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言霊量子論 その7

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

量子場脳理論、その3

今回の言霊量子論は、前回に引き続いて、プロ棋士の頭の中で「記憶が固定化されるまでの素過程」を、もう少し詳しく述べてみたいと思います。 

将棋の世界では将棋が強くなるための当たり前の修練として、①過去の棋譜を並べて手筋の変化を覚えること、②日々、将棋会館で行われている自らが対戦した実戦譜をはじめ、他のプロ棋士同士の実戦譜を並べて手筋の変化を覚えること、③詰将棋を解くことの3つが挙げられるそうです。

この3つの修練は、プロ棋士なら誰でも当たり前のこととして、日々記憶として取り込んでいます。もちろん前回も言及しましたが、過去に蓄積された50万局の棋譜をはじめ、日々、更新される最新の棋譜を記憶に取り込んだからといって、それらの棋譜の一手一手をすべて記憶として覚えているかというと覚えてはいません。記憶として意識したにすぎません。つまり「うろ覚えだけど記憶にある」という感覚ともいえます。

実は、この「うろ覚えだけど記憶にある」 という感覚こそが人間に不可欠な機能なのです。 人間は、本人の自覚・無自覚、意識・無意識にかかわらず、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感で捉えた情報エネルギー(電磁波・音波等)をすべて脳内に取り込んでしまいます。前述した棋譜も、そのうちの情報エネルギーの一部です。そして、脳内に取り込まれた情報エネルギーは、記憶としていったん蓄積されますが、時間の経過と共に減衰していきます。消滅はしませんが、減衰し続けて、やがて感知できなくなるほどの最低エネルギーとして記憶の奥底に畳み込まれます。

人間は辛いことや、悲しい出来事は、記憶の奥底に畳み込み、反対に楽しかったことや、励まされたことは記憶の表層に留め置いて、明日を生きていくエネルギーに変えることができます。一つの状態に無限量の「記憶」を重ね合わせて格納できる、人間系の記憶システムならではの特質です。意識した記憶は、記憶想起エネルギーを脳内に発生させることにより、記憶の表層に浮かび上がらせることができるのです。 

ここでプロ棋士の頭の中の記憶に、再び話を戻します。プロの棋士たちは、全員が日本将棋連盟から提供される同一の棋譜データベースを等しく閲覧できます。つまり閲覧する棋譜は同じでも、意識して想起する棋譜は百人百様の不可思議・不可得・不可知の事象なのです。たとえばプロを目指していたある子供が、たまたま全国大会で振り飛車戦法で優勝したという事実を記憶した。やがてこの子供は奨励会を経てプロ棋士になった。この間、振り飛車戦法を得意として想起し続けられた記憶は、やがて脳内のある領域に固定化され、条件反射的に記憶を使いこなすことができるようになる場合があります。いわゆる、手が天から降りてくるという「閃きの一手」を体得できるようになるケースです。そうすると、まわりの評価の言葉が変わります。

まわりの評価の言葉が変われば、その言葉が意識を変え、意識が変われば態度が変わり、態度が変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わり、習慣が変われば人格が変わり、人格が変われば運命が変わり、運命が変われば人生が変わる、という連鎖反応が起こる。このことは、天津神としての言霊があり、そこから「こころ」が生まれてくるという言霊学における時処位の三置(道・みち) と相通じるものではないだろうか?「唯脳論」 を著した養老孟司氏は、「人間の記憶は情動によって強化される」と述べています。さて、次回は、いよいよ量子場脳理論の最後の章として「中今の内に過去のすべてが記憶されている。中今は過去のすべてを包蔵し、過去は中今を拠点として始まる( 言霊精義)」 という、「中今」について言及してみたいと思います。(つづく)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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