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2/18 パリ到着 ボロい空港とか無駄なかっこよさ

シンガポールから14時間、Wifiがないという想定外の状態で、長い長い飛行からやっと到着。途中で見たPlan 75は現代日本では「さもありなん」という感じであった。

長い長いフライトのせいで、着陸直前、息子は隣のシドニーにすむベトナム人の女の子と仲良くなる。彼女は旅が好きで今回はフランスにショッピングに来たらしく、我々との懐具合の差を見せつけられる。タクシー乗り場で分かれるまで、英語で話しながらインスタグラムのアカウントを使って連絡先を交換、このSNSがフォロワー数ばかりが注目される日本とは異なり、普段自分がやっていることの名刺代わりになるということに気づいた。
新しい空港で前回の旅の際に迷ったベトナムの女の子は、私達が迷わないように一緒に荷物の受け取りとタクシー乗り場まで行こうと親切に申し出てくれる。とはいえ、フランスに到着すれば言語的に自由になるので、旅の主導権がこちらに変わる。私がフランス語がわかることに気づくと、英語ペラペラのベトナム人の彼女は高校でフランス語を習っていたとのことで、たどたどしいフランス語で私に話しかけてきた。私の英語と同じくらい下手くそなフランス語がとてもかわいらしい。彼女はマレ地区、我々はモンマルトルへとタクシーで向かう。

10年以上の時を経て、ギラギラのシンガポールの空港を経由して到着したシャルル・ド・ゴールは、古臭くさびれていてちっともワクワクしない。あらゆる箇所が老朽化していて、パスポートコントロールのハイテク化も全くハイテクに見えない。しかし、入国の最後の段階でブースの中にいた女性のポリスが、ベリーショートにピアス、机に腰掛け足を組み、同僚と喋りつつついでに仕事をしていて「お、フランスに来た」という懐かしい印象を受ける。息子が一言「何この無駄にカッコいいひとたち!」まさにそう、思い出した。パリという街は懐具合や美醜、能力に関係なく、単に自転車をこいでいたり、物乞いをしていたり、労働をしている一人ひとりが個性的で堂々としていて、全員が映画に出てきそうな感じで「無駄にカッコいい」のである。

私はこの無駄口をたたきながら適当に仕事をして客が来たらそれに応えるという彼らの「スタンス」が好きなのだが、日本はやっすい給料で働かされているのにこの感じ本当にないよな……としみじみ思う。加えて、大人数をさばくための行列の仕切りに人が並んでいない場合の彼ら(従業員たちがむしろ率先)の行動が、ほぼ100%仕切りをくぐるというもので、これ日本だったら、アホな仕切りに従って迷路のようにくるくる移動するのが普通だろうと思っておかしくなった。フランスでおなじみの信号よりも私が上という「スタンス」である。彼らが、「無駄にカッコいい」のはきっとこの「世界のしょうもないことよりは自分が上」という意識が普通にあるからだろう。

さて、その後乗ったタクシーはイスラム系の運転手で、我々が車内でSIMカードの入れ替えに奮闘する中、高速運転しながら、片手でひょいひょいSNSで友人とチャットしていて前をロクにみていない。お気に入りの音楽をかけながら、行き先はgoogleマップにまかせ運転しているのだが、そんないい加減な働きの中あっという間にモンマルトルに到着した。空港までは一律料金で決まっているので57ユーロ。カードで支払いできるか?と聞くと、「できるが機械の電池がないので現金で」と機械を見せながらの返事。この「なんじゃ、その理由?」みたいなのを無駄にカッコいいしぐさで「しょうがないからあんた受け入れるしかないね」とやるのも、この国の「スタンス」である。

料金支払い後、荷物をおろしながら、「WIFIも使えず電話もつながらない…」とそろそろ途方にくれないといけないかもと思い始めたところに、友人がやってくる。数メートル先を指さし、「あんた番地間違ってるよ、ちゃんと見ろ」と一言そえてからのメルシーがおもしろい。アパルトマンの上からTaxのi到着音に聞き耳をたてていたのであろう。いつも思うが、こちらから連絡してもなかなか来ないくせに、うまいタイミングで主体的になんとかすることにかけては彼らは我々日本人よりはるかに有能である。ともかく自分が働きかける国フランス。ボロくて汚いがやはり私の好きな国である。


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