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ノンケミカルの藍染めにこだわる理由

本藍(すくもを木灰の灰汁で建てる)で、化学薬品を使うと格段に安定します。
化学薬品を使わないと、多様な自然環境の要因に左右されて途端に難しくなります。
その理由は、藍建てが発酵であり、その際活躍する微生物/菌が数十種類にも及ぶからです。
納豆、醤油、酒などの発酵では、単一と言っていい程単純なので扱い易いのです。
せっかく建った(染められる状態になること)藍が一夜にして駄目になることもあります。
頑なに化学薬品を拒否するのには、ポリシーがあるのです。

ジーンズでお馴染みの合成藍は、ドイツで誕生し、日本では、三井鉱山三池染料工業所(現三井化学大牟田工業)で大正初期に開始され、昭和初期に生産工場が建設されました。
わたしの出身地が、この三井鉱山の炭鉱住宅でした。戦後の高度成長期で、水俣同様に排水垂れ流し、排煙を24時間出していて、大牟田の川は真っ黒の中に原色が混じってました。街全体が常に異様な臭いがしていました。そんな中で幼児期を過ごしたので、肺炎にも罹り、未だに気管支が弱いのです。
合成藍は、天然植物藍とまったく同じ化学構造なので、天然植物藍は、ドイツでも日本でもあっという間に駆逐されていってしまいました。

それでも敢えて天然植物藍で染めようというのに、何故また化学薬品を使わないといけないのでしょうか。

実際に化学薬品を使って建てた藍と天然植物藍だけで建てた本藍とは、全くと言っていいほど違うものなのです。
先ず、化学薬品を使った藍瓶は臭いがよくないです。糸染めしていても気分が悪くなる程です。当然、それで織っていても臭いは消えません。布になっても、一見同じような藍色かもしれませんが、実は、まったく違います。
その微妙な違い、しかし、この格段の違いにこだわるひとだけが、この本藍を求めるのだと思います。
へたすると3000~4000円の作務衣上下という商品をネット上で見かけたりしますが、わたしたちの商品は桁が一桁違います。だからビジネスとしては厳しいです。
しかし、本藍を身につけるということは、数千年という歴史を持った天然植物藍を身につけることであり、自然の側に居ることなのです。ホンモノ志向の自然派の方にだけ着ていただければ、それでいいと確信してます。
だから、今日も神棚に手を合わせて、祈るような気持ちで藍に向き合ってます。


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