がスポーツイベントのスポンサーやホストとして参加することで、自らの人権侵害や環境問題などの悪評を目立たなくし、イメージを向上させようとする行為である。

これらと同様に、引用における「ウォッシュ」は、オリジナリティの喪失や誤った情報の拡散を引き起こすことが問題だ。具体的には、以下のような問題が挙げられる。

  • 引用の過剰な使用、オリジナリティの損失
    引用が多すぎると、自分の意見や考えが薄れる、あるいはない状態となる。

  • 誤った情報の拡散
    引用元が正確でない場合、不正確な情報を広めることになりかねない。

  • オリジナル(引用元)の毀損
    引用に依存しすぎることで、「公正な慣行に合致」せず、引用元の著作物を毀損してしまう。

これらの問題を避けるために、適切な引用の仕方や情報源の選択が重要であり、自身の創作物のオリジナリティを保つことが求められる。

例えば、ライターの仲間が執筆したとあるインタビュー記事は、Voicyで全文を読み上げられていた。しかも、インタビュー先の名前がずっと間違えられていた。これは明らかにウォッシュと言えるだろう。

あるいは、書籍の内容について、書いてあることも書いていないこともあたかも著者の主張かのように「引用」して話すのは、私にはウォッシュに見える。

このように「リスペクトか、ウォッシュか?」を軸として、引用を考えることができる。

これからの引用

引用は、知識の共有や意見の裏付け、さらに言えば、人類の叡智の継承に欠かせない。ただし、「創作物」が爆発的に増加している昨今の状況を考えると、リスペクトとウォッシュのバランスを皆が適切に見極めるのは難しいと言える。

TikTokで動画に使われた楽曲が拡散され、人々の耳に届き、アーティストがその価値を高める現象は日常的に起きていて、無視できない。それは必ずしも悪いことではなく、おもしろい状況にも見える。

ただ、それでも引用におけるウォッシュについて、私たちは考えなくてはならない。それはオリジナルである引用元を道具的に、リスペクトなく使用してしまうことを指す。法に則った正確な引用やクレジット表記が求められるのはもちろんのこと、「オリジナルを毀損していないか」と常に考えておく必要がある。

これからの時代では、「著作権」や「オリジナリティ」、そして「引用」の概念が大きく揺さぶられるだろう。

「リスペクトとウォッシュの狭間」は、一直線ではなく入り組んだ様相を呈し始めて、そのバランスを見極めるには、文脈を読み解くセンスが要る。

そのセンスは、(今のところは)人間にしかわからない。


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