見出し画像

勉強会:パークコンテンツとアクティビティについて考える勉強会 2

2020年7月11日に学生が中心となって実施した、パークコンテンツとアクティビティの要素について理解を深める勉強会のご報告です。

勉強会の趣旨

今回の勉強会は後期に向けて、「パークコンテンツ」にはいったいどのようなものがあるのか、また「アクティビティ」とはどのような関係にあるのか、各メンバーが解釈をもつことを目的としました。5月30日にも同様の趣旨の勉強会があり、その続きとして実施しました。(詳しくは以下noteをご覧ください)

学生には、事前準備の参考文献としてとして「都市公園のストック効果向上に向けた手引き」(国土交通省,平成28年)を読んでもらいました。この文書では、公園が様々な効果が整理されているが、その効果をもたらすのは様々な特徴的なコンテンツから構成されたことによって多様なアクティビティ(効果)を誘発しているということをを事例を通して確認することができます。

勉強会の流れ

勉強会は以下のような流れで行いました。

1) 担当より勉強会の説明
2) 3班(4-5人/班)に分かれてグループワーク
3) グループワークの成果共有、全体ディスカッション

今回も元国土交通省公園課課長の町田誠様や大和リース株式会社の方々にもご参加いただき、グループワーク・全体ディスカッションではコメントやアドバイスをいただきました。

グループワークの内容と議論

4-5人に分かれて全3チームで、Miroというオンラインホワイトボードサービスを用いて、下図のような流れでグループワークを行いました。

画像1

グループワークの流れ(担当者作成)

まず、勉強会担当の学生により事前に作成された、自治体による都市公園の紹介ページや、目的別に都市公園を検索できるサイト(例えばhttps://1000enpark.com/のようなサイト)をまとめたリンク集をもとに、「パークコンテンツ」「アクティビティ」と考えるものを次から次へと書き出していきます。

続いて、それらを分類していくと同時に、その分類から「パークコンテンツ」と「アクティビティ」の関係性を読み解いていきます。分類するための指標はそれぞれのチームの議論におまかせしました。時間があまりなかった中、どのチームも独自の視点で整理を試みるという面白い結果となりました。以下に、各チームのMiroでのディスカッションの様子を簡単に紹介します。

[チーム①]
パークコンテンツを目的化の度合いの軸で、アクティビティを生活的(公園でなくてもできる)か目的的(公園に行かないとできない)という軸で整理し、1つからアクティビティが複数派生していくようなコンテンツの重要性を再認識するとともに、生活的なアクティビティをする時間をいかに公園に切り出していけるかが今後のテーマなのではないか、という議論に進んだ。

画像2

[チーム②]
パークコンテンツを地図に載るもの(動かないもの)と載らないもの(動くもの)に分けたうえで、後者についてはパークコンテンツとアクティビティが一対一対応していると整理すると同時に、地図に載るコンテンツについて点的/線的/面的なもので分類し、x軸(静かに楽しむー身体を動かす)y軸(目的通りに使うー自分で使いこなす)という4象限で因数分解した。
その結果、点的なアクティビティか大きく2つに分布していることや、線的アクティビティの少なさが見えたほか、当てはまるものがなかった象限のアクティビティに今後考案の余地があるという意見が出た。

画像3

画像4

[チーム③]
滞在時間と整備度合の大きさを軸として機能別に整理を試みた。時間切れで途中までの進捗となってしまいましたが、それにしても滞在時間を考慮したパークコンテンツは重要かつ面白いと思います。公園での滞在時間をいかに延ばすかという議論に発展つながりそうで、よい視点をいただきました。また、「防災」というキーワードも出てきて公園はレクリエーションのみならず防災の役割もあると気づかされました。

画像5

パークコンテンツの様々な切口

グループワークであがった議論を整理して、以下のようにパークコンテンツを考えるのに、目的、形態、人の行動様式の違いといった様々な視点で整理できます。

整理

パークコンテンツを考える様々な視点(筆者作成)

全体ディスカッションでの議論

各チームの成果発表ののち、担当の学生より、「パークコンテンツ」の1つの解釈の方法として、都市公園法施行規則第5条に示される公園施設の紹介がありました。なお、青く塗られているものがPark-PFIの公募対象施設となります。

画像6

公園施設及び公募対象公園施設一覧
出典:「都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン」(2018)

ここまでの議論を起点として、全体ディスカッションが行われ主に以下の2つのトピックが浮かび上がってきました。

公園施設のあり方と公園施設の民間の参入促進
多様な公園施設があるなかでPark-PFI、すなわち民間参入の対象となるコンテンツは元々利用者の支払意思が少しでもあるもので設定されています。そのコンテンツの特徴を分析すると運動施設、便益施設、教養施設といった目的的な「点」の施設に特徴があることがわかりました。逆に、目的が明確でない園路のような「線」と芝生のような「面」要素のコンテンツは民間投資を促進しにくい特徴があります。

しかし、コロナウィルスの影響により公園のニーズが高まっている中で、こういった人が集まりやすい目的的な「点」の施設が必ずよいとされなくなりました。コンテンツが様々な切口で分類できることから、今後のコンテンツは、自分で変化を与えられるような冗長性のあるコンテンツや、場所と深く関わりを持つ多様性のあるコンテンツ(ex.外で「自由に木が切れる」「自由に穴が掘れる」)がもっとあってもいいのではないでしょうか。こうした、新たなコンテンツの開発にも知恵を絞るべきで、ひょっとしたらチーム②のように複数の軸で現状のコンテンツを整理してみたときに、何も当てはまらないような象限に可能性があるのかもしれません。

新たなコンテンツの開発には、民間の知恵がこれからもっと必要になりますが、Park-PFI制度で民間投資を促しにくい場合は「指定管理者」制度をうまく活用することもひとつ考えられます。地方公共団体の代わりに民間に管理を任せることで民間の独創性によって新た創造的な公園利用が生まれてくる可能性が高いでしょう。

・パークコンテンツの質を高めていくための提案
前述のように今回の議論ではパークコンテンツを考えるにあたり、自治体(東京23区、東京市部および政令指定都市)のホームページを資料としましたが、公園の一覧を表示しているだけの自治体から、目的別に公園を検索できるようになっている自治体まで様々あることがわかりました。

こうした現状に対し、もっとフラットに(市民レベルに)公園の情報にアクセスできるようなプラットフォームがあるとよいのではないかという意見が出ました。市民の目線からすると、公園内で何ならやっても許されるだろうか、という疑問が普遍的にあり、そうした疑問に対応する公園のトリセツのようなものを分かりやすく公開することが、よりパークコンテンツとアクティビティの質を高めていくのではないでしょうか。

同じようにこのような取り組みを自治体が一手に担うのには限界があるのも事実であり、ソフトな施策も含めて民間の力を活用してくための手法として指定管理者制度をより拡充していくべきと考えられます。

まとめ

今回の勉強会では、具体的な公園事例を扱うというよりもむしろ、一般的なパークコンテンツ/アクティビティの要素について議論を通じて理解を深めました。メンバー一同、意外な気付きがあったとともに(筆者は、運動施設ひとつとっても施設型のものと広場型のものに分類できるのではないかという気付きがありました)、「パークコンテンツ」について自分なりの解釈を得られたのではないでしょうか。

今後の勉強会では、海外の公園事例などをリサーチし、日本のパークコンテンツとの違いなどを考えていく予定です。

画像9

勉強会の様子(Zoomにて)

(文責:藤井達郎、ウォンダラ・ハルシット)