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日本という、このすばらしい国 その5

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

縄文社会が過飽和して相転移した

1万年以上も、争いごとのない平和で穏やかな時代が続いた縄文時代も、晩期(紀元前2,900年~)には、波乱の時代を迎えます。人口減少と中国大陸からの大量難民(渡来人)の発生です。ちなみに縄文時代の人口推移は、国立民族学博物館の小山修三教授のシミュレーションデータや、鬼頭宏氏の(「明治以前の地域人口」上智経済論集第41巻1/2号)によれば、縄文草創期は不明ですが、縄文早期が約20,000人、縄文前期が約106,000人、縄文中期が約261,000人、縄文後期が約160,000人、縄文晩期が76,000人と推移したようです。縄文中期から縄文晩期、さらには縄文後期から縄文晩期にかけて、なぜこれほど人口が減少したのか、その原因は定かではありません。

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縄文時代の代表的な遺跡の一つである三内丸山遺跡は、紀元前3500年から紀元前2000年、つまり今から5,500年前から4000年前までの、およそ1,500年もの長期間、定住生活が営まれてきた、我が国でも最大級の縄文遺跡です。世界4大文明の隆盛の時期より、さらに1,000年以上さかのぼった頃の時代です。発掘された貝塚をみれば、貝塚の地層は年代ごとに堆積しています。そしてその貝塚からは、栗、ぎんなん、貝類、川魚、海魚、沢ガニ、エビなどの食物残渣(ざんさ)が発掘されています。

考えてみれば、当時の縄文人が食べていたものは、料理方法がわずかに異なるだけで、現代人の我々が食べているものと少しも変わらないようです。その三内丸山遺跡での人口推移は、21,500年間を通じて数百人規模(最大で500人規模)でしかなかったようです。ちなみに三内丸山遺跡は、発掘対象地域に限っても約36km2の広さがあります。約36km2の広さといえば、東京都の杉並区(約34km2)の広さに、ほぼ相当します。東京都の杉並区の広さに、わずか数百人規模の縄文人が1,500年間も代々住み続けたのです。そして、その間に増減した人口が数百人規模なのです。1,500年の歴史を持つ一定の地域で人口推移が数百人規模ということは、人間の移住が極端に少なかったということではないでしょうか? この事実は、遺伝子学的にみれば近親種の交配が何世代も続くと生殖能力が極端に低下し、奇形児の出産率も高くなるという説を、現実味のある仮説としています。我が国の風習として従兄弟同士の結婚は、決して珍しくありません。隣国の韓国では、同姓結婚は同姓不婚として厳しく制限されています。姉と結婚した男性が、妹と再婚することでさえ忌み嫌われます。三内丸山遺跡に限らず、我が国の縄文遺跡では近親結婚に近いカタチの歴史があったのかもしれません。その結果、生殖能力が減衰して少子化が進んだ。もしくは奇形児が多く出産されたために赤ちゃんの死産率が高くなったのかもしれません。縄文時代の代表的な遺物である土偶の顔の多くは、見ようによっては正常に生まれてきた人間の顔かたちではなく、なんらかの障害を持って生まれてきた人間の顔にも見えます。

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出典:三内丸山遺跡ホームページ(写真左)、山梨県 釈迦堂ホームページ(写真右)

本稿のテーマである「過飽和社会」は、現代に限らず、いつの時代にも必ず発生する現象です。物事の変化は、初期の頃はダイナミックに多様に変化し続けますが、新たな物事が追加されることなく、同じような物事が繰り返されると、飽和、そして過飽和の状態になり、やがて崩壊するか、二倍体に相転移すると言われています。私は遺伝子学の専門家ではないので断定はできませんが、縄文時代の人口推移をみれば、人口の急激な減少の一つの原因が、近親結婚に近い同族結婚による少子化ではなかったのでしょうか?(つづく)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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