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勉強会:コンテンツとアクティビティについて考える勉強会

2020年5月30日に、学生メンバーを中心とした勉強会を行いました。今回と次回の勉強会は、研究会に参加している学生が昨年に行った卒業論文に関連するテーマで議論を進める予定です。今回も元国土交通省公園課課長の町田誠様や大和リース株式会社の方々にもご参加いただき、本研究会で扱っている「パークコンテンツ」と公園内の「アクティビティ」に着目して議論しました。

勉強会に向けて

勉強会に向けて、学生メンバーは以下の内容で予習を行いました。
1.プレイスメイキングにおける評価項目を知るため、以下の文献に目を通す。
https://sotonoba.place/placediagram
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/57/0/57_0_H19/_article/-char/ja/
2.可能ならば訪れたことのある公園で、具体的な公園を1つ決める。規模は都市公園に限定。
参考文献のプレイスメイキングの評価を参考に、その中に含まれると考えられるコンテンツとそれによって誘発されるアクティビティを整理し、「◯◯できる△△がある。」といった形にまとめる。
 ①バスケのできるゴールがある。
 ②夜でも安心できる、遅くまでやってるカフェがある。
 ③イベントを開催できる芝生がある。
 ④子供たちが遊べるキッズスペースがある。など
コンテンツは、実際にあるものではなく、立地や周辺環境でも大丈夫です。アクティビティに関しても、②のような心理的効果など、実際に生まれる行動ではなくても可。
3.その公園について整理したのち、挙げた「コンテンツ」が公園に与える効果を考え、整理する。(上記の例を用いると、朝から夜まで賑わう、親子連れでも楽しめる、など)

勉強会の流れ

勉強会は、以下の流れで行いました。
 ①勉強会担当学生2名から卒論の概要説明と予習内容の説明
 ②四人ほどのチームに分かれ、予習内容の共有
 ③各班でのアイデアと議論内容をまとめる
 ④各班毎にまとめを発表し、全体で議論

プレイスメイキングについて

もともとプレイスメイキングという考え方は学術から派生したものではないため明確な定義はなく、実際に公園を計画・設計する際の実践的な概念です。その中に、「The Power of 10」という考え方があります。これは、「10以上の居場所がある」、「10以上のやることがある」といった条件を満たす場所は良いパブリックスペースと言える、といった1つの判断基準です。前者は「10以上のコンテンツ」、後者は「10以上のアクティビティ」と捉えることができます。つまり、例えばカフェを置く構想を立てたとしても、「置けばいい」ということではなく誰がどのように利用するのか、「コンテンツ」と「アクティビティ」の両面から考える必要がある、ということです。

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プレイスダイアグラム(https://sotonoba.place/placediagramより引用)

各班での議論

学生が予習で調べてきた公園は、以下の通りです。

1班:羽根木公園(東京都世田谷区)
   南池袋公園(東京都豊島区)
   天神中央公園(福岡県福岡市)
2班:上野公園(東京都台東区)
   駒沢公園(東京都世田谷区)
3班:葛西臨海公園(東京都江戸川区)
   靱公園(大阪府大阪市)
   Mission Dolores Park(アメリカ/カリフォルニア州)
   静安公園(中国 /上海市)
4班:境南ふれあい広場公園(東京都武蔵野市)
   東板橋公園(東京都板橋区)
   川名公園(愛知県名古屋市)

これらの公園に関して、「コンテンツ」と「アクティビティ」、それらが公園に与える影響を整理してきて、発表、議論を班毎に行いました。多くの種類の公園が挙がり、いろいろな視点からのコンテンツとアクティビティを共有し合うことができました。

全体での議論

それぞれの班でのまとめを全員で共有し、全体議論を行いました。「コンテンツ」と「アクティビティ」の対応、日常と非日常の関係など、公園を考える上で様々な側面が挙げられました。今回は都市公園に的を絞って議論したため、多くの公園が「名だたる公園」でした。民間施設の入ってる公園も話題に上がることが多かったです。民間施設の入った公園、名だたる公園は、確かに魅力的に感じますが、「有名ではないが魅力的な公園」「民間施設が入っていなくても魅力的な公園」「民間施設が入っているけれどそれとは関係なく魅力的な公園」もたくさんあるはずです。これらに焦点を当て、どのような要素や仕組みが公園を魅力的にしているのか、調べてみると新たな発見があるかもしれません。
また、これまではアクティビティが多様な公園は良い空間である、といった前提のもと議論を進めてきました。しかし、公園のキャパシティや利用対象者を明確にした公園ではアクティビティの数は多くないものの心地よい空間が生まれると考えられ、前提の「多様なアクティビティ」が良い空間に結びつかないこともあります。良い公園とはどう定義されるべきなのか、議論を重ねる余地はまだまだありそうです。

日常と非日常

議論にてあがった、日常と非日常の関係は非常に面白く重要な視点であると考えられます。公園内のアクティビティは「日常的なアクティビティ」と「非日常的なアクティビティ」に分けられます。

日常的なアクティビティ:常設のゴールを用いてバスケをする、ベンチに座って読書するなど
非日常的なアクティビティ:ストリートのパフォーマンスやお祭り、マーケットの開催など

日常利用でも非日常利用でも公園内のアクティビティということには変わりはありませんが、公園内の雰囲気は大きく変わります。非日常的な利用は特に大きな公園で多くみられますが、現在のコロナ禍では日常利用が増加しており、それによる公園の利用価値というものも見直されているように感じます。非日常的な利用も可能にしつつ、いかにその中に日常的な利用を織り込むか、織り込むためにはどのようなコンテンツが必要なのか、考える必要があると思います。

目的的と非目的的

次に、議論にてあがった目的的な公園か非目的的な公園か、という視点についてです。

目的的な公園:公園内でのアクティビティを強く想定してデザインされた公園のこと
非目的的な公園:「とりあえずあの公園に行くか」「この公園、散歩がてらに寄ってみるか」といった具合に利用できる公園のこと

議論には「名だたる公園」が挙がることが多く、目的をもって誘発される特殊なアクティビティに目が行きがちでした。しかし、これは他の多様なアクティビティを制限してしまう可能性もあります。もちろん利用目的が明確な公園も魅力的ですが、これからは目的がなくても、多様なアクティビティが生まれる公園の価値が高まるのではないでしょうか。周辺住民と話し合ってデザインをすること、また、目的的な利用だけに捕われない寛容さを創出することも重要な視点であると考えられます。

まとめ

概念ダイアグラム_アートボード 1

これは本勉強会の議論を元に山崎嵩拓先生に検討いただいたもので、「良い公園とは」を考える上で、アクテビティ視点から例として3つの軸を設定したダイアグラムです。
各指標の2頂点はどちらが良いのか断言できるものではなく、各公園の規模や周辺状況から戦略的に位置付けることも必要だと考えています。
一般に道路や河川といったインフラに比べてもその便益効果が測りづらいと言われている公園ですが(道路だと交通、河川だと治水といった明確な評価対象が存在するためと考えられる)、こういったアクテビティに着目した指標を設定することは、公園の質を考えていく1つの手法となるのではないでしょうか。

私は今回の勉強会に本研究会で扱っている「パークコンテンツとは何か」について考えることを頭の隅に置いて今回の議論に参加しました。今回の議論で「パークコンテンツとは何か」の一律な答えはないのだと実感しました。実際の土地や地域、公園のニーズを丁寧に汲み取り、それぞれのパークコンテンツを考えられるよう、設計できるよう精進します。
また、みんなと意見を出し合うことで様々な物差し、目線があることを実感し、自分が今まで考えていたことは本当に一部のことであると強く感じました。今後も定期的な勉強会を続け、勉強をしていきたいと思います。

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こちらは、勉強会の様子です!

(文責:竹中大貴)